506.報酬
リーリアとリロイを見付けたのだけどなんか変なことをしてた。いや別に奇抜な格好をしたり暴れ回ったりだとかはしていないのだけど何故か二人して地面に座り込み地面をじっと見ている。時折指でつんつんしてるけど何してるんだろう。周りの人も不思議そうな表情してるし。
近寄って行くとどうも蟻のような虫を眺めているらしい。良く見たら蟻というよりてんとう虫に見える。まあ蟻みたいにいっぱい並んでるから普通に気持ち悪い。てんとう虫苦手な方では無いけどどんなものも数が揃えば普通に気持ち悪いんだなと思った。
それを二人はじっと見ていて時折指でてんとう虫の前の土を退かしたりしているみたいだ。小学生低学年位の子供かな?いや生まれたばかりなのだから子供で合ってるのか。
「何してるの?」
「…………?……!?」
二人は私に気付いていなかったみたいで声を掛けたら一瞬不思議そうに首を傾げてから顔をあげて私を見て目を丸くさせている。
「ママ!」
あー、そういえばそう呼ばれてたなぁと少し遠い目になる。周りの人も割と大きな声でママ呼びしたからギョッとしている。うん、まあそうなるよね。どう見ても私ママって言われるような歳には見えないもんね。
リーリアとリロイが抱き着いてきた。ちょっと体勢が悪くて倒れそうにはなったけどしっかり二人を抱き留めてそのまま下ろす。二人とも力強くなったなぁ。良く見たら私が知ってるよりも素因の数が増えている。大抵は大した力の無い属性素因のようだがリーリアとリロイが集めるとはちょっと思えない。多分ゼブルがしっかり育てる為に集めたものを取り込ませたのだろう。
「ママ……?」
「……ん?」
今明らかにリーリアとリロイじゃない誰かの声が聞こえた。しかもママ呼びされた?振り返るとニコニコ笑顔の男の子が立っていた。
「……なんで居るの?颯太くん」
いや、こっちアルーシアだから居たらおかしいのだけど物凄く堂々とそこに名も無き神の端末らしい颯太くんが居た。リーリアとリロイをそれを見た瞬間、顔を強ばらせていつでも戦闘に入れるように待機状態だ。
「えっと、君に渡し忘れてたものがあったのと、ほら、君も知ってる通りあの世界は壊れてしまったでしょ?だから僕もお役御免ってことであの世界との繋がりが切れたんだよ。だから今は君専用の端末って感じかな?」
「あの世界は壊れても地球そのものは残ってるでしょ?」
「残ってるけど僕がそこに行くと二人居る事になっちゃうからね。面倒だから辞めてきたよ」
そんな簡単に辞めてきたとか言われても反応に困る。
「私専用ってどういうこと?」
「ん?あぁ、少し勘違いさせちゃったかな。特に君に何かして欲しいとかは無いよ。あくまで君が用事があったら呼び掛けてくれたらいつでも来るねっていうだけだから。何も用がなかったらずっとごろごろしてるよ。あくまで窓口なだけだよ。正直気にしなくても良いよ。呼び掛けられなかったら何も分からないからプライベートも侵害しないよ?」
颯太くんはそう言ってから周りを見て指を鳴らす。すると周りの人は途端に反応しなくなり少しづつ遠巻きにするように離れていく。人払いと認識阻害の結界かな?中々面倒そうなそれを指を鳴らすだけで発動させるのだから流石神だ。
「まあ専用端末の方は分かった。渡し忘れたっていうのは?」
「うん。まあ君も知ってる通り僕とユメは契約を交わした。契約は既に終わってるし報酬も渡してはいるけど考えてみたら君も巻き込まれているのに報酬が渡されていないなって思ってさ。その報酬を渡しに来たんだよ」
「でもそれはユメとの契約でしょう?おかしくならない?」
「大丈夫。確かに契約が終わっている以上君に何か渡すっていうのは本来駄目だよ。けど巻き込んじゃったお詫びと僕の名前に対するお礼という形なら渡せるんだ。まあ屁理屈に近いけれどね?」
そう言って茶目っ気たっぷりに笑う颯太くん。それを見て物凄く警戒するリーリアとリロイ。対照的過ぎて凄く居心地が悪い。
「……まあ貰えるものなら貰おうかな。それと、リーリア、リロイ。この子は大丈夫だから落ち着いて」
「で、でも!あの子化け物!」
リーリアが物凄い怖がりながらそう言う。まあそうだよねぇ。死の素因を持つ魔族であるリーリアは魔族の中でもトップクラスに怖い存在だと思うけど神様、しかもこの世界の三神よりも遥かに格が高いと思われる神様相手だと何も抵抗出来ないもんねぇ。実際名も無き神であった神様はどの程度格が高いんだろうか。戦神であったあの人も割と警戒していた感じだったし多分かなり高位の神様であるのは間違いなさそうだけど。
「ん?あぁ、僕?僕は上から数えて四番目位だよ」
ナチュラルに心を読まないで欲しいけど具体的な位置を言われるとそれはそれで困る。え、というかそんな高いの?いやそれより名も無き神よりも上に三柱は確実に存在するってこと?
