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黒い夕闇 -Light Of Day-   作者: SOUTH
CHANGE THE WORLD
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第六章 第四話 Bound For Dream

 「貴様……!行方をくらませていたレッド・エライド……!」

 「俺たちの夢を邪魔するものはすべて切る!」

 「……そうか、つまりはそういうことだったのか。」


 独りつぶやくように、大人は呟く。


 「軍人であれば、そのような行動が如何なる罪に問われるか知っているだろう。」

 「すべて、承知の上だ。……変形。不屈の剣!」


 レッドが剣士となる。世界を救うために世界を敵に回す。

 悪しき伝統に埋没されそうな希望の光を深い闇から救い出す。

 そんな彼の剣はいささか聖剣のように思えた。


 「我らに矛先を向ける叛逆者が!かまわん奴を殺せ!」


 同じ軍服を着た数多の兵が一斉にレッドへ襲い掛かる。

 叛逆の騎士は切る。切る。切る。

 剣が大気とともに肉体を切る。

 不屈を誇る剣の間合いに入り込む幾つもの命を彼は切り捨てる。


 「「チェンジ!」」


 二つの稲妻が駆ける。

 空気中に火花を散らしながら、波と激しくぶつかり合いながら。

 

 「ちょっと人に酔いそうなんだけど。」

 「あっそ。じゃあ減らせばいいんじゃない?」


 素っ気なさに見え隠れする勝利への飽くなき欲望。

 それが彼らの自信につながっている。


 「放て!フラジェリーア!」


 壁の上からの攻撃に敵兵は為す術も無い。

 

 「攻撃をやめなさい!……これでもまだ、作戦を続けるつもりか!?」


 エリーの声が荒れた戦場に響く。

 彼女の声に応じるように、レッド・アスト・アルト・トールの四人も攻撃を中止する。


 「……もう一度訪ねます。作戦を終了し、大人しく自国へと戻るか。このまま戦力を削り続けるか。選びなさい!」

 「まだ、後方に兵は残っている……。しかし……。」

 「迷う必要はありません。頭領。」

 「は?何を言―――――。」


 声が途切れた。

 セベック頭領の背後から現れた謎の男が、頭領の喉笛を切り裂いた。

 レッドのもつ剣とほぼ似たような剣によって。


 「……あなたは。」

 「久しぶりだな。小僧。」

 「アダム…さん……!?」


 少年の瞳に写り込むのは、幼少期自らの命を救い、戦う理由を見出してくれた存在。


 「一体、なぜ?」


 少年の思考は停止した。

 灼けた肌、暖かな瞳はあの頃のままだというのにその左腕の剣は、まるで彼自身を写した鏡のようだった。


 「世界の均衡を破綻させる存在が現れた。それを排除するのが俺たちの出兵の理由だ。この使えない男はいつまで経っても使えないままだった。このままでは兵を無駄に死なせてしまう。だから殺した。」


 無機質な口調。静かな抑揚。

 そして、男は左腕の剣の鋩をレッドに向けた。


 「これも運命なのかもな。あの時救った命を、今俺が絶とうとしている。」

 「俺はあなたと戦いたくない。」

 「俺はお前と戦わなければならない。俺の世界はお前たちを望んでいない。」


 彼の信念を違う、とは言えない。それもひとつの正義であり、悪でもある。

 同じように自分の行いもひとつの悪であり、正義だからだ。

 しかし、夢への道を閉ざすわけにはいかない。


 少年は憧れと対峙する。

 二つの剣が相まみえる時、少年は再び覚醒の時を迎える。

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