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黒い夕闇 -Light Of Day-   作者: SOUTH
THE RISING
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第五章 第二話 Revenge

 「バクタさん、ちょっといいですか。」

 「どうしたんだ、トール君。」


 母さんの死後、組織の変遷は決してして小さなものではなかった。

 組織の創始メンバーの一人である母さんの死。そのポスト争い。

 残された人々の慌ただしい生活は、時間の流れを銃弾のように早めていた。

 すべての引継ぎなどが落ち着いたころにはおよそ半年の期間が流れていた。


 「次はいつ城都へ行くのですか?」

 「また、そのことか。もう少しだ。もう少し待って居てくれ。時が来れば、な。」

 「……。わかりました。」

 「復讐に熱くなるのもわかるが。少しは冷静になれ。」

 「……。」


 母さんの跡を継いで、幹部のポストを引き継いだのはバクタさんだった。

 母さんの死により他の組織創始者のメンバーも相次いで重鎮の座を降りていった。

 それだけ母さんの存在というのは大きなものであったのだ。

 そして、完全に新体制となった革命派のメンバーで実質トップに存在するのはバクタさんだった。


 「トール君、少しここを留守にする。残りの仕事、頼んだぞ。」

 「え?どこに行かれるんですか?」

 「ちょっとな。」

 「僕も行きますよ。」

 「来なくていい!俺一人で行く。ついてくるな。」

 「……。」


 明らかに強すぎる口調。

 バクタさんは母さんの死後、まるで人が変わったかのように振る舞い始めた。

 あんなに頼もしくて、あんなにやさしかったあの人が、こんなにも簡単に変わってしまうなんて……。


 「昔に、戻ればいいのに……。」


 思わず嘆いてしまう。あの日々がどんなに素晴らしいものだったか。

 今になって、こんな思いをするなんて考えたこともなかった。

 いや、ふつうは考えないのだ。

 だから、失って。こんなにも苦しいのだ。




 「……トール。」

 私は、この半年間。

 彼の悲しむ姿、苦しむ姿、悩む姿、それをただ見つめることしかできなかったと思う。


 「なにも、してあげられないなんて。本当に、ごめんなさい。」


 彼に聞こえないように、彼への気持ちを声にした。

 だけど、このままじゃ私もつらいし、彼も苦しいままだ。

 力になりたい。そばで支えてあげたい。


 「どうしたら、いいの。リノさん……教えて下さい。」




 新しい朝が来た。どうやらバクタさんはまだ帰ってきてはいないようだ。

 今日は、今日こそはちゃんとエリーと話そう。あれ以来、きちんと話せていなかったから。




 ――――――半年前。

 「……。」

 「……トール。」

 「……。」

 「トール?」

 「……エリー、少し一人にさせてくれ。」

 「トール……。」




 あの言い方は正直ひどかったと思う。

 それ以来、少しばかり距離が生まれたんだ。

 形式上、話すことがあってもどこか気まずくて上手に謝ることもできずここまできた。


 「エリー!ちょっといいかな。」

 「え!?トール!?どうかした!?」


 驚き、声が裏返る反応。やっぱりそうなるよね。


 「いや、その、なんだ。そうだ!ごはん、ごはん食べよ!ね?」

 「あ、うん。そうしよっか。」


 アジト内の食堂へ向かう。

 隣を歩いているけれど、その距離感がうまくつかめない。

 なにを話せばいいのか。それすらもさっぱりだ。

 そうしてしばらく思案していたところで先に口を開いたのはエリーだった。


 「トール、ごめんね?本当はもっと私にもできたはずだったのに、半年も独りにさせてしまって。」

 「いや、エリー僕こそ、いろいろ申し訳ないことをした。ごめん。」


 ――――――突然のことだった。

 どこからともなく爆発の轟音と、大きな地響きが身を襲う。


 「なにごとだ!?」


 数秒の思考のあと、導かれた答は―――――。


 「攻撃!?」


 今までなかったはずだ。この本拠地に直接攻撃を受けることなんて。

 アジトのそこらから混乱が窺える悲鳴が聞こえてくる。

 そうだ。この島は海上に浮かぶ孤島。

 本土とつながる橋も一つだけ。つまり逃げ道はない!


 「エリー!とにかく様子が窺えるところへ!」

 「わかった。ということはリノさんの部屋が一番いいと思う。」

 「行こう!」


 混乱のなかを駆け抜け、母さんの部屋へたどり着いた。


 「……そんな。」


 久しぶりに入った母さんの部屋の大きな北向きの窓に映る光景を眺めてエリーは絶望の混じった声を漏らしていた。


 「トール。……見て。」


 エリーの指示する通りに窓の外を見る。


 「橋の上にいるのは……すべて王政側の兵隊なのか?」

 「それだけじゃない。海の上にたくさん浮かんでいる小舟。あれもすべて王政のもの!」


 ちょうど目に入ったその一つの舟が、島に幅寄せし乗り込んでいた兵隊が上陸していた。


 「完全に、囲まれている。」


 呆然としていると、再び爆発音がした。今度は訓練場の方からだった。


 「くそッ!」


 思わず駆けだしていた。


 「行ってどうするの!?トール!」

 「とにかく向かうんだよ!訓練場へ!」




 訓練場へ着くと、そこに太陽の日差しが差し込んでいた。


 「天井がない……?」

 「さっきの爆発音は、これだったんだ……。」


 地面に散乱する天井だった瓦礫がそれを物語っていた。

 そして、そこに現れた人物は顔の良く知った人物だった。


 「バクタ……さん?」


 かすかに舞う土煙の奥から、その姿を視認することができた。


 「トール君、それにエリーか。」


 聞きなれた声であったが、どことなく雰囲気がいつもと違うように感じられた。


 「今までどこに行っていたのですか!島もアジトも大変なことになっているっていうのに!あなたリーダーでしょう?部下たちに指示は出されたのですか!?」


 エリーが声を荒げる。


 「リーダー……か。今の俺はそのようなものではないし、もう部下と呼べるものもいない。」

 「なにを……言っているのですか?」

 「そうだよ!バクタさん!ちゃんと説明を―――――。」


 その時だった。バクタさんが何かを唱えたと思ったら、眼前に巨大な熊のような生物が現れた。


 「これは、召喚術!?」

 「そうだ。こいつは俺の魂の化身。つまり殺意の塊だ。」

 「殺意の塊……。そういうことなんだね。バクタさん。」


 すべてを察することができた。

 バクタさんは何か理由があったのだろうが、僕達を裏切った。それは揺らぐことのない事実だ。


 「エリー。バクタさんを倒すよ!」

 「了解!」

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