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445.第三世界【オルゴー】



光に包まれ目を開けようとした瞬間、私を襲ったのはとてつもない衝撃だった。物理的なものではない。身体の内側から破裂しそうな程の何かを感じる。

「……ぅぅぐっ!?」

声をまともに出すことさえ出来ない。そして本能的に理解する。このままでは私は一分と持たずに死ぬと。

「……(なに!?何が起きた!?私の身体に何が!?)」

混乱する思考の中、目を開けて周りを見る。何も無い。どこかの建物内の庭のようだ。周りを建物に囲まれていて周囲にも複数の人影を感じる。一人だけかなり近い位置に居るが何かをされているようには感じない。話しかけて来ているようだけれど今はそれどころでは無い。

「……(冷静に分析しろ。今私の身体から何が失われている?)」

混乱する思考を無理矢理遠ざけて冷静に観察する。そしてすぐに気付いた。

「……(魔力が無くなっていってる!!)」

身体を構成する魔力すら失いかけている。確かにこれは放置すれば間違いなく死ぬ。素因からの供給すら全く間に合っていない。ましてやつい先程アウロゴーンと戦っていたせいで魔力もそう残っていない。咄嗟に私は胸の中に声を掛けた。

「……(獏、コロポックル、私のために死ね)」

─んぅお、ヤー♪

二人の声が聞こえた瞬間、死んで魔力へと変換され私の身体に戻ってくる。そのお陰で消えそうになっていた私の身体が急速に輪郭を取り戻していく。けどこのままだと再び失われるのは明白だ。

「……(我は万象を掌握する王。気高き力も卑しき力も孤高の個も協調の群も果てなき有も限りなき無も全の大も小も我が前には等しく全ては王の手に乗る。それが理である。我が指先に一喜一憂せよ。制御(アーカンウゥル))」

だからこそ私は私の素因を制御して魔力の動きを完全に止めた。身体から漏れる魔力が無くなった瞬間、消えそうになる身体がようやく安定してきた。無理矢理シャットダウンするように閉じたが功を奏したようだ。代わりに私は魔法という魔法が殆ど使えなくなったけれども。

「……まあ、死ぬよりはマシ…かな。あの娘達は居るみたいだから解除は任せられるし」

魔力を完全に出ないように閉じたせいで制御で元に戻すのも難しい。ついでに殺してしまった獏やコロポックルも回復させられない。この世界では肉弾戦と消耗した娘達で頑張るしかなさそうだ。魔力を与えられない以上娘達にも魔法の使用は禁止しないと。というより使うと恐らく先程までの私と同じように消えかねない。物理のみで頑張るしかない。

「……ふぅ」

ようやく息が付けるようになったので改めて周りを見る。それなりに大きな建物の中に作られた中庭のようだ。間近にはまだ幼い、とは言っても私よりは大きいから十五か六歳くらいだろうか。その辺りの年齢の男の子が私を見ている。

それと地面には妙な形の魔法陣らしきものが描かれている。言語体系も違えば魔法の成り立ちも違うのか何が描かれているのかはさっぱり分からない。ただその魔法陣らしきものと男の子が何かの繋がりがあって私にもそれが繋がっているというのは分かる。特に何かの悪影響は感じないから放置でも構わない。

次に周囲には大人達が複数人居る。年配の男性とそれよりは若いけれどそれでもそれなりに年のいった男性、白衣を着た女性にその隣で興味深げに私を見る同じく白衣の男性に少し離れた場所で顔を顰めている強面の男性の計五人だ。もっと離れた場所では間近に居る男の子と同世代らしき子達が何人も居る。流石に距離的に何人いるかは分からないが二十近くは居た。

「……ん〜、学校っぽい?」

総じて学校っぽい。大人達が教師で白衣の人達は保健医とかその辺りだろうか。それと子供達はそのまま生徒。建物もパッと見る限りではそれっぽく見えなくもない。実際にそうかどうかは置いておいて初見の感想は学校みたいな所だった。

