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494.合流しました

二話投稿二話目です。



「ん〜、あそこか」

スイは魔力をソナーのようにして放ち居場所を特定する。

「行くよ、バエラル」

「何処に行く?」

「ん?あぁ、セラのところ」

そう言うとバエラルは固まる。

「姫様の所……か」

バエラルの心中は分からないが計画を立てるとしたら姫であるセラは必須となる。わざわざここで話し合ってからセラに後から伝えるのも二度手間だ。滅ぶかもしれない国に戻れと言われるセラは嫌がるかもしれないがそこは何とか説得するしかないだろう。それに何時までもこの世界にセラとフナイ、赤ちゃんも置いている訳にも行かない。あのジィジとか名付けられていた白タコも回収しないといけないし。

バエラルが付いてくるかどうかはどうでもいいのでさっさとセラの元へと飛んでいく。後はこの世界についても色々とあるのが分かってしまったからそれについてもどうにかしないといけない。短期間にやることが多いのは少し面倒くさい。

「そう言えばバエラル、シャイラ……あぁー、他に何人か貴方と同じように吸い込まれていた人が居たはずだけどどうなったか知ってる?」

飛んで行った私に慌てて付いてきたバエラルにそう問いかける。

「それについてだが私は何も知らない。あの時の私と同様に吸い込まれた人物が居たのは理解しているが」

「え?」

まさかの回答に立ち止まるスイ。バエラルはその隣に立つと改めて言う。

「私は何も知らない。人数やどう言った存在かまでは知っているがその行方までは分からない。ほんの少しだけこの世界に居たという事は掴んだがそれだけだ」

「この世界に……?地球に居たってこと?」

「そうだ。だが一日と経たずに居なくなった筈だ。それが何が原因かまでは知らないが」

バエラルの言葉に嘘は感じられない。付く必要も無い。

「シャイラ達が地球に……?」

少し考えるが今は居ないのならば考えても仕方ない。名も無き神辺りが何かしたのかとも思ったがそれならばスイ達に接触が無いのも不自然だ。もしかしたら海辺りに投げ出されて死んだのかもしれない。そうして転生してからシャイラ達としてアルーシアに行くのかもとも考えたがそれはそれでおかしい。

「……まあいいか」

調べることも出来ないので考えるのをやめる。今はセラ達と合流して話し合いするのが先決だ。そう思い再び飛んで行く。バエラルもこの話に興味は無いのか特に何も言うことなく付いてくる。

そう遠く離れている訳ではないからか飛んでいくと三十分もしない内に到着した。場所は警察署のままのようだ。まさかずっとお菓子でも食べていたのだろうか。セラなら有り得そうだなと思わざるを得ない。フナイはどうしているか分からないが本を気にしていたし文字でも勉強してるかもしれない。赤ちゃんは流石に何も出来ないだろうからそこは気にしない。

「ここに姫様が……」

バエラルが何やら感慨にでも耽っているのか呆けた声を出したが無視して中に入る。考えてみたらセラ達を預けてからまだ一日、正確には数時間しか経過していないことになっている筈だ。世界観移動による時間移動はこういう所で不便だ。何せ何をしてたか一々思い出さないといけない。記憶力はそれなりに良い方だと思ってはいるが流石に百五十万年とかいう頭のおかしい年数が経っていると思い出すのも一苦労だ。というか今更だが十五万年の修行だった筈だが百五十万年の修行になってた。

年数を数えていなかったしそんな余裕も無かったから仕方ないのだが流石に途中で気付くべきだったかもしれない。言い訳させて貰えるなら元人の時間感覚だと十五万も百五十万も等しく想像の出来ない年数である。とりあえず馬鹿みたいに長いとしか認識していなくても仕方ないのでは?と誰に言うでもなく自己弁護しておく。

