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448.魔力耐性

Xの方では既にお知らせしたのですが先週は疲れて寝てしまい書く事が出来ず投稿出来ませんでした。

改めて謝罪します。

先週未投稿分と合わせて今週は二話投稿となります。

よろしくお願いします。



ゲームがモチーフとなった世界だろうというのは分かっていたけどまさかここまで面倒だとは正直思っていなかった。

本来精霊というのはガーディ君達が連れていたようなトカゲみたいな大きさの小動物のような存在らしく人型かつ大型の私のような存在は想定されていない。だからなのか私とミリは同室になる。まあそれはいい。ミリが私を襲う事は無いだろうし仮にそうなっても片手で捻り潰せる。

気にせずに部屋の中に入った瞬間選択肢が再び出てきた。お風呂、食事、睡眠と分かりやすい選択肢が出てきた後にあからさまに枠の色からして違うピンク色の???の選択肢が出て来たのだ。

勿論ガン無視した後お風呂の選択肢を選んだら何処をどう通ったのかもさっぱり分からないままにお風呂場の中に居た。流石に存在する世界が違う私に干渉するのは難しいのか服などは着ていたが。

そしてお風呂場の外にミリの気配を感じる。そしてそこで再び選択肢、ドアを開けてお礼を言う、ドアを開けて誘惑、ドアを開けて~、とその文言だけがズラっと並ぶ。

「ん〜、これえっちなやつだったのかー」

私はまずゲーム等をやった事がないから分からないがどう見てもそういうのを匂わす、いやむしろかなり直接的に表現するものまであった。

「これ選んだらそういうルートって事かな……?服は着てるけどきっとミリには着ていない私が見えるんでしょうね。了承したってことで世界が強制的に私の服を剥ぐのかもしれないけれど」

まあどちらにせよ面白くない。いやはっきり言おう。かなり不愉快だ。そして何となくだがこの選択肢はこの世界の通常ルールではない。というか毎回誰かしらが選択肢を選ぶ度に時間の止まる世界なんてまともに運用出来るわけが無いから私が来たことで追加されたルールと見るべきだろう。

「これは私をイラつかせるルールだなぁ。まあ多分選択肢によっては世界によって圧殺することも出来るんだろうけど」

例えば魔王との戦いの最中に選択肢で誰かを私が庇うという物があれば避けることも防御することも出来ないままに無防備にダメージを受ける事になる。というか恐らくそれが本来の使用用途だろう。

「……放置したら時間は止まったままなのかな」

だとしたら少し考えを纏めるのにこの時間を使わせて貰おう。私は鍵が掛かったように全く動かないドアに対して蹴りを入れるがビクともしない。完全に世界によって保護されている。物理的な力が通らないというよりはそもそも蹴った事象そのものが無効化されているという感じだ。

時間が止まっているけれど世界の流れそのものは消えてないようで魔力は出せそうにない。出したらまた吸われてしんどい思いをすることになるだろう。娘達も出さない。というかそもそも寮のお風呂場だから狭くて動きにくい。

ドアを何度も蹴りながら考える。蹴った際の衝撃は一切ドア側に伝播せず私の身体にそのまま返ってきている。生半可な身体で蹴りなど入れたら一発で骨が折れるだろうと思える威力だ。

少し考えて極小規模の魔力で攻撃してみた。ほんの少しなのに普通の時と変わらない位の魔力が取られたけれど魔法は発動してドアへとぶつかる。その瞬間ドアが変形した。

「ん〜?魔力に対する耐性がこの世界に存在しないからかな?」

だとしたら魔力で出来ているスイの攻撃に耐えるのもよく分からない。もしくは物理衝撃は無効化されるということなのかもしれない。

「えっと、ならこれで……」

手のひらの魔力同士の結合を少し揺らがせる。途端に手がぼやけた霞のように不安定になる。魔力ではあるけれど魔法ではないからか世界も反応はしない。その状態でドアを軽く押すと力の入れ具合に対して異常な程変形していく。押せば押すだけドアがひしゃげていき遂に破壊されて外側に吹き飛んで行った。

