表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影元さんは怪異に憧れる  作者: スタイリッシュ土下座
1/4

ようこそオカ研へ

この前書いてた作品、1話だけ書いて結局ボツになっちゃいました。どうも土下座です。

王道展開やありきたりな作品というもの書くのが苦手で結果自分の好きなものだけ詰め込んだ小説ばかりになってしまいました(白目)相変わらず拙い文章でお送りする一話ですが、少しでも楽しんでくれれば幸いです。

では、どうぞ。

 学校には七不思議というものがあるらしい。もっとも、俺はそういったものを信じてはいない。名は「桐山きりやま 照男てるお」。俺の幼馴染である「影元かげもと 魔奈まな」のオカルト研究会退会を今日こそ達成する為にこの部室までやってきたのだ。辿り着くとすぐに俺は勢いよく扉を開けた。


「マナ!そんな得体の知れないものばかり好んでないで、帰るぞ!」


「得体の知れないものってなんですか!照男君こそ何か異常だよ?」


 そう。俺は極端に人に顔を見られるのが苦手なのだ。コンプレックスという訳ではないのだが、見られたら人生が終わってしまうレベルの屈辱感を味わう。その為、常にサングラスとマスクを着用しているのだ。


「そんな事はどうでもいいだろ!オカ研なんてろくでもない」


「私にとってオカルトは生き甲斐なんです!簡単に辞めるものですか!」


 マナはいたって普通のショートボブの髪型をした女の子である。しかし昔から霊感が強く、怪異というものにハマってしまった日から、見た目は変わらないものの、少しずつ彼女の中で何かがおかしくなっていくのだった。


「ここに入ったのには訳があります」


「何だ?言ってみろ」


「私、大きくなったら怪異の研究者、いや、それは過程に過ぎません!最終的に怪異そのものになってみたいんです!」


「お前正気か!?」


 長年関係は続けてきたつもりの自分でも、耳を疑った。

 マナは元々怖がりで夜にトイレも行けない子だったはずなのだ。怪異なんかになりたいはずがない。


「怪異そのものって、不気味過ぎるぞ。その野望」


「不気味だからいいんです!もっと人間様に怖がって貰える方が」


「楽しいってか?そもそもお前人間として生まれてきてるだろうが.......」


 俺はぜぇぜぇと息を切らした。もうダメだこの子。人間としての感覚を完璧に怪異それに取られてしまっている。オカ研の無駄に装飾の凝ったパイプ椅子にだらんと腰掛けた。


「怪異って良いも悪いもあるじゃないですか、どれもこれも素敵に見えて、それに」


「はい分かったもう十分!これ以上話を聞く気は断じて無い!」


 俺はサングラスをクイッと上げ、冷静さを保とうとした。不気味なその一室には明らかに呪いがかけられてそうな日本人形のそれや、重っ苦しそうな文面がずらと並んでそうな妖怪辞典的なそれ、人体模型まで飾られている。

 本格とかそういったレベルじゃない。この部屋自体が怪異だ。


「ともかく、俺は絶対認めんぞ!また明日も来てやるからな!」


「あれ、照男君もちょっと興味持ってない?」


「持ってない!」


 俺は扉をピシャンと閉めた。危うく自分までオカ研に染められるところであった。

 しかし、彼女がそこまでアレに興味を示すのには何か意味があるのかもしれない。明日は原因の究明に務める事にした。


「また来たんですか。誰かに顔見られたくない癖に」


「うるせぇ!放課後ヒマだったから仕方なくだ。ほら帰るぞ」


 彼女の制服の後ろを掴むが、必死に抵抗した。


「やめてください!今日は会長さんも出席するんです!」


「この会はお前とそいつ含め2人しかいないだろ!だから愛好会って括りなんだろうが」


 グダグダと話している内にその会長はやってきた。長髪で鋭い目をした彼女は俺の方に目線を向け、たじろいでいる。


「不審者!?通報しますよ」


「あっ、いえ!誤解です!」


 俺はサングラスとマスクを付けている為、勘違いされるのも当然であった。会長は続ける。


「あらごめんなさい。新入部員さん?」


「いや、そういった訳でもなく.......魔奈こいつを引き留めようと」


「あら、そう言えば自己紹介がまだでしたわね」


 嫌な予感を感じ取ったかのように背筋がゾッとした。不穏な文脈に違和感を覚え瞬きを何回かしたが、閉じたその網膜の底にも彼女の姿が残っている。


「会長、アンタ何をした.......?」


「私は『猫田ねこだ 美良みよ』です。よろしくね?マナちゃんの幼馴染さん」


 この会合、何かがヤバいと思いながら、逃げ出そうとするも、その思考すら脳内から消え失せていた。

 脳裏にあるのは猫田会長がいるという記憶のみで、嫌々ながらも口が自然と動く。


「猫田さん、よろしくお願いします」


「ええ。よろしくお願いします」


「凄いです会長!私からもよろしくお願いします!」


「(どうなってんだこの部活はぁぁーーーっっ!!!)」


 彼女に抗う事ができず、ずっとその影は網膜に焼き付いていた。こうして俺がマナをオカ研から引き摺り出す為の戦いが幕を開けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