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459.ダンジョン壊しました



「……ん〜?何こいつ、まともに記憶残ってない?」

男の頭の中で腕を動かしながら記憶を読み取っていくとあまりにも不自然なほど記憶が無かった。まるで産まれたての子供のようだ。残っていた記憶はダンジョンを操れば魔物をどこからか引っ張れるということと自分の名前、自分が使える魔法?のようなもの、以上である。

「……私が戻ってくるまでの間に記憶を消した?いや流石にそこまで早く記憶が消せるとは思えないし何かのトリガーがあってそれを使ったって言う方が正しいかな?」

だとすればこの男にもう用はない。もしそうならこの男に記憶が戻る事は有り得ないだろう。そこまで消えていたら害は無いから別に生かしてあげても良いのだが異物である以上この世界に置いておけない。けど元の世界の場所を覚えてないから送り返す事も出来ない。つまり無理矢理別の世界に送るかこのまま殺すかの二択ぐらいしかない。

「……流石にここで殺すのは胸糞が悪いというか無抵抗の相手を殺した感があって気分悪いというか」

勿論無抵抗ではないしガッツリ敵対しているから別に慈悲を掛ける必要など無いのだけれど何となく嫌な気分になる。

「ジズ?この男何か動きはあった?」

「いえ、御身に言われた通りにしかと見張っていましたが何も。じっとしていただけでございます。兆しを見極められず不甲斐ない」

ジズがちょっと涙目になっていたので頭を撫でる。全く動くこともせずに記憶の処理が出来るということは恐らく時限式かじっとしている事その物がトリガーだったかだ。流石にそれを見極めろとは私も言えない。というか私も普通に見逃すと思う。

「大丈夫、ジズは良くやってるよ」

それよりかはこの男の処理だ。どうしようかなと少し悩んでいたらジズが元の姿に戻ってそのまま踏み潰した。止める間もない早業だった。いやまあ止められたとしても止める理由も特に無いから多分放置したと思うけど。

「……ん〜、まあ良いか。敵だしね」

「だ、駄目でしたか?」

「ううん、別に。気にしなくていいよ」

踏み潰されて熟れたトマトのように赤い染みとなった男から目を逸らしてダンジョンを見る。

「……ん?」

何か違和感があったので男の方を見る。熟れたトマト状態だ。

「あれ?そういえばダンジョンってアレベオルタンケンス達の侵略拠点みたいなものだったよね?」

機械天使のようなものがダンジョンを管理していた筈だ。だけど目の前で死んだ男はどう見ても機械天使には見えない。というか機械天使なら血は出ていなかったし間違いなく違う。

「ダンジョンって色んな世界であるの?侵略拠点的な感じで?」

だとしたら幾つの世界を警戒しなくてはならないのか分からない。警戒した所で何か出来る訳では無いのだけど心の持ちようは違う……かもしれない。

「……まあ良いか。気にしても意味無いし」

とりあえずダンジョンの主?である男は死んでダンジョンも多分大部分の機能は停止している。ならそこまで気にする必要も無いだろう。この世界に他にダンジョンがあるなら別だがそこまで警戒し始めたら大変面倒なことになる。見付けたら壊す、それぐらいでいいだろう。

とりあえずでダンジョンに向かってジズを突進させて壊しておく。無駄に魔力を使う必要などない。体当たりで壊せるならそれが一番いい。ジズは不満そうだったけど。ジズを身体の中に戻して街に戻ることにする。男の死体は……まあ放置していたら獣が勝手に食うだろう。

「……なんか変な違和感はある……ような気もしなくもないけど……」

多分考えても情報が足りなすぎて分からない。なら気にするだけ無駄だ。さっさと街に戻ることにしよう。



街に戻ったら何やら騒がしい。ダンジョンで動いていた時間はそんなに無いしこの短時間で何があったのだろう。妙に厳戒態勢に見えて不思議な気持ちで歩いていたら深刻そうな表情のアーラン達を見付けた。

「どうしたの?」

「あぁ、スイか。いやスイがもう一月も戻ってきてなくて……」

「一月?ダンジョンってそんなに時間感覚おかしいんだね」

「もしかして何かあったのかもって……スイ!?」

「ん、スイだよ。それで?私が一月も戻らないって?」

アーラン達が物凄い驚いているけどどうしてだろう。確かに一月も戻らないってなったら心配かもしれないけど私がそう簡単にやられないってことぐらい分かっていると思っていたんだけど。

