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446.違和感のある世界



さっきからアーラ?というらしい札が滅茶苦茶飛んでくる。野良?の私を止める手段がそれしかないのかそれとも一応今は穏便にしたいからそれ以外の選択肢を封じているのか。それは分からないけれど四方八方から飛んでくるからもう地面が札だらけである。ちなみに捕まると面倒くさそうだったので全部弾いた。そのせいで終わらないのだろうけど魔法が使えない以上捕まったら動けなくなる可能性がある。その懸念がある以上受けるわけにはいかない。

「ねえ、ミリ。あの人達にこれを投げるのを止めて貰えない?札っぽいから弾くのが意外と面倒なんだよ」

ペラペラとまではいかないけれど結構薄いから手で払いのけるにも風圧で変な動きをする。いや別にそれでもいいのだけど時折風に煽られてまた向かってくるのだ。大変面倒くさい。

「え、え、でも君と僕は……」

「契約なら出来てるってば。名前も名乗ったでしょ?繋がりは……まあ凄く薄いけど無いわけじゃない。単に私が強すぎてミリじゃ従い切れないだけ」

「え?じゃあ結局契約は出来てないんじゃ……?」

「……いや、うん、出来てるよ。多分。繋がりはあるし契約っぽいのはある。あれだよ、力量不足で私が全力を出し切れないって感じなんだよ」

ちょっと間違えたので訂正をしておく。ミリが納得いかない顔をしているけれどそこは無視をする。というより力量不足で従い切れてないのは間違えてないから突っ込まれると困る。

「とりあえず早く止めて。あれに当たると多分私死んじゃう」

いや死にはしないと思うけれどもしもあのアーラとやらが素因の動きを止めてしまう、あるいは鈍らせる様なことがあれば今の私にとっては致命傷になりかねない。勿論すぐにどうこうなることはないが長時間喰らえば私の身体を崩壊させかねない。

「先生!彼女はぼ、僕と契約して……るんだよね?」

「してるしてる」

「契約してます!」

ミリに言わせるような形ではあるが叫ばせた事でアーラが一時的に飛んでこなくなる。

「ミリ。お主とそこの精霊との会話は聞こえておったが……どうにも契約出来ておるとは思えん」

年配の男性がそう言うと他の先生?達も一様に頷く。やっぱり無理そうかな。最悪この魔法陣ごと壊して外に出る事も考えなくてはいけないかもしれない。

「だから、その精霊と契りをしなさい。さすれば止めよう」

「ち、契り……」

ミリがビクビクしながら私を見る。

「何?」

「えっと、契りを結べって」

「それは聞こえてた。それって何?」

「え?精霊なら全員知ってる契りだよ?」

精霊なら全員知る契り、全く想像つかない。というかそもそも私別に精霊じゃないし分かるわけ無いのだけど。

「ミリが決めていいよ」

とりあえず丸投げした。分からないし。

「え、えぇ!?君の人生を縛るものだよ!?」

「別に構わない」

多分切ろうと思えば切れるし。

「う、う〜ん。あ!ならぼ、僕の契約聖霊として僕の力になってください!」

「分かった」

多分出来るだけ縛らないように必死に考えた内容なのだろう。私はそれに対して頷く。すると先程までかなり薄かった繋がりが一気に太く補強された事が分かった。そしてようやくミリにもそれが感じられたのだろう。一瞬呆けたあと喜色を全面に押し出す。

「や、やった!契約出来ました!契りも結べました!」

ミリが大喜びしているのを見て年配の男性が少しだけ優しげな表情を浮かべた後、キリッとした顔付きになり私を見る。

「ミリを頼みます精霊殿」

「んと、よく分かんないけど分かったよ」

「ミリはこれから勇者パーティに入る予定です。怪我を負わせるな等とは言いません。無事に帰ってきさえすればそれで」

さて、勇者パーティに落ちこぼれ?のミリ。精霊じゃないけど精霊扱いの私か。なんだろうこの世界とんでもなく歪な気がそこはかとなく感じるし、どうしてだろう。物凄く作り物めいた何かを感じる。

話がトントン拍子に進むからだろうか。物語の舞台のような何かに感じる。勿論そんなことなくて私が勝手にそう思っているだけなのだろうけれども。

「ミリが勇者パーティに?あの子……どう見ても弱いけど」

私は改めてミリを見る。身長は私より少し大きいかなといったぐらい。筋肉モリモリといった姿も特にしてないし感じる魔力?多分違うけどミリから感じる力もそこまで多いようには思えない。動きの端々から感じるものとしては運動能力もそう高くはないだろう。

「ミリには黒印があるのです。そしてそれは私達では得ることの出来ないものでして」

黒印、また知らない単語が出て来た。何となく分かるからそれで流しつつ話を促す。そして分かったのがミリの胸元に黒印と呼ばれる何かがありそれが勇者パーティには必要不可欠なもの。けれど落ちこぼれだったミリは精霊と契約を出来ていなかった。けれど魔王は既に復活し各地で魔物達が暴れ始めている。その為、無理に契約させようと精霊を呼び出す儀式を行うと私が来た、ということらしい。

「ん〜?まあ、分かった?」

よく分かってはないけれど分かった事にしておく。というか勇者パーティに何故ミリが必要なのか結局分からなかったし黒印とやらがどう使われるのかも分からないし勇者パーティとやらを作らなくても国家の危機なのなら軍でも出せばいいのではと思わなくもない。というか何故少数の人間に魔王討伐?封印かもしれないけれどさせるのだろう。魔物が強いというのならば軍で圧殺すればいいのではと思う。魔物だっていきなりポンと出てくる訳ではないだろうに。いやこの世界がどういうものか分からないからいきなり虚空からぽんと生まれるのかもしれないけれど。

「とりあえずミリを守れば良いって事だよね?」

「そうですな」

そしてこれだ。違和感がある。先程まで野良だ!等と騒いで私にアーラとやらを率先して投げ付けてたのに契約とやらが出来ていると分かった瞬間のこの掌返し。どうにもゲームのような感じで気持ち悪い。

私はそれほどゲームに詳しいわけではないけれど拓や幸太のやっている所を横から見た限りNPCとやらがこんな感じだった気がする。

なので私はこの先生達とやらを無視することにした。多分そう的外れじゃないと思う。だって意志らしい意志を感じない。勿論私が来るまではごく普通に生活していた人なのかもしれないけれど恐らくこの世界もその前の世界達も私を殺す為にわざわざ作られた世界だと思われる。つまりそういう世界として作られていると見ても何らおかしくはない。

「行こうかミリ。勇者パーティとやらに合流って何時するの?」

「えっと、七日後にここ王都に勇者様達が来るらしいからその日まではここで待機かな」

いきなり出鼻をくじかれた気分だが仕方ない。そりゃ呼び出せるかどうかも分からないのにギリギリに儀式をしたりはしないか。いや七日前の儀式もかなりギリギリではあるだろうけど何度もやって今日成功したという可能性もあるから気にしないでおこう。というかもしそうならミリが間違いなく落ち込む。

「じゃあ、ミリ。美味しいご飯が食べられる所に連れて行ってくれる?」

とりあえずお腹減ったからそうミリに頼んだ。だってアウロゴーンと滅茶苦茶に戦闘した後によく分からない戦闘?をして疲れたのだ。仕方ないと思う。

「えっと、うん。分かった!」

元気よくそう言ったミリ。その首元から覗いた肌には禍々しさすら感じさせる黒い印が浮かび上がっていた。

スイ「お腹空いた」

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