第五章 第六話 新たなる旅立ち
「アスト!アルト!気を引き締め直せ!倒すぞ!」
「「はい!」」
まずはあの大熊を何とかする必要がある。
「二人とも!あの男をやってくれ!俺はこのデカブツをやる!」
「「了解です!」」
新しい技を使う時が来た。変形能の新たな可能性を見せてやる!
「変形付加!小型化!」
大熊の足元を切りつける。
その直後、その大熊の体はまるで小熊のように小さくなった。
「すまないが。切らせてもらう。」
「俺の召喚獣が!」
「自分の心配もしたらどうです?」
「そうだそうだ!」
アストとアルトの二撃が男を襲う。
完璧に男を仕留めた。
「これが多対一の力だ。」
「アルト、決め台詞にしてはダサすぎだよ。」
「なに。」
「わかった。アルト、お前は決め台詞のセンス皆無なんだよ。」
「なに。」
「まあまあ、よくやったよ。二人とも。」
「ていうか、レッドさん本当に来るの遅すぎでしたからね!」
「いや、違うって!お前らが速いだけなんだって!」
「速すぎる電撃の戦士、アルトアスト。」
「何言ってんだ。後なんでお前の名前が最初なんだよ。」
「彼らの戦いはまだ始まったばかりである。」
「だからほんとに何言ってんの、お前。」
戦いを終えた戦士たちが互いを称え…あっている?
兎にも角にも彼らが来たことで僕も、エリーも助かったんだ。
「みなさん。本当にありがとうございました。」
「いや、当然のことをしたまでだよ。君も、あそこの彼女も無事なようで本当によかった。」
「え?」
彼の言葉に振り返ると、そこにはエリーが立っていた。
「エリー、気が付いたのか!よかった。」
「トール?この人たちは?」
「ああ、えっと助けてくれたんだよ。そうだ、お名前を……。」
「俺はレッド・エライド。ヘマタイティス人だ。ここにいる二人は双子でアストとアルト。二人はバケマイティス人。」
「国籍が違うのに一緒にいるんですか?」
エリーの質問にレッドさんは的確な返答をした。
「それは君たちが一番よく分かっているのでは?俺たちにとってはトール君。君は希望なんだよ。」
「僕が希望?」
「そう。君の存在はこの世界のすべてを覆すことができる。俺はそう信じている。ミラビリスとバケマイティスの血が混ざりあう君という存在が、ね。」
レッドさんの言葉のスケールの大きさに正直実感とか湧かなかった。
だけど、これだけはわかった。この人たちも世界を変えようとしているって。
「俺は、君たちと一緒に世界を変えたい。この気持ちはここにいるみんなが同じはずだ。きっとできる。トール君、エリーさん。俺たちに力を貸してほしい。お願いします。」
まさか、命を救っていただいた人たちに頭を下げられるなんて思いもしなかった。
「頭を上げてください。こちらこそ、よろしくお願いします。レッドさん、アストさん、アルトさん。」
「今僕の顔見ながらアストって言わなかった?僕アルトだよ。」
「お前は本当に黙っとけ!」
「はは、ははは!」
こんなにも心の底から暖かな気持ちになったのはいつぶりだろう。
こんなにも心の底から嬉しい気持ちになったのはいつぶりだろう。
こんなにも安心を憶えたのはいつぶりだろう。
この人たちとならどこへでも行ける。どこへだって行ってみせる。
絶対についていってやる。そして僕も、もっと強くなってやる!
少年少女たちの新たなる旅立ちの時が、訪れた。