「……こわ」

本当に軽くしか押していないのに見る見るひしゃげていくドアはかなり怖かった。ふと思いドアではなく浴槽の壁に触れた瞬間瓦解して外が見えるようになった。

「…………」

人には絶対に使わないでおこうと思いながら手のひらを元に戻す。ドアや壁でこうなるなら人に当たれば一体どうなる事か。魔法でひしゃげたのなら分かるのだが触れた瞬間にひしゃげるのは普通に恐怖でしかない。

「何!?何が起きて……!?え、えぇぇぇ!?お風呂場が壊れてるぅ!?」

ミリが走ってきた。気付いたら選択肢は消えていたようだ。まあイレギュラー過ぎておかしくなったのだろう。ミリは私の姿を見ても裸とは思わないようだ。ただ確証が欲しい気持ちもある。

「ミリ?」

「お風呂場が……って何?スイ」

「私って服を着てる?」

「……?どういう質問なのそれ?着てるよ?」

ミリが心底から理解出来ていない表情でそう答える。私はそれに対して頷くとさっさと外に出た。お風呂は何処か適当な所に入ることにしようと思いながら。残されたミリは首を傾げて動きを止めていたけれど精霊だと思っているスイを慌てて追い掛けたのだった。


そんな事があったりしながらもそれ以上の事は起きなかった。あのお風呂場破壊事件以降私に対して何らかの選択肢が出る事は無かった。恐らく世界側が諦めたか何処かで致命的な選択肢をぶつけて排除を目論んでいると思われる。

この世界のリソースとでも呼ぶべきものはあの選択肢にかなり割り振られていて排除するとなれば選択肢以外に方法は無いと思われる。そもそも世界そのものを止めたりその間全ての衝撃(魔力による衝突以外)から世界を守るなんて事は相当力を入れていないと出来ない。

「排除なら抵抗するしかないけど……ぶっちゃけ揺らがせてから地面にダイブするだけで世界壊せそうなんだよね……」

はっきり言って排除は世界の崩壊と同義と見てもおかしくない。何せ私は適当に足先を揺らがせてからジャンプするだけで掘削機のように地面が崩壊していくことが予想される。流石に世界もそこまで分の悪い賭けはしないだろう。

そしてそんなことを考えて私はミリと一緒に学園だったらしい場所の入口に当たる門で待機している。昨日勇者パーティが王都に到着したらしく今日顔合わせなのだ。

「ミリ、勇者パーティは全員黒印持ちって話だったよね?」

「そうだよスイ。黒印を持たない人は魔王に対して攻撃を加えることすら出来ないからね」

ミリはそう言うけれど私にはそれが良く分からない。だってミリに見せてもらった黒印からは明らかにこの世界の基準で測ったらおかしいレベルの呪いだったのだ。魔力は感じないので精霊力というらしい似た力による呪いなのだがそれに込められたのは悲哀や悲嘆といった悲しい感情とそれに伴う憎悪や怨嗟の感情、憤怒を超えて憎悪からスタートするその感情は控えめに言ってもやばい。

そもそも誰が掛けた呪いなのかはは知らないけれど多分相当やばい存在からの呪いだ。スイも恐らく本気で対応しなければ負けてしまうかもしれないレベルの。

というか娘も全力かつスイも本気でやって勝てるか分からないといった感じだ。はっきり言ってヤバすぎる。そんな存在が掛けた内容すら不明の呪いを掲げながら魔王討伐とか自殺行為にしか感じられない。

「……(まあもしかしたらそれが魔王討伐なのかもしれないけれど)」

スイは外れて欲しいと思いながらミリを見る。魔王に対して恨みを持つ高位存在が作ったかもしれない人型の爆弾のようなミリをただ見たのだった。

スイ「…………」

ミリ「どうしたの?」

スイ「ううん、なんでもないよミリ」

ミリ「そう?」

スイ「うん。……なんでもないようにするからねミリ」

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