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黒い夕闇 -Light Of Day-   作者: SOUTH
THE RISING
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第五章 第八話 GOOD NIGHT

 島を脱出して、なんとか隣町まで逃げ延びることができた。


 「ここまで来たら、しばらくは大丈夫だろう。」


 さすがにレッドさんもアストさん、アルトさんも疲弊しているようだった。


 「いや、ちょっと待って。しばらく動けないよ。」

 「俺も、少し休まないとしんどいな。」

 「この町で少し休ませてもらいましょう。もう少しで日も沈んでしまいますし。」


 エリーが提案する。それに全員黙ってうなずいた。


 「僕が何処か入れる場所探してきます。皆さんは少し休んでいてください。」

 「私も行く。」


 エリーと一緒に宿を探すことにした。

 その道中。少し、いろんなことを話し合った。


 「あの3人。ほんとうにすごかったね。」

 「ええ。世界にはあんな人がいるんだって思い知ったわ。」

 「もっともっと、強くならなくちゃね。」

 「うん。頑張りましょう。トール。」


 僕にも何かできるはずだ。それを見つけなくては、早く。一刻も早く。




 「見つかってよかったね。今夜の寝床。」

 「そうだね。トール。まだ探したいものがあるのだけれど。」

 「いいけど、何?」

 「馬車を借りたいの。ここから城都も相当な距離があるから。歩いていくなんて無茶すぎる。」

 「そうだね。さがしてみよう。」




 「うそでしょ……。一個もないなんて……。」

 「貸し出してくれるところも全部出払ってしまっているって。あの島の抗争で市民がみんな避難に使ってしまったって。」

 「どうしよう。これじゃ……。」

 「とりあえず、一回レッドさんたちの元へ戻ろう。」

 「そうだね。」




 「レッドさん、宿が見つかりました。」

 「そうか。よし、そっちに向かおうか。」

 「……はい。」


 エリーはまだ考え更けている様子だった。


 


 宿に着いて、とりあえず僕が泊まる部屋で作戦会議をすることになった。

 そして先ずエリーが持ち出した議論はやはり移動手段だった。


 「ここから、城都に着くまで私のサリーに乗っていっても一晩以上かかりました。ですので歩いていくのは相当厳しいと思って、せめて馬車でもあればと思っていたのですけど、見つからなくて……。」


 エリーの申し訳なさそうな声が空間を包む。

 すると、陽気な双子の声がそれを晴らした。


 「別にその点は心配しなくても大丈夫ですよ。僕ら三人は移動手段ありますんで。」

 「大丈夫大丈夫。」

 「……。」


 あまりに陽気過ぎて、言葉が出てこなかった。


 「逆に、そのサリーっていう馬にトール君とサリーさんで二人乗りしてくれれば全然、大丈夫でしょう。」

 「それは全然いいのだけれど、びっくりした。そんな手段があったなんて。」

 「まあ、ミラビリスにないモノなんで、今は隠してますけど。幸いにもこの町は隠し場所の近くなので何も問題ありません。」

 「そう。よかった。明日見られるのを楽しみにしているわ。」

 「明日は早朝出発ですか?」

 「そのつもりよ。大丈夫よね?」


 皆、問題ないといった表情だった。


 「レッドさんの方からも、何かありませんか?」

 「俺から?そうだな。明日には城都に行って、再度中央城に挑戦する。それは、大丈夫だ。だが、問題は城に攻め込むときだな。攻略の鍵はエリーさん、君にある。」

 「……はい。」

 「俺たちは城の内部構造なんて知らないし、一晩で覚えきれるほど簡単な造りでもないだろう。だからエリーさん、そしてトール君。君たち二人にこの国の王様を倒してもらいたい。異論はないだろう?」

 「私達で、倒します。」


 エリーは決意の表情をしているが、僕に果たしてできるのだろうか……。


 「俺たちにできることは城の周りで大暴れして少しでも二人が攻め込みやすいようにすること、いいな。アスト、アルト。」

 「今回は脇役ってことですね。」

 「余計なことをいうんじゃない!アルト!」

 「まあ、アルトの言葉を借りるのなら、今回は二人が主役ってことだ。頑張ろう。」

 「はい!」

 「……頑張ります。」

 「……トール。」

 「さて、今日は疲れたからもう休もうかな。アスト、アルト行こう。」

 「「はーい。」」


 レッドさんたちが部屋から出て行った。

 部屋にはエリーと僕だけが残っていた。


 「トール。次こそはうまくいくはずよ。」

 「それはどうかわからないよ。バクタさんと戦ったときも全然僕は役に立たなかった。僕は力足りないんだ。あの三人みたいな力が欲しい。」

 「トール……。」

 「召喚もうまくいかなかったし、母さんみたいに電撃を放つこともできない。何もできないんだよ。僕には。」

 「諦めちゃうの?」

 「そんなことは!……だけど、あんな力を見せつけられてしまっては悔しいというよりもその無力さを実感せずにはいられないよ。」

 「……トール。きっとなにかきっかけだと思うの。何かきっかけがあればうまくいくはず。私を信じて。その時が来るまで、今は辛抱しましょう。」

 「……エリー。」

 「大丈夫。トールはきっと、大丈夫。」


 そう言って、エリーは僕の頭を優しくなでてくれた。


 「子供扱いしないでよ。たった二つしか変わらないのに。」

 「ふふ。でも私の方がお姉ちゃんなのは変わらないでしょ?」

 「それはそうだけど……。ていうか、レッドさんたちって何歳なんだろう。」

 「下手したら私が一番年上かも。」

 「もしかしたらアスト君とアルト君は僕より年下かもしれない……。」

 「まぁ、あまり気にしないようにしましょう。さ、私たちもそろそろ休みましょう。私も部屋に戻るけど、朝はしっかり起きてね。」

 「大丈夫だよ!」

 「それじゃ、おやすみなさい。」

 「うん、おやすみ。」


 さっきまで人がいた部屋に今はただ一人。

 静寂が眠りを誘う。布団から跳ね返ってくる温もりが心地いい。

 普段と違うはずなのに、もう闇の中へ、深く、なっていく。

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