497.掃討、騒動
先週疲れていたのか書き忘れました。
十三時頃にもう一話投稿します。
山での掃討が終了した。というかそれ以外に言うことがない。山で私の元娘達と出会うことも無く普通に小動物の魔物を倒して終わった。一番大きな動物がリスだった時点で察した。ほぼほぼ虫ばかりである。まあ山なのだから仕方ないけれども。
とりあえずこれで魔物化した動物達は多分もう居ない……と思う。小さいのはもしかしたら生き残っているかもしれないけれど流石に小さ過ぎてどうしようもない。そもそも何処に居るのか分からないし。それに小さいのは多分そんなに長生きもしないで死ぬだろうしそこまで気にする必要も無いと思う。何かあればムンちゃんみたいなのがしれっと動いて終わらせることだろう。
「あとは……外典を使う案件と軌道の変更、姫一行の送り返し、かな?先にやるとしたら軌道かな。外典使ったら死神来るし」
「それで良いよ」
一人言のつもりが返答を返されて驚く。近くにはあの外典を手渡ししてきた男の子だ。もう会うことは無いと思っていたのに早い再会である。
「あ、僕君との窓口になったからさ。もし何かあればまた会う事になるよ。颯太くんでも端末Aでもαでも大戦士マクシムでも何でも呼んでね」
「マクシム」
「ごめん、やっぱり無しでいいかな?」
煌めくような笑顔でにっこりと断られた。恥ずかしくなるなら辞めとけばいいのに。
「颯太君にしとく。あんまりこの世界でも端末呼びするのもどうかと思うし」
「そう?まあそこは君に任せるけどね。それと君のことは何って呼ばれたい?スイちゃんとかお姉ちゃんとか愛しのジュリエットでも良いよ?」
「じゃあジュリエットで」
「やっぱり無しで」
ちょっとお調子者な男の子なのだろう。私に本として外典を渡してきた時は大人しめな感じに見えていたけれど実際はその真逆のようだ。
「スイお姉ちゃんは軌道の変更をまず最初にしてね。固定は暫くしておいてあげるから。その後はお察しの通り外典を使ってね。死神は少しの間でいいなら抑えておいてあげるから。あ、外典を使うよりも前に彼等を送り返しても問題は無いけどそうすると固定が緩くなっちゃって軌道が戻っていくから死神と外典でのタイムリミットが忙しいことになっちゃうよ」
「大人しく外典を使うよ」
「うん。じゃあそれだけ。頑張ってねスイお姉ちゃん。僕との約束を忘れないでね」
そう言ってから自転車に乗って帰って行った。
「そこは普通に人間っぽいんだ。あ、遠くで友達らしき子達と手を振って合流した。溶け込んでるなぁ」
それはそうと颯太君が居た場所を見て見たら何かあった。妙にドロドロした感じの液体が入った瓶だ。色も緑色で所々に紫っぽい色が見える。
「ラベルが……栄養剤。体力と魔力が凄く回復するよ。美味しくはないよ……へぇ……」
凄く反応に困る。ゲームとかでいうポーション、或いは回復薬、エリクサーとまではいかないだろうけどそれに類似する何かなのだろう。まさか地球でそれを見るとは思わなかったけれど。
「ただ栄養剤って……なんか響きが嫌。畑とかに撒く薬っぽい」
まあ恐らく厚意なのだろう。実際アルーシアにはこれに類似した薬の類は無かった。だから有難いといえば有難いのだが神様謹製という事を考えたら何か副作用がありそうでちょっと怖い。
「成分も分かんないし」
魔法で探ってるのだが頭の中に出てくる成分表が「薬草だよ!ギザギザの葉っぱが特徴的!」とか「果物の汁だよ!酸っぱくてキューってする!」とか「お魚の骨だよ!カチカチ!」とかばかりで本気で分からない。あと何気にその中の幾つかに「霊王の魔力だよ!怖いね!」「天候の機嫌だよ!ゴロゴロ〜!」とかあってどう見てもヤバそうなのが入ってて物凄く飲みたくない。天候に機嫌とかあったんだって言いたい。あと霊王って誰。
「……まあアルーシアどころか地球でもまともに作れない代物なのは理解した」
一品物なのだろう。効果は多分高いだろうからここぞと言う時に使うとしよう。というかそもそも魔族という魔力生命体の体力とか魔力を回復させる薬がまともな訳が無かった。とりあえず栄養剤は指輪の中に入れておいた。
「さて、パパ達のところに戻ろうかな。その後軌道の変更をしよ」
パパの反応を見付けると飛び立つ。ちなみに瞬間移動の魔法で移動した方が楽なのだけど魔力の拡散が抑えきれないからしない。アルーシアなら気にせずに使えるんだけど。まあそこまで距離もないから良いか。
やって来たのは警察署、まあそれはそうか。公園から飛び立ってそんなに時間も経ってないし。中に入ると何やら大騒ぎしている。どうやらそこそこの規模の事件が起きてしまったようだ。多分私とは関係ない。だって行ってない場所の話が飛び交ってるし。銀行強盗とか今時やってるんだね。あんまり上手くいく気しないけど。尚私がやるとしたらとりあえず中に入って真正面から奪います。帰ります。撃たれても弾きます。で終わる。魔族舐めてはいけない。多分ミサイル撃たれてもちょっと熱いとかで終わる。
私が行って解決しても良いけどどうしようか。あまり目立つのもどうかとは思うのだけど困ってそうだしなぁ。銀行は今完全に閉められていて人質が結構な数居るようだ。突撃するにしても犯人は一人じゃない上に銃で武装しちゃってるみたいだ。流れてきたテレビでは発砲音が響いている。
県が違うからこちらに要請まではしてこないだろうが近場ではあるから困ったら人員補充で呼ばれるだろう。警察の動きなんて知らないから多分そうとしか言えないけど。
「……ん?」
あれって花奈のマネージャーさんじゃなかったっけ?花奈がテレビにほんの少しだけ映ったのが見えた。変装しているようで気付かれてはいないけど車の傍でオロオロしているのが見える。近くに女の人が居るけど立ち位置的にも護衛かな?まあ普通に考えたら警察官だろうね。あ、車の中に入った。
「……ん〜、まあ、あれだ。正直あの人に思う所なんて何も無いけど花奈が悲しみそうだし?仕方ないよね」
そう呟いた私を誰も見ることは無くそっと署から抜け出した。
『……………………』
「うん。スイお姉ちゃんはしっかりと『僕』を認識したよ。これで戻る時の楔になれる」
『……………………』
「気にするくらいなら自分でやればいいのに」
『……………………』
「まあいいけどね。僕とあなたは似て非なるもの。既に分かたれた存在だ。あなたを目印には出来ないしそもそも全てが終われば『僕』が残る……それでいいんだよね?」
『……………………』
「まあ元は同じ。あなたの思いも『僕』もしっかり引き継いで新たな『僕』として生まれ直すだけだよ。そしてそれが終われば……」
『……………………』
「そうだね。まだ終わってない。始まってもない。だから後は見守ろうか。きっと期待に応えてくれる」
スイ「そろーりそろーり」




