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512.無理ゲーというもの

短いです



ゼブルがバンちゃんの額の宝石の中に取り込まれたのを見てから改めて三人組を見る。急に現れたからか若干警戒の視線ではあるものの見た目が若いからか侮ってるような様子も見られる。だけど見た目で測れないのが魔族という種族だ。その点で考えるとこいつらは苦戦らしい苦戦をあまりしたことが無いのだろう。

まあそれもそのはず。最低でも二人、ゼブルの死ぬ場面を見た限りだと三人目も何処かで隠れていて常に多対一を強要していたようだから。まあ例えそうであっても恐らく魔王としてかなりの力を保有していたであろうゼブルを倒せる程度には強い。油断は出来ないけど……。

「まあ関係ないか」

私には多分関係無い。素因が例えどれだけあろうとこいつらには負ける気がしない。それは自惚れでもなく慢心でもなくただの事実。私はこいつら三人よりも遥かに強い文字通り格の違う存在と何万年以上も戦わされてきたのだ。そう簡単にただの魔族に負けるつもりなどない。

「それでもヴェルデニアはきつそうだけどね」

そう思ってから頭を振る。ヴェルデニアは多分もう普通の魔族として扱っていい存在ではない。というかもしそうなら他の魔族達に総スカンを喰らいそうだ。

「その点お前達は良いよね。大して強くなさそうだし」

私の発言に三人の内のへらへらしていた男が眉を顰める。女も苛立ったのか雰囲気から怒りを感じる。ゼブルを殺した男は少し距離を置いて私を観察しているみたいだ。

「はは、見てなかったのかな?君達の保護者なゼブルさんは僕達が殺したのに。何かしていたみたいだけど基幹素因を壊された魔族は復活しない。勝ち目は無いんだよ?」

まるで諭すようにそれでいて優越感を感じさせる話し方で男が声を掛ける。だけど私はそれを無視してゼブルが最後まで離さなかった黒い小さな箱を手に取る。恐らくはアーティファクト。ただ名前は知らない。こっちの大陸で出来たものかもしくは無名の魔導具技師によって作られたもの。はたまた新しく作られたアーティファクトのどれかだろう。

効果は分かりやすく内側に転移の為の魔法陣が描かれていて内部に閉じ込めるだけ。固定と状態保存の魔法が同時に使われていて外部内部問わず何かしらの干渉を防ぐ。干渉するためには何かしらのキーワードが必要。内部は空間拡張されていて外部からはそれを箱内部に閉じ込める空間圧縮が使われている。見た目は小さいのに中に入るとなると大きいってやつだね。

でもそれだけ。魔法を少しづつ紐解けば簡単に解除出来るだろう。知らなければ対処出来ないと思うけど。解除の順番を間違えたら多分空間圧縮が先に消えて中に居る人ぺちゃんこになると思うけど。それと珍しいことにアーティファクトの原料は基本的に幻石(ルテナフォム)なんだけどこれはグラム鉱石で作られている。まあ幻石を作るのは凄く大変だし仕方ないかもしれない。とはいえグラム鉱石をアーティファクトに使える程度に加工するのも大変だけど。あと原料のせいで不壊の特性が消えている。

アーティファクトもどきといった方が正しいかもしれない。魔導具よりは凄いけどアーティファクトには及ばないなんとも中途半端な道具だ。

それと近くに何故かなめくじ?みたいな魔物が死んでいる。純粋な魔物とは違うような変な感じがするし何かあったのかもしれない。問答無用でゼブルが殺したっぽいけど。

とここまで無視していたら男が苛立ったのか魔法を放つ。小手調べなのか炎の槍を作って投げてきた。私はそれをぺしっと弾いて地面に叩き落とす。魔力もそんなに籠っているようには見えなかったし本当にただ振り向かせる為だけの魔法だ。

「馬鹿にするのもいい加減にしなよ?殺すよ?」

そう言う男を冷めた目で見る。

「まあいいや。その箱を寄越しなよ。君に用は無いからね。僕達の仕事はそれの回収と邪魔をする者の処理だ。まさか力の差も理解出来ない程馬鹿な訳じゃないでしょう?」

「……そう。生憎と私もこの箱が欲しいんだ。中に弟達が閉じ込められちゃってるみたいだからさ」

私はそう言ってバンちゃんに箱を持たせる。バンちゃんは少し迷った末に頭の上に乗せた。まあ落ちないなら良いけども。

「そうか。なら君も僕達の敵な訳だ。じゃあ殺すね?」

男はその瞬間剣を持って突っ込んできた。残りの二人も連携を取りながら攻撃を仕掛けてくる。

(ハウリングボイス)

離れた場所に居た狼が何か魔力の籠った咆哮をあげる。それは物理的な衝撃を持って私に襲い掛かる。

「でも私貴方達相手に苦戦する気もないんだ。だからごめんね。すぐ殺してあげる」

だから私は私の中に居る娘達をそっと出してあげた。勢い良く出すと幾ら遠くても街にまで被害が出そうだから。

まずはユミルが酒瓶を持ちながら出て来た。あの酒瓶何処から出したんだろう。私の身体の中に酒瓶が入っていたのだとしたらちょっと怖いのだけど。そしてユミルは飲み干していたらしい酒瓶を地面に叩き付け……それがとてつもない大きさの酒瓶となって空から振り下ろされた。

地面に当たったそれに三人は流石に直撃しなかったようだけど割れた破片で身体中に傷を負う。身を守った瞬間酒瓶の陰に隠れて突撃していたらしいニクスによる自爆を受けてまず女の半身が吹き飛んだ。持っていた槍も半ば溶けている。遠かったからか残りの二人にはそれ程の傷は負っていない。

けどその次に現れたハティとスコルの狼版に観察していた男が喰われた。半身どころではない。綺麗に上半身と下半身が喰われていた。ハティとスコルって首が凄い曲がるんだね。四足歩行の状態で首が直角に曲がってたよ。

そして最後に私に話していた男は無くなっていた。文字通り消し飛ばされていた。多分アジ・ダハーカのダーちゃんに何かされた。見てなかったから知らない。というか終わるまでが余りにも呆気なかったから見る時間が無かった。

「創命魔法はね?私の全魔力で一体創るんだよ。だからね?貴方達は私一人じゃなくて私と同じくらいの力を持った複数体と戦うことを想定してないといけなかったんだよ」

ま、初見殺しなんだけどね?

スイ「知らない人には理不尽だよね」

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