「まあ居るね。その辺りは自分で調べてみてねってことで。とりあえず報酬なんだけど……はい。これね」
颯太くんはそう言いながらランドセルからポイポイ出していく。いやそのランドセルどうなってるの?
「まあ君の持つ指輪みたいなものだよ。とりあえずそれらが報酬だよ」
何やら金属みたいなのが幾つかと魔導具かアーティファクトかは分からないけどよく分からない蝋燭のようなもの。それと光っていて詳細が全く分からない球体らしい何かを置かれた。
「金属の方はまあ言う必要は無いかもだけど、とりあえずアルーシアには無いだろうし説明しておくね?」
アルーシアに無いものとなると地球にはあったのだろうか?と言ってもどう見ても何か力を感じるし普通の金属じゃないのは間違いないだろうなぁ。
「えっと、こっちの銀色がミスリル、金色がオリハルコン、黒色がアダマンタイト、朱色のがヒヒイロカネね。まあ何かしらで名前くらいは聞いたことあるんじゃないかな?一応報酬としてはいい物だとは思うけど。使い方が分からなかったらまた聞きに来てね。一応時間は掛かるけど増えるようにしておいたからそう簡単には無くならないと思う。あ、でも出来たらこの世界の人には渡さないで欲しいな。素材のまま渡すのはダメって事ね。加工してて元の原型が分からないなら構わないよ」
「おー、確かに聞いたことはある。時間ってどれくらい掛かるの?」
「魔導具みたいなものだから一応魔力を多めに与えてあげれば理論上はどこまでも早くできる。まあ一瞬で枯渇すると思うから現実的じゃないよ。自然に増えるのを待った方が良いと思う。それとこっちの蝋燭はアーティファクト。名前は無明灯篭ね。まあそんな強い効果じゃない。この蝋燭で火を付けた物は消さない限り消えないって効果。付けられるのは同じ蝋燭みたいな火で灯す明かりに限定してあるよ。だから落として火事に!なんてことにはならないから安心してね。付けられたものも同じくね。弱い聖属性も放ってるから墓地とかに置いておけばアンデッドの発生は抑えられるはずだよ。火もそんなに強くないから布とかで隠せば直ぐに暗く出来るし夜の読書のお供にって感じかな?」
「なんか普通に良いアーティファクトだね。ありがとう」
戦闘の役に立ったりなどは絶対にしないだろうけどこういう平和なアーティファクトも良いと思う。しかも地味にアンデッドに効果があるのも良い。何となくこれで火を灯した明かりを建物の廊下とかに置いておいたら雰囲気は出そうだ。純粋に嬉しい。
「それとこれは……これに関しては一回使ってみた方がいいかな?」
光っている球を私に渡してくる。なので受け取って胸の中に入れてみる。多分使い方はこれで合ってると思う。すると途端に理解した。というか理解せざるを得なかった。
「え、これ、いいの?」
「うん、元々迷惑掛けちゃったからね。契約だから仕方ないとはいえ流石にね?……その子達大事にしてあげてね?」
優しい笑みを浮かべた颯太くんを見て私も笑みを浮かべる。私の中でちょっとうるさいくらいの声が聞こえてくる。
「うん。ありがとう。大事にする」
「ふふ、喜んでくれたようで良かったよ」
颯太くんはそう言ってから私に近付く。
「それと……あの世界は確かに壊れた。君が知ってるあの世界はもう無い。それにコピーだったから良いとはいえ君から漏れる魔力による影響はオリジナルの世界にも影響がある。だから君はもう地球に戻れない」
「うん。分かってる」
「だから僕は君が戻れるように少しだけ手を加えようと思う。君が安心して戻って来られるように」
「え」
「君は確かにイレギュラーな存在だ。本来存在しない。生まれ方も僕の関与しないもので本来なら削除しないといけないものではある。けど君もまた僕の世界で生まれた存在であることに変わりはない。つまり変則的ではあるけど君もまた僕の愛し子である事には変わらないんだ。だから少しだけ時間は掛かるかもしれないけど君がやる全てが終わった時、一度で良いから帰ってきなさい。迎えられるようにしておくから」
そう言うと颯太くんはその姿を消した。
「……うん、ありがとう。私頑張るね」
きっと見守ってくれているであろう神様に私は決意を表明した。
スイ「……♪」




