第五章 第七話 RUN
「それでもレッドさん、ここからどう脱出するつもりですか。」
エリーがレッドさんに問う。
「橋の上も、ましてや、海の上も……ってどうやってここまで来られたのですか?」
確かにそうだ。あれだけの兵隊が待ち構えたというのにこの人たちはどうやって……。
「ああ、それはこの二人は肉体を電気に変えて高速移動したんだよな。」
「はい。雲の中を駆けてきました。」
「それで、そのままここに降りてきたんですか。」
なんとなく腑に落ちたけれど、その超人的な能力に抱いたこの感情は、尊敬、なのか?
「だけど、アスト君とアルト君が敵を回避しながらここへ来てくれたのはわかったのだけれど、レッドさんはどうやって?」
エリーがレッドさんを見る。
「うんと、みんなは俺が橋の上の連中を一掃してきたと期待しているのだろうか?」
「レッドさん、それは当然ですよ。やってくれたのでしょう?」
「おい、アルト。煽るんじゃない。」
レッドさんは自分の頬を指先で数回かいたあと、こう言った。
「ごめん。一人もやっつけてない……。」
「もう一回言ってください。」
「一人も倒していません……。ごめんなさい……。」
ここにいる五人のなかでダントツに背の高いレッドさんがなぜか、とても。小さく見えた……。
「なるほど、レッドさんはその変形の力でネコになって堂々と入ってきたわけですね。」
「ああ、途中で兵隊に喉元を思い切り撫でられたときは生きた心地がしなかった……。」
「ネコって、ふふ、いや、ネコって。かわいすぎかよ。」
「いや、ふふ、アルト、お前、ふふふ、笑いすぎだって。」
「お前らいい加減にしろ!」
心なしかレッドさんの声が震えているように感じられた……。
「とにかく、この場所から抜け出さないことには話にならない。」
「そうですね。どうしましょう。」
「俺が先陣を切る。後ろをぴったりとついてきてくれ。アスト、アルトは一番後ろからトール君とエリーさんを守ってやれ。」
「「わかりました。」」
「よし、行くぞ!」
正門の近くまで来た。やはりまだ、橋の上には敵兵が多く残っていた。
そこらじゅうに倒れていた組織の面々の亡骸を越えてここまで来た。
「よし。駆けだしたら、絶対に立ち止まるな。振り返ってもいけない。」
「わかりました。」
「さぁ。……行くぞ!」
レッドさんの合図で全員勢いよく飛び出した。
そして、この疾走はもう二度とここへ帰ってくることのできない。終わりのない疾走。
「変形!不屈の剣!」
「「チェンジ!」」
彼らの援護でこの状況を打破することができる。
僕らは止まらない。止まることはできない。
長く暮らしたこの場所よ。さようなら。そして、ありがとう。
「向かいましょう!決着の場所へ!」




