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463.呪いというもの

キリよくするため短いです。



スイがジズの背中に捕まるようにして逃げてから僅か数分後、空間が歪むようにぐにゃりと景色を変えるとその中から一人の女が出てきた。

「あら?あらあら、色々してあげたのに結局逃がしちゃったのねぇ、やっぱり人間なんて使えないわぁ。お遣いも出来ないなんて」

そう言って女は悩ましげに頬に手を当てる。その様子をアーラン達は見ながらも近寄りも話しかけもしない。その女の纏う雰囲気がどう見てもその天使のような見た目とは裏腹に余りにも禍々しかったからだ。まるで、そう、さっき倒したばかりの魔王のような。

女はアーラン達には興味も無いのか倒れているミリに近付きその手から黒い短剣を取る。

「やっぱり気味悪いわねぇ。仮にも神様やってただけあるわぁ。呪いだけでこんな物作り出せるんだからさぞかし本人は怒り狂ったんでしょうねぇ」

短剣を汚いものでも触るように指先だけで摘みながらそう言うとポイッと放り捨てる。その後ほんの少しだけアーラン達を見るがすぐにどうでも良くなったのか視線を逸らす。勿論片手間に殺される可能性も無くはないが一旦は声に出さずに安堵する。

「さてと、あっちの方かしらねぇ。まあ、随分と早いこと。面倒だからさっさと死んで欲しいものですけど」

女は心底面倒臭そうにそう呟くとずっと開いていた空間の揺らぎの中に手を突っ込む。そして突っ込んだ後に出してきたのはまさかの二人目、怠そうにしながら女に首元を掴まれているのは小さな横長の何かを持った男、いや少年というべきか。そして更にその後ろから歩いて出てきたのは杖をついているヤクザのような風貌の男。そしてその肩に乗っかる全身真っ白で穴の無い仮面を着けた子供。

どの存在も背中に天使のような金属の翼が生えている。逆に言えばそれくらいしか共通点らしきものが存在しない。アーラン達は知らないが正確にはアレベオルタンケンス達は金属そのもので出来た機械天使なので翼どころか全身が金属なのだが傍目からはそうとは見えない。ごく普通の人に金属で出来た天使の翼を付けているようにしか見えないのだ。

「おい、捕まえてねぇのか?俺らの主様に喧嘩吹っ掛けた馬鹿はよ」

ヤクザのような風貌の男がそう女に問うと女は溜息をつきながら答える。

「そうみたいですわねぇ、まあ人間なんて所詮その程度ですわ。まあ呪いは与えたようですし追い掛ければすぐに見つかるでしょう」

「まだ捕まえてないなら帰っていい?」

女に捕まえられている少年が持っていた携帯ゲーム機の電源を落としながらそう言うが女は答えずに笑みを向けるだけだ。少年は顔を顰めて女の手を振り払うと何処から出したのか棒付き飴を舐め始める。

「早く捕まえてね」

小さく、か細い声で仮面の子供がそう言うと三人は先程までの態度とは異なり一気に表情を引き締める。

「あれは、私達にとって危険な存在だ。私達の計画に気付かれれば間違いなくあれは阻止しに来る。迅速に対処を」

「と言っても呪いを受けたってことは既に瀕死だろ?そこまで必死になる必要があんのか?」

仮面の子供の言葉に男がそう言うと仮面の子供はピクリと動くと首をギギギっと不自然な程曲げて男へとその視線を向ける。

「対処を」

ただ一言そう言うと男は冷や汗を流して頷く。

「ではよろしくお願いします。期待してますからね」

仮面の子供はそう言うと男の肩から飛び降りると揺らぎの中に入っていく。仮面の子供が入っていった瞬間に揺らぎが閉じ元の風景が広がる。

「ふぅ、焦ったぜ。怖い怖い」

「全く、怖いもの知らずですわね?死にたいんですの?」

源天使(マゾル)の言葉に逆らうなんて勇気ある。でも欲しくない勇気」

三人はそう言うとスイが逃げた方角へとその視線を向ける。

「さて、では殺しに行きましょうか」

女の言葉に残りの二人も禍々しさを感じるほどの殺気を漲らせながらその場を後にする。

「行かなければ……」

それを見てアーランは恐怖で震える足を手で抑えながらも必死に立つ。そして歩いていく先に待ち構えるのは一体何か。



「はぁ……はぁ……はぁ……」

辛い、苦しい、気持ち悪い、痛い、何が起きているのかは分からないけれどこれが呪いなのだろう。やっぱり呪いなんてクソだ。魔法のようなものなのにその源泉の力が魔力じゃないから魔族が使えないクソみたいな仕様の力。そのくせ魔法みたいだから魔力体の魔族にはそれこそ身体全てを引きちぎる様な痛みを与えてくる。

「げほっ……ごふっ……」

血が勝手にこぼれ出してくる。人族や亜人族ならばもう少しマシなのだろうが魔族は身体全てにダメージが来るからそれこそ死にそうになる。

「はぁ……はぁ……グライス……ネズラク……ジズ、何とか外側から……私の身体に、アクセスして、呪いを取り除いて」

無茶苦茶なことを言っているのは分かるがそれくらいしか出来ない。というかこんな状態で冷静に呪いを取り除く事なんて出来ない。ましてや魔力がぐちゃぐちゃに動いているような状態だ。動かすことすらまともに出来やしない。だが私から半自律状態で切り離されている娘達には影響はほぼ無いようだしグライス達はそもそもアーティファクトだ。スイ本人が何かするよりは可能性がある。

「分かりました。今はお休みなさいませ、我が主」

ジズの言葉に頷くとすぐに目を瞑る。意識を失う直前

グライスとネズラクがジズによって起動されたのが分かった。

それと同時に少し遠くからこちらへと向かってくる強烈な殺意も感じた。

スイ「…………」

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