第五章 第三話 戦士、駆ける。
「ミラビリスまであとどのくらいだろう?」
「やっとバケマイティスを抜けたところですね。ここはちょうど国境あたりです。」
「ということはまだまだってことか。」
「でも、この原付車のエネルギーはたくさんありますんで心配ご無用です。」
アスト達が用意してくれたこの自動車。
原理などは難しくて理解できなかったが、とにかく速い。
男三人を乗せているのにこのスピード。たまげたものだ。
バケマイティスを抜けてミラビリスの領土に入る。
とても奇妙な光景だ。機械的な街並みから突然、自然の多い景色になる。
「なんだか、頭が追い付かないな。ここまで景色の移り変わりに差が大きいと。」
「そうかもですね。その気持ち、少しわかります。」
さきほどからずっと黙っているアルトはすっかり運転に集中している。
バケマイティスを抜ける直前まではずっとアストが運転をしていた。
どうやらアストは運転自体慣れているようで話しながらしていたり、片手でハンドル操作をしていたり、と安心感のあるものだった。
「……。」
しかしまぁ、彼の運転。危機感を感じるほどではない。それは決してないんだ。
だけど、その姿を見れば誰だって1分に一回は彼の方を見つめてしまう。
大丈夫かなって、どうしてもそう思ってしまう。
両肘を真っすぐに伸ばし、両手でハンドルを握る。
両目をぱっちりと見開き、まばたきも全然していないようだ。
その姿は、見ていてとても……辛そうではあった。
そんな彼の姿を見つめるお兄ちゃんは、恐らく俺と同じことを考えているはずだ。
そしてアストはアルトへこう語りかけた。
「……アルト、運転大丈―――――。」
「ぜんぜん平気だし!!」
どうやら、平気ではないらしい……。
そうして、ずいぶんと走り続けてきた。
この機械はミラビリスにはないものだから、町や人がいそうなところをできるだけ回避してきた。
アストが例の手紙に同封されていたという地図を広げて、しばらく眺めながら思案している様子だった。
答を得たのだろう。顔をあげ、口を開いた。
「うう。気持ち悪い……。」
「お前らいい加減にしろ!」
俺も半分笑いながら、愉快な双子との旅を続けていた。
原付車を停め、アストは咳払いをし、改めてといった様子で話しを始めた。
「この先はどう進んでも町に当たるのでここで車での移動は終わりです。アルト、よかったね。」
「うるせ。」
アストが言うにはこうだ。
いつの間にか、という感じだが目的の組織が本拠地を構える町のすぐ近くまで来ていたらしい。
「ここからは、歩いて向かいましょう!こっちです!」
アストの先導で向かおうとした時だった。
「爆音!?」
ちょうど歩みを進めようとしていた方角から轟く爆発の音。
「これは急いだ方がいいかもですね。」
「行こう!」




