第七章 第十一話 あの塔へ
「ここから降りられそうだ」
アルトとアンと別れてからしばらく歩いてようやく町へ下れる坂を見つけた。
眼前には目的の塔が先程と変わらぬ高さでそこにあった。
少し雲は動いたか。しかし、塔の全貌などわかるはずもなかった。
「あっ……」
アストが途端に立ち止まり自らの戦闘服のポケットに手を入れている。
「どうした?アスト」
「これ、アルトの……」
アストが取り出したのは、ちょうど掌に収まる程度の鉄の塊であった。
そしてそれは色違いで赤と青の2つあった。
「それは?」
「迷彩です。姿を見えなくさせる」
「2つあるってことは」
「……。いいんです。大丈夫ですよ。きっと」
俯いたまま、アストは青色のそれを今一度そのポケットにしまいこんだ。
「これを起動して町に潜入しましょう。歩く時は僕の肩に手を置いてください。二人も身を隠すことができます」
なるほど、実に画期的なものだ。
「アスト君、ゆっくり歩いてね」
パレットがアストに言う。
「気を付けますね。それじゃあ、点けますね」
俺はアストの右肩に、パレットは左肩にそれぞれ手を置く。
アストが右手の機械を起動する。
気が付くと、自分の体が、消えた。
なにもない、いや何も見えない空間から声がした。
「気を付けてください。自分の体も見えなくなります。とにかく、気を付けてください」
感覚だけで歩みを進める。
下り坂なのも相まって歩くだけなのにかなりの難しさを感じる。
やっとの思いで町の門を潜る。
町ゆく人の足並みが少し早いのが気になる。
ぶつからないようにアストが気を付けて歩いているのが左手に感じる。
先程よりも感覚に慣れてきた。
小声でアストの声がした。
「少しだけ、ペースを上げますね」
了解、の意を込めて少し左手に力を込めてサインを送る。
そのまま歩き続けていた途端だった。
今までに感じたことの無い頭痛が脳天を刺激する。
「―――!(悪い、アスト。あそこの路地裏に入ってくれないか……)」
「(わかりました)」
路地裏に入る。
膝と両腕を地面に着く。地べたに自らの汗水が滴となって落ちているのが分かる。
長い鈍痛。痛みは一向に引くことはない。
思考が鈍る。痛みに抗う気力が徐々に尽きていくのを感じる。
このまま身を任せてしまおうか。
視界が暗闇に包まれていきそうだった。
聞こえる声も徐々に遠くなっていく。
パレットが必死そうに水筒の飲み口を俺の口元に持ってきている。
体を支えていた腕の力が抜けていく。耐えられなくなって倒れ込んでしまう。
そしてそのまま、視界が完全に闇に包まれた。