「あの……」

「ん?」

間近に居る男の子が怖々と声を掛けてくる。何故そんなに怯えたような表情をしているんだろうか。確かに最初は余裕が無かったから色々と無視した記憶はあるけれど私の見た目自体は怖がる要素は無い筈なのだけど。

「僕はミリって言います!貴女のお名前を教えてください!」

男の子にいきなり名前を聞かれた。怯えた感じだったのに自己紹介からの名前の問い掛けで反応が遅れた。

「えっと……?」

多分この反応が良くなかったのだろう。先程までまだ優しげな感じだった年配の男性が一気に顔を険しくさせると叫んだ。

「野良だ!総員警戒せよ!」

年配の男性から出たとは思えない程の大声にビックリする。そうこうしていると年配の男性から何かが飛んでくる。咄嗟に払いのけながら背後に下がろうとして何かにぶつかる。

よく見ると周りに薄いほぼ透明の光の壁とでも呼ぶべきものがある。魔法陣の縁から発生しているようで檻のようになっている。払いのけたものは札だったらしく、それは魔法陣の縁の外に落ちた。

「ぬ、アーラを弾くか」

「いきなり何?」

年配の男性に声を掛けると一気に周囲がざわつく。聞こえてくる声は「声?」「念話じゃない!」「高位の野良って事!?」「まずいぞ!」「学院長に連絡して!」「カージックにも連絡するんだ!」等が聞こえてきた。どうやら私はちゃんと話せないタイプの何かと勘違いされているようだ。あとこのまま放置したらとてつもなく面倒臭そうだなとも思う。

「誤解があるようだから解きたいのだけど」

「耳を貸すな!知性ある野良の言葉はそれだけで破滅へと誘いかねん!」

いや既に遅そうだ。というか一体どういう世界なのだろう。そして私が何をしたというのか。

「ん〜、ミリ?私何をしたのかな?」

何となく近くに居る男の子に話し掛ける。というかこの子も出られないのか魔法陣の内側に居るのだ。必然的にかなり近くなる。

「え?えっと、僕が君とちゃんと契約出来ていたなら……」

「声が小さい。もう一回言って?」

「僕が君と契約出来てないから!野良になった君を放置出来ないんだ。野良の精霊は世界を壊して回るから……」

「契約?」

「うん、僕、君との繋がりが感じられないから契約が失敗してるんだ。せめて名前を聞いて完了してるか確かめようとしたんだけれど……ごめん。落ちこぼれの僕なんかがやるべき事じゃなかったんだ。しかもどうしてか君みたいな高位の精霊を呼び出しちゃうなんて……ごめんなさい」

「契約っていうのが何かは分からないけれど繋がりはあるでしょ?」

先程からミリと私の間にはか細いけれども何かの繋がりがある。今は魔法陣の繋がりが補強しているようだけれど。恐らく少し繋がりが強くなればその契約とやらは完成するのだろう。

名前のくだりはよく分からないけれど繋がりを強化するのに必要なものだったのかもしれない。だとしたらそれに答えなかった私は契約自体が成功していないと。よく分からないけれど多分そんな感じじゃないだろうか。

「無いよ、繋がりなんて。だって君は僕の命令を受け入れられる?」

「さあ?」

「えっと、じゃあ、【名前を教えて】」

何かの力を感じるがミリと私の力の差がありすぎて全くと言っていいほど強制力が発揮していない。完全に力量不足というやつだ。とはいえここに居る、正確にはこの世界の誰であっても私を従えるなんて事が出来る人が居るとは思えないけれど。というかそれを考えたら仮にも神の助力があるとはいえ私を召喚?したらしきミリは十二分に才能があるのではないだろうか。

「やっぱり……」

「ん?あぁ、スイだよ」

ミリが落ち込みかけていたので名乗ると、ミリはキョトンとする。

「スイが私の名前。よく分からないけれど助けてねミリ?」

じゃないと野良?とやらだと思って敵意を向けてくる大人達を殺してしまいそうになるから。

それはとても美しい少女の姿をしていました。

天使が舞い降りたと言われても不思議には思わない。

そんな少女は困ったように僕に話しかけてきたんです。

「ミリ、これからよろしくね」って

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