「みどり?」

「ん?」

振り返るとパパが立っていた。そう言えばいきなり走り出して逃げ出したのだった。あの後小山さんと何か話したのだろう。近くに小山さんと花菜やマネージャーさんは居ない。

「あぁ〜、色々言いたいこともあると思うんだけどね。とりあえず今は忙しいから後でいいかな?」

私がそう言うとパパは分かったと頷く。バエラルを見て首を傾げていたけどそれに関しても特に何も言わなかった。私と一緒に居るから異世界関連だと想像したのだろう。

セラ達と別れた場所は応接室だったのでそこに入る。案の定というかセラはそこに居た。ゆったり紅茶を飲みながらクッキーを齧っている。ここだけ何か空気が違う気がする。フナイは本を幾つも持って見比べている。多分文字の勉強をしているのだと思う。何時まで地球に居ることになるか分からないからせめて言葉は分からなくても文字ぐらいはという事だろうか。真面目である。赤ちゃんは籠の中で寝ていた。近くに哺乳瓶もあるので多分警察官の誰かが買って飲ませたのだろう。

「スイちゃん、戻ってきたのかい?」

すぐに気付いたフナイがそう言って本を置く。フナイの事だから多分私が戻ってきたのを途中で気付いていたのだろう。セラは動かない。叩いてやろうか。

「姫様……」

バエラルの言葉にようやくこちらを見たセラ。私を見てその後ろに立っているバエラルを見て一瞬怪訝そうな表情を浮かべた後にまさかと表情を変える。

「爺?」

「姫様……はい。そうです。私です。バエラルです」

バエラルって元の名前だったんだとどうでもいいことを思いながらフナイを見る。フナイは籠を持つと私と一緒に応接室を出る。

「セラウィム様の教育係……って所なのかな?あの時一緒に吸い込まれていた人だよね?」

「だと思うよ。少なくとも私はそう思ってるし自己申告でもそうだね」

「そっか。どうやら姿は違うようだけど再会出来て良かったよ」

フナイはそう言ってから私を真剣に見つめる。

「それで僕達は何時戻るのかな?」

「分からない。少なくとも今すぐは無理。地球とアルーシアの距離が遠過ぎる。でも普通に待ったら何十年も掛かるからちょっと裏技を使うよ」

「裏技?」

「この世界を一時的に支配して世界の移動の軌道を少し変える。かなりしんどいとは思うけど一気に動かすんじゃなくて少しづつ変えるだけなら多分出来るとは思う。少し時間は掛かるけど私の負担も少なく済むし何より普通に待つよりは圧倒的に早く出来る」

「そうか。ならデメリットは何かな?」

「名も無き神に許可を貰わないといけないのと規模が規模だから負担が少なくなってもかなりしんどい。後召喚の頻度が多分変わる……けどこれはあんまり気にしなくていいかな。実質的なデメリットはそう無いよ。近付けて接触したとしても位相そのものが違うからぶつかってドカンも無いし」

そう言いながらも多分許可そのものを得るのは簡単だろうなぁと思う。だけどそれには幾つかの問題を解決しないといけないだろう。どれもそう難しくは無いが少し時間が掛かるのは否めない。

「最短だとどれくらいなんだい?」

「……全てが理想的に進めば約二週間。長くても二ヶ月ってところかな」

フナイはそれを聞くと分かったと頷く。ちなみにこれまでの会話は勿論アルーシアでの言葉なので近くに居た警察官やパパはずっとはてなマークを浮かべていた。

「フナイ、ただね。もし戻れる時が来ても私とは別行動になる。しかもその後恐らく貴方達とは二度と会わない」

「……それは帰ってしまうって事かな?」

「そう、だね。うん。帰ることになる。私だけ」

そう言うとフナイは寂しくなるなと言うと私の頭を撫でる。そう、帰ることになるのだ。きっと。私だけ。結末を知るにはきっと大分先の話となるだろう。過去に何があったか、資料になるかそれとも私の記憶が改竄されて理解するようになるのか。それは分からない。けれどこの目でどうなったかを見ることだけは無いのだと私は理解していたのだ。

没ネタ


フナイ「寂しくなるな」

(( ´・ω・)ノ"ナデナデナデナデナデナデナデナデ

スイ「頭禿げそう」

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