「スイ!大丈夫なの!?」

「大丈夫だよ、ミリ。私からしたら一日で帰ってきたつもりなんだけどね」

やっぱり世界間移動のような感じでダンジョンとこの世界はズレていたのかもしれない。感じた違和感はこれかな?もしもそうなら二日三日居たら一体どうなっていたことやら。あ、もしかしてだからあの男転移で目の前に出て来た私を見て絶望していたのかな。本来ならもっと時間稼げるはずなのに出来なかったから。

「まあそれは良いか。それで?どうしてこんな厳戒態勢なの?私が戻らなかったからってこんなに警戒する必要無いだろうし何があったの?」

「えっとね、魔王を守る結界の消失が確認されたんだよ。でもそれだけじゃなくて魔王の周囲に最低でも万を超える魔物がひしめき合っているのを目視出来たんだ。それでいつ来るか分からないから警戒しているの」

ミリが少し怯えたように震える。それも仕方ないかもしれない。ミリは私と契約(出来てない)しているけどそれ以外とは黒印のせいで出来ない。つまりミリに戦闘能力はほぼ無い。私が居るから契約者としてここに居るだけだ。

そう考えたらミリから離れるのも少し考え直した方が良いかな。今回みたいに意図してないとはいえ長期間離れることになればそれだけミリは危険に晒される。アーラン達が守るとは思うけど幹部クラスが来ればどうなるかは分からない。

「大丈夫だよ。魔物が万単位で居ようが億単位で居ようがそれこそ兆単位で居ても全部殺し切るから。ミリの元には一匹たりとも通さないからね」

「それはそれで怖いような……」

アーランが余計なことを言うので少しだけ睨んでおく。まあ実際あの幹部クラスが兆単位とかで居たら少しだけ話は変わるかもだけどその場合は私も娘達を出して本気で相手するだけだ。ベヒモスやレヴィアタン、ジズやユミルといった巨大娘達を相手にどれだけ立ち回れるのか知らないけれど抜けるのはほぼ不可能だろう。だって今あげた子達全員全身見えないし。ユミルとか足しか見たことない。ジズ達の姿は可変式?みたいで本来の大きさは知らないけど全身というかどんな姿をしているかは見たことあるから知っているけれどね。

というか私の娘達で神話生物が元となっている子達は基本的に滅茶苦茶大きい。フェンリルとかは一見大きくなさそうに見えるけどあの子本来なら大きく口を開けたら天に上顎が届くとかいう意味分からない設定があるからね。ちなみにその子孫扱いのスコルとハティは月と太陽を呑み込むらしいからやっぱり凄く大きいはずだ。

「あぁ、というか魔王の結界が無くなったってことは攻め込む準備は出来たってことだよね?」

「まあそうなるな。魔物達をどう倒すのかとは軍の人達と協力しなくちゃいけないだろうけど」

「適当にドカーンってやったら多分過半数消し飛ばせると思うけどやったら駄目?」

「まあスイなら出来そうだけど生き残った魔物が他国に逃げ込んだりとか村や他の街に行くことを考えたら連携はした方が良いだろうな」

アーランの言うことに頷く。まあぶっちゃけ逃がすというかレヴィアタン辺りに周囲に展開してもらって思いっきり内部に向かって締め上げたらそれだけで全滅しそうな気もするけどそれをしたら多分こっちが魔王扱いされてもおかしくない。いや魔王なんだけど。横から攻撃されたら反撃で殺しかねないしレヴィアタン達の思考は私をベースにしているからか良くも悪くも私最優先だ。

つまり私がこの人達は守ろうって決めていたとしてもレヴィアタン達は容赦無く殺す。人に興味が無いからこその絶対者の振る舞いだ。これは基本的に踊ってるだけのバロンやコロポックル、獏みたいな戦闘能力自体が他の子に比べて低めの子も全員だ。敵対者絶対殺す子達のあの子達は不用意に出さない方が良い。いや出す時は出しちゃうし何かされたら私がまず最初にキレそうな気もするけど。

「んー、連携するのはいいけどどれくらい時間かかりそうかな?」

「元々結界が消えるのは分かってたからな。多分一週間もしないうちに準備は整うと思う」

「そっか。ならそれまではゆっくりさせてもらおうかな」

どうせならこの世界にしか無さそうな食材とか料理とかを指輪の中に入れて持ち帰ろう。多分移動したら最後、もうこの世界には戻って来ないだろうから。

スイ「もう少しか……」

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