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495.外典



「良いよ」

さてこれからどうしようかと一人で考える為に警察署から出てすぐにあった公園でジュースを飲んでたら通りかかった子供にそう言われた。

小学生になったばかりに見えるくらいの男の子はニコニコと笑顔で脈絡無く唐突に私にそう言った。右手に漫画の本らしき物を持ちながらベンチに座っていた私に何気無く近寄ってきたのだ。

「…………」

この位の子供は悪戯で何かをする場合もあるので下手に返事をしない方が良いのかなとか考えていたら男の子は再度私に話しかけて来る。

「色々とやって欲しいこともあるけどそれさえしてくれたら軌道、変えていいよ」

もうほぼ確定な気もするけど黙っていたら男の子は私に本を手渡してきた。

「はい、これあげる。じゃあね」

ニコニコしたまま男の子はサッサと駆けて行った。追い掛けて返すだけなら何時でも出来るので本に目を向けると恐竜の絵が描かれている本、いや違う、中をパラッと捲って見たら明らかにおかしい。だってどう見てもこれは……

【????の閲覧を許可されました】

【????の試行を許可されました】

【????の貸出を許可されました】

唐突に聞こえた、いや聞こえてはいない。どちらかと言うと何らかの文字群を見たような何かだ。良く分からない。ただこれが私とあの神、名も無き神との格の差というものなのだろう。

あ、うん。警戒していたのだけどやっぱりあの男の子は名も無き神の端末の一体なのだろう。以前出会った男性と女性の二体以外にも居たということだ。所で端末とは言っても普通に生活していそうだし体ではなく人と呼ぶ方が合っているのだろうか。まあ恐らくあまり会うことも無いだろうし気にしなくてもいいか。

そして改めて本を見る。無かった。手元にあった筈のそれは完全に消え失せていた。いつ無くなったのかさっぱり分からなかった。

「…………こういうちょっとホラーな演出は嫌いなんだけどなぁ」

なんというか……ゾクゾクするので。

何にせよ何故かは分からないし私と名も無き神との間にあるであろう契約?はどういうものなのか良く分からなくなってきたけれどもとにかく私は再び力を手に入れた。

「外典・聖刻の理?」

私が前に持っていたものは外典・正逆の理だった。今回貸し出されたものはそれとはまた違う物のようだ。ただこちらは恐らく本当に貸し出されただけで事が終われば返すことになるだろう。それはまあいい。だけどこの力を読み解けば読み解く程分からなくなってくる。

「……時間に関する理」

正逆の理も完全に理解が出来ていたとは言えないがある程度どういうものかは理解していた。正しい形を歪める、或いは歪んでいたものを元に戻す。そういう力だったと思われる。少なくともその力を使えば世界間移動は比較的容易だった。だが今回のは時間の理だ。というか使ったら滅茶苦茶死神が飛んできそうな理なのだがどうすべきなのだろうか。

「い、いや、この世界なら名も無き神が守ってくれる……よね?じゃないとまともに使えないんだけど……」

正逆の理も正直に言って今なら分かる。あれを頻繁に使っていたら死神が飛んできて首を落としに来るだろうと。だけどまだ幸い猶予はあった。だがこっちは無いだろう。一回でも使った瞬間に飛んでくる。ほぼ間違いなく。

「…………どうしよ」



概要は分かった。勿論正確に全てを理解したとは言わない。というか言えるわけが無い。だけどとりあえずある程度だけ理解した。

外典・聖刻の理。時間に関する理を操作する権限のようなもの。幾つも分岐する未来を見る未来視。未来を決定もしくはその未来に行く確率を操作したりする未来操作。使えば手元くらいのサイズの範囲もしくは世界そのものの時間を止める時間停止。過去に起きた出来事を見る過去視。過去に起きた出来事を起きなかった過去と入れ替える過去改竄。そして未来もしくは過去に移動する時間移動。

うん。どれもやばいとしか言えない。もし死神が来ない程度の力を使うとしたらギリギリ手元範囲の時間停止くらいだろうか。それくらいなら厳重注意位で済みそうではある。後は過去視も許されそうではある。それ以外は勿論一発アウトだ。特に一番駄目そうなのは過去改竄、未来操作辺りか。時間移動も結果として改竄か操作と同じことになりかねないからアウトだろう。何もせず動かないならギリギリ瀕死程度に済まされるのは世界そのものの時間停止かもしれない。

「……これどう使うの?」

ただの力の塊として使うのも難しい。何せ時間の理だ。通常の属性的な力じゃない。それにそもそもただの力に変換したとしてもロスが激しすぎてむしろ邪魔になるレベルだ。

「でも多分名も無き神はこれを使う事を望んでる……」

この世界で時間を操作しないといけない何かが起きているのだろう。だとしたらそれは何かを突き止めなければ難しい。そして恐らく一回でも使えば死神が飛んでくるまでのタイムリミットが発生する。だからすぐに見つけてその原因の排除をしないといけない。

「けど……」

それはそれでまあ構わないのだ。名も無き神が間に入ってくれれば死は恐らく免れる。だけどそれとは別にあまり使いたくない。何故なら時間の理には致命的とでも言うべき欠陥があった。いや多分本来はそんな欠陥は無いしこの外典にもそんな欠陥はなかったと思われる。つまり意図的に残したか付加した欠陥だ。

「この世界の記録が消える……か」

それは私がこの世界で過ごした全ての記録が消えるというもの。前世としての私は流石に消えないとは思うがスイとして過ごしたこの世界での記録は消える。つまりそれによって起こった変化も全て無くなる。恐らくはそれが目的だ。

私が来たことで警察は魔物や異世界の存在を知った。一部の人間は飛び交う魔物達の姿を見た事だろう。魔法によって起こった現象でこの世界の素因も変に活性化し始めていていずれ魔法が復活するかもしれない。私の力を受けて人を辞めた存在も居る。それら全ての影響を消したいのだろう。その為には私という記録は邪魔になる。

言うなれば私を通して地球の過去を改竄しようとしているのが名も無き神で私自身もまたアルーシアの過去を改竄する為にこの力を使いたがっている。ウィン・ウィンの関係というものだ。いやまあ正確には私は地球での記録を失うから私一人負けてはいるのだけど。

「まあ……仕方ないかぁ」

こればかりは仕方ない。多分こうなるまで名も無き神は手を出すつもりもなかったと思う。割と奔放に過ごさせてもらった。ならばそろそろそのツケは払うべきだろう。最低限のお別れくらいは言わせてもらおうとは思うけれども。

とりあえずこれを使う時が来るまでこの世界で起きている異常を排除することにしよう。さしあたって何か海の方に居る馬鹿でかい存在の排除かなと私は公園から飛び上がったのであった。

スイ「海には巨大生物が居るのはデフォルトなのかなぁ……?」

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