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486.足掻くしかない



何年経ったのだろうか。五年くらいまでは何とか覚えていたけれど既に数えるのをやめている。それもこれも寝る間も惜しんで、というか起きている最中はほぼ常に攻撃してくるあいつらのせいだ。

まず魔を司る神エイエルヤル。彼?はとにかく近接戦闘はとことん弱かった。ぶっちゃけ普通に殴り掛かれば私どころかごく普通の魔族にすら負ける程度には弱い。勿論神として身体能力はかなり高いから生半可な魔族では負けるだろうけどそれでもそれなりの魔族が勝てるだろう。だが彼?はとにかく魔法が強かった。

本人曰く魔法ではなく魔呪とかいうらしいがこれがまた酷い。簡潔に言えば大出力大範囲低コストとかいう意味不明な攻撃だ。しかも私の反撃の魔法に対して打ち消すどころか何故か吸収して威力を増大させる。しかも連打が可能なようで半径五キロを消し飛ばしてくる威力を数秒の間に百は飛ばしてくる。尚これでも私が死なない程度に加減しているらしい。

そして子供の神、名前は結局まだ聞いていない。何か腹が立つし。何を使っているのかは推測でしかないが普通の会話の中に時折混ざる単語が効果を発揮する。その特徴から言葉か詠唱、或いはもしかしたら力ある言葉の神の可能性が高い。力ある言葉の神だとすれば何となく納得する。私や他の魔族達、或いは三神などといった存在がいつの間にか知っていたそれが世界を保有しない神による概念付与とでも言うものならばどの世界にも力ある言葉があってもおかしくはない。まあ勿論あくまで推測でしかないしそれならあのクソジジイの方が可能性はありそうなのだが分からない。

そしてこいつはとにかく馬鹿げたまでの耐久力と格闘が強かった。攻撃手段は殴る、蹴る、投げるみたいなものばかりだが威力が桁違いだった。かつて三匹のうちの海ロフトスにバレーボールみたいに叩かれた思い出があるがそれ並みの威力だ。つまり一撃で死にかける。ロフトスと違ってあくまで人の子供程度の大きさから放たれるから何とか逸らしたり耐えたり出来るけどまともに喰らえばその時点で動けなくなる。

こちらの攻撃はほぼ無視。殴っても蹴っても魔法をぶつけてもガン無視である。勿論避けたりとかも偶にしてくるけどそもそも私が反撃に移れるタイミングがほぼ無い。何せ攻撃が早い。私が一回反撃する前に空中コンボ七十回とか普通にしてくる。ほぼサンドバッグである。

そして最後、戦乙女の神。正確には戦神らしい。こちらは名乗りもしない。どうやら魔王という存在を毛嫌いしているようで名乗る気がそもそも無さそうだった。そしてこいつに関しては特に何も出来なかった。

近付けばバラバラ、離れてもバラバラ、魔法を撃ってもバラバラ。どうしろと言うのだ。その度にどうやら観戦しているらしい神に治して貰っているみたいである。つまり魂すら削ってきてる。殺す気かな?

しかしそうではないようでそもそもほぼ全ての攻撃に魂を壊す術式のようなものが刻まれているらしくどう手加減しても魂が摩耗するのは仕方ないのだそうだ。物凄い嫌そうな表情でそう教えられた時は何でこいつを鍛錬相手に選んだのかと本気で思った。

戦神というだけあってエイエルヤルや子供よりも遥かに強い。しかもかなりえげつない性質を持っていた。戦いに関してほぼ全ての権能を保有するこいつは戦いながら成長するのだそうだ。例えばこれまで対処法の存在しなかった攻撃を放ち、それに対して対抗された場合にそれに対する対抗手段を得るのだ。人体で言うなら抗体のようなものを獲得するらしい。リアルタイムで。それを聞いた瞬間多分勝つのは無理だと判断した。即時獲得するらしいから一秒前より今の方が強いを地で行くのだ。どう頑張っても勝てる気がしない。

