表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
423/521

417.厳戒態勢敷かれちゃった



「失礼します!」

俺の執務室に息を切らしながら駆け込んで来た兵士が大声で入ってくる。もうそれだけで嫌になるんだがその兵士の顔色はどう見ても悪く持って来た情報が悪い情報だというのが分かる。

「どうした?」

「は!此方に向かっていた商隊からの情報ですが未確認ではあるものの最低でもSSランク以上の魔族が此方に向かったとの報告です!」

「SSランク以上の魔族だと!?」

「はい!商隊の護衛達も口を揃えてほぼ間違いないと」

「……ん?いや待て。何でそんな化け物と接触してそいつらは生きてんだ」

「それは……理由は不明ですがその魔族は食糧と金銭の要求だけをしたとの事です」

「はぁ?」

意味が分からん。魔族なら商隊を襲って皆殺しにして全部奪えば良いだけだ。なのに要求?

「商隊の話ではオーガ二体、ウルフ三十体以上と交戦している最中にその魔族が急襲。オーガ二体を消滅させウルフを瞬殺、その後お礼として食糧と金銭を要求してきたとの事です。ただしこの時点では商人は魔族と認識しておらず渋った結果数点の魔宝具と一部の調味料等が取られたとの事です」

「……よく生きてんなそれ」

「それは本当に思います。何故か生き残ったその商隊は街の方角を聞かれて……商人がこの街を教えたと」

「……その商人は二度とこの街に入れないようにしておけ。街を危険に晒したって事で財産も没収だ……というかそれなら何故魔族がこの街に来ていない?結界にも反応は無いよな?」

「その事についても現場でその報告を受けたアイダ様が即座に街に厳戒態勢を指示、その上で魔族が来ていない事を不自然に思いラトス様を指揮官に任命して竜の草原に向かわせました」

「竜の草原……成程、確かに方向は間違えていないな」

俺の副官であるアイダがある程度整えてくれたのなら後は魔族の襲来を待つのみだ。報告に来た兵士に戻るように指示をして俺も部屋に置いてある剣を握り腰に差す。

「SSランク以上の魔族か。この街が灰になって消えるか焼け野原になりつつも討伐に成功するか……無茶苦茶な二択だなクソが」

俺は毒づきながらも手早く鎧を付けると執務室を出て行った。焼け野原になるのが俺の執務室だけなら上等なんだけどな。




「あ、街だ」

成程、道を間違えた訳じゃなくて少しずれただけだったのか。ずれた理由も多分異世界から来た私に反応したアーティファクトによる誘導だと思う。ちなみにこの砦のアーティファクトには銘があった。但し異界の言葉なのか理解は出来ない。名前長いし覚える気もない。何せ名前と思われる単語だけで二十文字以上あったのだ。面倒だから砦のアーティファクトには私が力ある言葉から【(オラズル)】とだけ名付けておいた。

「ん……?兵士が凄い慌ただしく動いている?」

草原から出て来た私が見えたのか兵士達が物凄く動揺している。私が何かしただろうか?特に悪い事はした覚えは無いのだが。あ、それともずっと浮かしている岩に突き刺さった剣とネックレスが目立っているのだろうか。でも仕方ない。指輪に入るのならばさっさと入れている。

不思議に思いながら近付くと明らかに厳戒態勢である。何か強大な魔物でもこの辺りに出現したのかもしれない。私が知っているこの世界の魔物だと一番強いのがオーガだけどあれが複数出てきた所でそれ程脅威でもない。では竜でも出たのだろうか。それなら何となく納得はする。この世界の竜がどの程度強いのかは知らないけどアルーシアのように亜人族の一種という訳ではないだろう。敵対種としてなら竜は脅威だろう。

背後からも何やら複数人の気配を感じるけど街に戻りたいなら私の事など素通りすれば良いのに何がしたいのだろうか。良く分からない。……いや、もしかして私が警戒されているのだろうか。何故だろう。魔族ということがバレたのだろうか。この世界の人と魔族はどうやら敵対関係にあるようだし有り得なくもない。とはいえそれも敵対行動を取ったのならバレてもおかしくないが私がしたのはせいぜい商隊を助けた事だけだ。まさかそれで魔族だとバレたのか?

「ん〜、分からないけど……このまま街に行くのは何だか誤解を招きそうな感じもするなぁ」

いや魔族なのは間違えていないがこの世界の魔族とは違うとどうやれば説明出来るだろうか。まさかこの世界の神様と知り合って助ける為に来ましたなんて言っても信じられないだろう。

という事で門が見えて来た辺りで一旦止まる。すると兵士達も動揺する。いやその場に止まっただけだろうにどれだけ緊張しているのか。

止まって見ていると門の前に誰かが出て来た。真っ赤な髪の女性のようだ。兵士達の制止も振り切って此方に歩いてきた。だから私も……とりあえず邪魔だから浮かしている剣とネックレスをその辺に放りゆっくりと近付く。何か走ったりすると矢でも飛んで来そうだったし。女性も一瞬身体に緊張が走ったのが分かるがすぐに歩いてきた。

「こんにちは」

「あ、ああ。こんにちは」

私が挨拶をすると女性も少し驚きながらも応えてくれた。それにしても綺麗な人だなぁ。少し気の強そうな所はあるけどこういう人は意外と乙女趣味だったりするのだ。まあ偏見なんだけど。

「一応聞くけど……この厳戒態勢って私に対して?」

「……」

「あぁ〜、うん。答えにくい質問だよね。失敗したかな。ごめんね。ええと、うん。魔族の私に対しての厳戒態勢って事で合ってる?」

少し悩んだけど魔族であるとは伝える事にした。まあ正直敵対されてもこの世界の中なら私より強い人はほぼ間違いなく居ないと分かったので少し強気でいる部分もある。

それが分かったのも弱過ぎる魔物にそれに苦戦する人。抜けないけど力を感じる剣、そこから感じる力の強度。私をずっと何処からか見ている人の力量。兵士の力量。そして一番は恐らく私が本気で暴れればそれだけで滅びかねない程の脆い大地。この事からアルーシアよりも格下の世界だと判断した。控えめに言っても私より強い者が居るとすればそれはこの世界の異物だろう。

女性は顔を強張らせる。私の質問が当たっていたのだろう。世界の強度的にも私が少し魔物相手に戯れただけでこの世界だと異質なのだ。救助したのに厳戒態勢を敷かれるのはそれが出来る人が居ないから魔族だとバレた。

経緯は少し違うかもしれないけど大体は合ってると思う。少なくとも魔族だとバレる行動といえば私の戦闘しかないのだからほぼ間違いないと思う。

「ん〜、まあ良いけど私相手にあの程度じゃなぁ。多分適当に数発魔法を放つだけで街が死んじゃうよ?それなら嘘でも笑顔を貼り付けて歓迎した方が生き長らえると思うけど……あ、それとも魔族と人って出会った瞬間即戦闘。どちらかが滅びるまでって感じなの?それなら……まあ仕方ないかなぁ」

私の言葉に女性は少し震えるけど私は笑顔を向ける。

「ねえ?今からでも遅くないけどどうする?」

スイ「……(こういう美人な人を虐めるのもちょっと楽しいなぁ)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