第六章 第五話 Last Of Tears
「やぁ!」
「はぁ!」
激突。二つの剣は火花を散らしながら、互いの刃を重ね合う。
「だけど、あなた一人が出てきたところで、この戦況は変わりませんよ……。」
互いに剣を押し付け合いながら、レッドはアダムに言葉を投げる。
「小僧、誰が俺一人だといった。俺以外の精鋭隊も直にここへ到着する。」
「精鋭隊……?」
「一般の兵には伝わっていないだろう。極秘の部隊だからな。」
「そいつら全員、あなたみたいな強者ってことか?」
剣戟の激しさは増す一方だ。
「俺以上の実力者だっているさ。」
「……。」
「絶望したか?」
「まさか!」
正直、俺とアダムさんの実力差は今のところない。
しかしながら、一杯一杯であることにも変わりはない。
「不思議な感覚だ。あのときの小僧とこうして剣を交える瞬間が訪れようとは!」
「俺もだ!だからこそ、この戦いは負けられない!」
一撃のあと、間合いを取る。
その一瞬の出来事だった。
足元の亡骸に足をとられた。
それを男は見逃さなかった。
「隙ありだッ!」
「―――!」
油断したわけではない。
実力が拮抗していたから。
「――――。嘘だろ……。」
「やっと、会えた。レ…ッド。」
目の前に現れたのは、ずっと古くから知っていて、とても大切で、大事な存在。
ここにいるなんて思いもしなかった。
そして、その存在は、今、目の前で、切られた――――。
「パレットーーーー!!」
俺の目の前に飛び込んできたのはパレットだった。
アダムさんの斬撃はパレットの体に傷を付けた。
俺を庇って。俺なんかを庇って。パレットは傷ついた。
許せない。(誰が?)
許せない。(それは誰だ?)
許すことはできない。(無力な―――)
「……レッド。レッ、ド。」
虚ろな目をしたまま、パレットは声を放つ。
俺の名を呼んでいる。
「ああ、パレット。……どうして。」
「わか、らないよ。そ、んなの。勝手に……。」
「頼む。逝くな。パレット!」
「――――。」
再生は始まっている。だけど、この深さ。
助かるかどうかはわからない。
「くっ……。パレット……。」
悔しさと虚しさで涙が出る。
「小僧。戦いを再開するぞ。……できないというならば、このまま楽に殺してやる。」
「……そうだな。」
「……ほう。」
「あんたを倒して俺はもっと上へ行く!それができないのなら今ここで死んだって構わない!」
「それでこそ不屈の魂を継ぐものだ!」
―――――思い出せ。限界などないってことを。
―――――思い出せ。俺自身が可能性の塊だってことを
―――――思い出せ。即ち俺自身が可能性の剣だっていうことを。
―――――思い出せ。その剣は不屈だということを!
「変形!不屈の双剣!」
その姿は、とても不自然なものであった。
叛逆の騎士は右腕の大剣のみならず、左腕さえも剣へと変化させたのだ。
「戦いはこれからだ!」




