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黒い夕闇 -Light Of Day-   作者: SOUTH
CHANGE THE WORLD
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第六章 第十四話 Meeting And Parting

 「戦いはこれからだ!」


 叛逆の騎士は鋭い眼光を恩人に向ける。

 そして刃も。

 過去の感謝を忘れたつもりはない。

 それをこれからも忘れるつもりもない。

 しかし、譲れないものが確実に存在することを忘れてはいけない。


 「……双剣か。」


 嘆息。その恩人はどこか心配そうな眼差しを一瞬だけ、覗かせた。


 「立っているのもやっとの状況ではないのか?レッド。」


 男の指摘は尤もだった。

 完成度の高い変形を二重に行っている。

 それはこれまで生きてきた中で最も過酷な持続的苦痛。

 まるで心臓を殴られ続けているように鈍痛を繰り返し与えられている感覚。

 息をするのも辛い。肺が軋むようだ。

 騎士は極力痛みから背を向けるために考えることをなるべくやめようと思った。

 しかし、溢れ出る憤怒の感情にその考えは灰となる。

 騎士はすべてに目を向けなければならない。

 すべてから目を背けてはいけない。

 騎士はそれをたった今、自覚した。


 「……アダムさん。俺にこの変形のきっかけをくれた人。俺にとってあなたは鏡だ。」


 ―――鏡。そう、レッドにとってアダムは憧れ。

 彼のように強くなりたい。

 彼のように強くありたい、というレッドの潜在意識が自然と彼に歩み寄っていた。

 故に鏡。しかし、レッドはその憧れを上回らなければならない。

 もう、鏡でいる時間は終わりを迎えた。

 レッドはアダムの写しではないと、ただの鏡ではないと、その意識がレッドに双剣という形で恩恵を与えたのだ。


 「俺はあなたを越えて、世界を変える。」

 「たとえ誰が敵になったとしても、か?」


 叛逆の騎士の決意に、憧憬の騎士は疑問を返す。


 「うん。」


 憧憬の騎士の質問に意味はなかった。

 しかし、その意図は叛逆の騎士には理解できた。


 「そうか。……レッド。これからお前を待つのは信じがたい出来事、そして衝撃的な出来事がたくさん起こるだろう。認めたくはないこともたくさんあるはずだ。」


 憧憬の騎士はまるで、あの頃のままの口調で語り掛ける。

 そこには確実に愛があった。

 しかし、その美しい感情を叛逆の騎士は認めることはできない。

 不屈の剣は対象に殺意を抱いたとき、はじめて切れ味をもつ。

 そのことに当の本人は気付いてはいないが。


 「……やっぱり、あなたは俺のあこがれだ。」

 「俺もそうありたいとずっと願っていたよ。……これからもね。」


 視線が交わされる。

 そして、両者は互いを目がけ駆け出す。

 一方は、未来のために、みんなの世界のために、という正義を抱いて。

 一方は、国のために、そして自らの世界のために、という正義を抱いて。

 その剣を、振るう―――。


 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 勝敗は決したのだろうか。

 はっきりとしない意識の中で、先程までは何度も金属が叩き合う音が確かに聞こえていた。

 どうやら固い地面に寝そべっているらしい。

 身動きが取れないのは、失血による影響?

 心臓の拍動が弱いけれど、頻回に拍出している。

 きっと血圧は低下して、頻脈になっているんだ。

 ……ショック寸前か。

 しかし、意識は回復した。

 つまりショック明けということ?

 ……こんなに思考できるということは、脳へ巡る酸素量も一定の値は維持できているということ。

 思えば呼吸もそれほど浅くはない。

 これ以上、深刻な状況になることはないということね。

 ……ああ。運が良かった。

 そもそも私は衛生兵として後方での業務があった。

 だけれど何かある予感がして居ても立っても居られなくなったのだ。

 それが第六感的なものかどうかもわからないけれど、とにかく夢中になって駆けていた。

 そして遠くにレッドを見つけた。

 彼は戦っていた。必死に、戦っていた。

 そして彼に危機が訪れて気が付いたら飛び出していた。

 彼に抱えられ混濁する意識の中、彼が私の視界に在って……とても嬉しかった。

 本当だったらどうして何も言わず国を飛び出したのとか叱責してやりたかったけれど、そのような状況でなくてどうにか彼に会えた喜びだけでも伝えたくて笑みを浮かべたのだ。

 だって、あのまま死に別れていたら後悔しか残らないから。

 だけど、こうして生きている。

 本当についていた。

 あと少し、ほんの少しあの刀が深く裂傷を付けていたのなら助からなかった。

 まだ体は起き上がることができない。

 眼を開いてもまだ景色は濁っている。

 ……聞こえる。足音が。

 わからない。足音だけではどちらか、わからない。


 「……レッド?」


 なんとか声を出す。

 それはあまりに微かで糸のようだった。


 「……。」


 ―――足音が止まる。

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