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483."神"と"魔王"

話が進まない……



スイが神様の家(暫定)で働き始めて十年が経過した。ほんの少しずつではあるが読める単語が出来てきて宿題と称して出される紙も何となく分かるようになってきた。

とはいえまだまだ知らない言語が多数出てくるせいで七割方読めないのも事実。解読していて気付いたのはまず複数の言語が使われている物は意外と少ないということ。平仮名、片仮名、漢字を纏めたようなものはそう多くなく、あっても平仮名(暫定)、片仮名(暫定)を纏めた言語が三つ程度あったくらいだ。その他のものは大抵一つの言葉だけで構成されたものだ。

まあ一つだろうが二つだろうが読めないものは読めないのだが。法則性が多少分かっただけまだ良いのかもしれない。

確認出来ただけで出現した言語は約三十七。これのうち似通っていた二つの言語を完全解読、三つ程が半分程度解読、四つが一部のみ解読といったところだ。あくまで現段階でそうだろうというだけで間違えている可能性はまだまだあるが。

そして読めた言語に良く出現していた単語が幾つかありそれが今スイの頭を捻らせていた。この紙だが恐らく神かそれに類する存在、アウロゴーンと一緒に居た世界の意志のような存在によって作成されていると思われるのだが、どう考えても何故これらの単語が多数出現するのかいまいち分からないのだ。

「これは"神"でこっちは"魔王"」

神はまあ分かる。だが何故そこで魔王の話が出るのかが分からない。読めた内容的に魔王の何かによって窮地に陥った神からの他世界、或いは他の神による救援を要求するものらしいのだがそれが不思議なのだ。

そもそも神の管轄下の世界で生まれた魔王がどう神に対して反逆を起こせるというのか。本来権能も力も神の方が上である。他世界の魔王が神に挑むなら難しいだろうが分からなくもない。理が違い過ぎて相手になるかは分からないが反抗そのものは出来なくもないだろう。

だが同じ世界の魔王が神に挑むのは無茶を通り越してほぼ自殺と変わらない。何せ神はかなりの力を使うことにはなるだろうがやろうと思えば魔王から根こそぎ力を取り上げる事も可能な筈なのだ。なので救援を求める位となれば取り上げるのを先に視野に入れると思うのだがそれをしている様子が無い。

それと一見関係は無いのだが他の紙に書かれていた内容の一つに神同士による衝突が報告されていた。片方は死亡、もう片方は重傷を負いながらも自世界に帰還したという内容だった。これだけなら神同士でも戦い殺し合う様なこともあるのだなで済むのだが、その報告から僅か数日後に死亡したはずの神からの報告があった。

内容は自世界に帰還した側の神に対しての賠償のようなもので幾つかの世界の譲渡と貴重らしいアイテムの権利の放棄が書かれていた。尚アイテムそのものは神達のオークションらしきものに出品されて高額で落札されたらしい。随分人間臭い神様達だなと思ったが良く考えたら出会った神様はだいたい人間臭かったなと思い直した。神様は自分をベースに人間を作るとかいう神話か何かがあったと思うがあながち間違いじゃないのかもしれない。

少し話を戻そう。恐らく神同士の戦いでは死んでも復活すると思われる。素因のように"神"という概念か何かで保護されているのだろう。だからといって何故復活するのかはさっぱり分からないがそういうものなのだろう。

だがこの魔王に襲われている神はどうやら本気で焦っているらしく偶に誤字や脱字があったりと焦りに焦りまくっているのが文章からも見て取れる。だが"神"という概念?で守られている筈の神ならば例え殺されても大丈夫だと思うのだがどうも私の知らない何かがありそうである。

少し悩んだがこの紙が宿題として出されたということは救援を出すにしろ出さないにしろ既に返答はされたと思われる。私がする事というか出来ることは無い。その日はそう思っていつも置いている場所に紙を置くと寝た。

その日から二日後に出された宿題がこの世界の結末だった。出してきた人?の名前はウェンディ。幾度も紙に書かれていた"魔王"からだった。

内容は救援を出さなくてありがとうというものだ。煽りのようにも見えなくもないが本気で感謝しているらしく幾度も感謝の言葉が出て来ていた。それによるとこの世界を治めていた神は世界の割譲という凡そ神がとってはならない行動をしていたらしい。

神のルールというか世界のルールとでもいうのか分からないが幾つか神でも絶対にしてはならないとされているルールがある…らしい。その内の一つが世界の割譲。言葉通り自身が治める世界を他者に渡す行為だ。

何がいけないのかというと神や世界はそれぞれ独自の理によって動いている。

分かりやすく言えばアルーシアでは魔法があり魔物が居て不思議な鉱石などがある。対して地球ではかつてはあったかもしれないが現時点では魔法が無く魔物は存在しておらず不思議な鉱石も存在しない。全て神話のような物語の中だ。つまり二つの世界はかなり異なった理によって運営されている。ではこの二つの世界どちらかを割譲するとなるとどうなるか。

地球にアルーシアが割譲されればその瞬間から動物は軒並み魔物と化しビル群は不思議な鉱石の一部に変換されることで崩れ去り魔法の適性を持たない者達が魔力や魔法を得ることで半数以上が死滅する事だろう。逆もまた然り。アルーシアの人々は唐突に魔力を失い地盤は急な変化により地震や陥没が至る所で起き魔物は一部生き残るだろうがほぼ全てがただ巨大な動物と化し魔導具や武器防具の類はガラクタと化すだろう。

世界の割譲とは互いの世界を壊す最悪の行為なのだ。とはいえほんの一部であればここまで極端な変化は起きない。緩やかに変化して行き最後にお互いを壊し合うこととなるだろう。

また割譲に伴い互いの世界が行き来出来るようになってしまえばより崩壊は加速する。その為決して割譲だかはしてはならないとされているのだ。じゃあ何で完全に出来ないようにしてしまわないのかというと世界が崩壊する前に神同士が交渉し合い何処かの世界に移住させてもらうためだ。勿論交渉が行われず崩壊して消え去ることも多いのだが神の中には感情移入しすぎて生き残って欲しいが為にそういうことをする者もいるらしい。尚その場合移住が完了すると即座に世界そのものが壊される事で割譲に伴うデメリットを消す事となる。ほんの少し影響は残るが大抵はその世界に馴染むことで何も起きることは無い。

という事をこの神はどうやら知らなかったのか平然とやっていたようだ。そのせいでこの世界は緩やかに崩壊の一途を辿りかけており魔王がその力を使い神を降したのだそうだ。そう神を殺したのだ。しかも消滅、つまり復活が有り得ない。

「魔王は神を殺せる……?」

ここでスイはふと思った。魔王とはそもそも何なのだろうか。アルーシアにも魔王は複数人存在している。スイもまた魔王である。大抵は素因を十以上保有している魔族が何らかの条件を満たして成るということは知っている。ただ素因を持つだけでは魔王たりえないのだ。だが魔王として世界に認められたからといって神を殺せるとまでは言えない。認められられれば多少は強くなるが神を殺せる程には強くならない。あくまで同程度の素因を持つ魔族よりは一段階か二段階かその程度強くなる感じだ。神には届かない。

「……ん〜、分かんない。ただ私の知らない魔王としての権能というか権利というかがあるって事なのかな」

とりあえず今すぐどうこうなるものでもなく、また神を殺せるから何だという話でもありスイは紙を丸めると適当に壁に叩き付けた。だってまさかの半分以上読めなかったからだ。ここに来ての解読した内容が間違えていた可能性が出て来た。スイはふて寝した。

スイ「ぐぅぅぅ…………!!」

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