そしてそれを繰り返しながら生まれたのが今らしい。神も魔王も殺した回数が断トツのトップだというのだからそれはそうだろうなと思わざるを得なかった。

ちなみにこの三柱はそれぞれ世界を管理していない。というか管理するとしたら自身の力が強すぎてかなりカオスな世界になるらしい。エイエルヤルならば魔界か地獄かと言った様相になり、子供ならばその世界の言語が数千を超え、戦神ならば常に戦争が起きる。思わず絶対作るなと言ってしまった。

尚この中だと一応エイエルヤルが一番弱いらしい。神の中にランクがあるのかは知らないがエイエルヤル、子供、戦神の順に強く、神としての座的には戦神、エイエルヤル、子供らしい。まさかの子供が一番偉いらしいが言語に相当するものを担当するならば確かにそうかもなと思った。

まあこんなくだらない事を考えてられるのは今が休憩中だからだ。とは言っても最初の方に咄嗟に私が言った食事の時間なだけだが。ぶっちゃけ死なないとしても延々と死を覚悟する時間を何百年も過ごすと考えたら絶対無理だと思って言ったのだ。気付かれているかもしれないが乗ってくれたので結果オーライである。

「さてと、食べ終えた?」

子供が無邪気そうな笑顔でそう言う。多分一番好戦的なのはこいつだと思う。何せ食べ終えて指輪に片付けたらすぐに殴り掛かってくる。流石に何年かは分からないけど既に何百何千の回数見た光景だ。だから最初の方は何とか防げる。防げるだけで反撃は出来ないが。この三柱はお互い同時に攻撃して来ることは無い。私は分からないけど三柱の中で時間が明確に区切られていてそれに合わせて攻撃してくるのだ。但し交代する際に声掛けが無いどころか何も言わずに攻撃してくるので無防備に背中を見せることも出来ない。何せ何時攻撃してくるかさっぱり分からないからだ。

最初の頃は数えていた。どのタイミングで交代なのか。だけど分からなかった。三十分で交代してくる時もあれば五時間以上交代が無い時もあったのだ。多分お互いにテレパシーのようなものか心を読めるもので会話しあっていてその時々で時間を変えているのだ。そんなもの分かるわけがなかった。その場で変えている訳じゃないというのが唯一の救いかもしれない。

「あははっ!!凄いなぁ!!こんなに受けられるようになるなんて思わなかったよ!!最初の頃とは別人みたいだね!!」

「うるっ……さい!!」

あと子供は話すのが好きらしく延々と話しかけて来る。しかもその話の合間に単語で攻撃してきたりするから油断も出来なかった。そういう戦闘スタイルなのだと分かってはいるが集中出来ないのでやめて欲しかった。

「そろそろ段階を上げてもいいかな?」

子供の目が細められていてゾクッとした。そう感じた瞬間には四肢が吹き飛ばされていた。何も出来ずそのまま地面に落ちる。しかし落ちる寸前に頭を掴まれた。

「あははっ、駄目だよ油断しちゃ。お仕置きだね?」

顔を思いっきり蹴られて吹き飛ぶと同時に私の意識もまた闇の彼方に吹き飛ばされた。



「あっれー?まだ無理だった?」

【いや構わないだろう。これくらいせねば鍛えるにも限界がある】

「私としてはどうでもいい。だがせめて私に近づける程度にはなって欲しいものだな」

「厳しいねぇ?ま、ボクもそろそろウォーミングアップは終わりでもいいかなぁって思ったし良いか」



三柱の会話を結界の外から見ていた神達は戦慄した。何がというか全てにである。三柱の戦いとも呼べぬそれを見てどれ程の格の差があるのかを実感し、それに対してほぼ何も出来ずにやられる少女を見て憐憫し、それで尚諦めるどころか食らいつき殺意を滲ませる少女の歪さに顔を顰め、まだ何も出来ていない少女を更なる力でねじ伏せようとする三柱の余りにも無慈悲な会話に恐怖した。

だがここに居る神達はまだまだ恐怖する。なぜならこの時間はまだ凡そ百五十万もの時を重ねる事になるからである。少女は知らない。百五十年を千倍にしたとかいうクソジジイのお茶目?な冗談によりそれが万倍に引き上げられている事を。

とりあえず全てが終わった時ほぼ間違いなくクソジジイは少女に殴られるであろう事は決定していたのであった。

神達「「こわっ……」」

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