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416.異界のアーティファクト



「ん〜、ここ何処かなぁ?」

商隊から離れ数時間後、私は何故かまた迷っていた。

街道から離れて行動したら迷うと分かっていたので道なりに進んでいた筈なのだが何時の間にか街道は消えていて成人男性程にまで生い茂った雑草によって完全に視界が遮られていた。

「ん〜、これあれだな。多分魔法的な何か。この世界での呼び名は知らないけどそっち関係だなぁ。明らかに不自然だし。というかこの雑草?私ついさっきまで見た記憶ないんだよね。後ろにも生えてるし……」

私は首を捻りながら適当に雑草を手刀でバッサリ落とす。妙な感触と共に雑草が落ちるが少し目を離したら同じ高さにまで生い茂っていた。

「雑草じゃない?魔法かなぁ……でも魔力とかは感じないし幻覚?私に?いや私に掛けられたら流石に気付くだろうしこの地帯一帯に掛けられた幻覚魔法かなぁ。それでも魔力を感じないのは不自然だけど」

呟きながらふと視線を落とすと剣帯に付けたグライスが見えた。

「……グライスってどういう視線で周りを把握してるの?」

『どう、とは?』

「当たり前だけど目で見てないよね?」

『目に該当する器官がまず存在しませんね』

「それならどうやって周りを把握するの?」

『……魔力把握と色相感知、音響探査が入り交じっていますね』

「色相……え、色が分かるの?」

『分かります。何ならRGBで答えることも出来ます』

「凄いなぁ。流石に私もそれは出来そうにない……じゃなくて周りを把握する手段は私とは異なる手段ってことだね?」

『あぁ、成程。何時からこの場に居たのかという質問の前振りですね。それなら答えは簡単です。分かりません』

「なるほ……え、分からないの?」

『はい。これは魔力的にも空間的にも音などの波に対してもありとあらゆる方法で欺瞞で埋め尽くされています。いえ、いっそもう一つの現実と言っても過言ではないでしょうね……』

『マスター、俺なら分かるぜ』

「ネズラク?」

覚えているだろうか。グリエンの街で鍛治の腕は高い筈なのだが本人がそれ以外凡才だったのか売れずに残っていたアーティファクト化した短剣を。他に似た物としてダムレース、シウゴーラ、ノクドームという短剣三種があるがこちらは意識こそあるが言語などはまだ理解しておらず此方に言葉を伝えることが出来ない。ネズラク程完成された短剣ではないというのも要因の一つかもしれない。

ネズラクは一応グライスと同じ剣帯に入れているので話そうと思えば何時でも話せるのだが手に入れたその日から暫くしてどうやらダムレース達?と何やらずっと話していて此方に全く耳を傾けてくれていなかったのだ。だから急に話しかけて来て驚いたのとグライスが出来ない事がネズラクに出来ると思わなかったのとで二重に驚いた。

『先輩が得意なのは斬る方だろ?俺はどっちかってえと守る方に長けてんだ。元々護身用としての意味合いが強い短剣だしな。マスターも先輩より俺の方が握りやすいだろ?俺は貴族の嬢ちゃんが最後に尊厳守る為なんだ。込められた想いが違う以上出来上がる物も千差万別ってことさ。見た目は似てんだけどな』

「ん〜、つまり守る方に長けているから私、あるいはこの空間に掛けられた魔法らしき何かの感知とかが出来るってこと?」

『そういうこった。正確には害意とか悪意とかの感知が正しいけど察知関係は基本俺の方が強いと思うぜ。負ける察知系って言ったら戦闘勘とか瞬間危機察知能力とかだろうな』

『そちらで負けたら私はただの斬れ味のいい短剣になりますから』

二人?の掛け合いを聞きながら私は少し考える。

「まあいいや。じゃあネズラク、あなたは何を察知したの?」

『んお、ああ、俺が察知したのはここにあるのは異界のアーティファクトだってことだな。此処からマスターが……あぁ〜、二百歩位進んだ先に地面にめり込んでる。その際にアーティファクトが起動したんだろ。気を付けるとしたらこのアーティファクトはアルーシアのものじゃないしこの世界の物とも違う全く別の理で存在するものだって事だな』

「ん、こっちかな。あ、あった」

『あっさり行きやがんなマスター!?』

ネズラクの言う通り何か茶色の物体が地面に斜めに刺さっている。刺さっているそれからは魔力とは違う何かのエネルギーを発しておりこれが魔法か分からなかった原因だろう。その茶色の円錐形をしているらしいそれを無理矢理引き抜く。地面がめこっと浮かび上がる辺り埋まっているものはかなり大きいらしい。

しかし私にとっては大きかろうが特に関係は無い。鯨位の大きさなら頑張れば耐えられるのだ。そこまでは大きくないであろうこれだとちょっと重い程度だ。普通の人間であれば間違いなく持ち上げるなど不可能だろうが。普通の人間が全容を把握しようとすれば地下を掘削して横合いから見るぐらいだろう。それすら外側しか見れないと思われる。何せ外壁らしきそこは傷らしい傷が全然見当たらないのだから

外壁、そう言った事から分かる通り恐らく埋まっているものはアーティファクトではあるのだろうがどちらかというと建造物である。しかも砦などのかなり大規模なそれである。突き出ていた茶色の物は尖塔の先っぽだったようだ。それを持ち上げたスイは地面に下ろす。

鯨より間違いなく重いが意外と耐えられたのでスイの力はとんでもないと言わざるを得ないであろう。というより何故か分か らないがこれより重く小さな何かを持ったような気がする。剣っぽい感じも。そんな事有り得ないから首を傾げたのだが。

「砦かな?なんでこんなものが刺さるの?」

『刺さったんじゃなくて出現した後に傾いてその上から土が積もっていったんじゃないか?』

「それだとこの砦は何万年、下手をしたら何億年単位で埋まってたことになるよ?流石に厳しいんじゃない?」

『マスター、忘れてるかもだがアーティファクトは基本不壊だぜ?地層が上に出来たからってその程度で壊れるかよ』

「そういえばそっか。成程……これ所有者とか絶対居ないよね?」

『居るとしたらその所有者の血縁ってことになるんだろうが……まあほぼ無いんじゃねぇか?』

「貰っちゃおうか」

『言うと思ったけどそのアーティファクトがどういうやつか分かんねぇぞ?』

「大丈夫、多分。いざとなったらグライスでブンブン振ってたら斬れて壊れるでしょ」

『肯定します。等級としては六程度だと思われます』

「等級六はかなりヤバいんだけどね」

『等級って何だ?』

『ネズラクは……………………複雑ですが七ですね。私と同じ等級です。打ち合えば私が勝つでしょうがメッド辺りなら無傷で勝利するのではないでしょうか』

「ネズラク凄いね」

『他三種は残念ですが四ですね。ただ三種とも繋がりがありますので対峙すれば面倒かと』

「へぇ〜」

『等級七?』

ネズラクの柄をペタペタしてから二人?を剣帯に戻す。ネズラクがずっと『等級?』と疑問符を浮かべているが面倒なのでグライスに押し付けておく。

砦のアーティファクトという見た事ないそれを見ていくと内部には動力炉らしきものは無く機構的には砦内部に存在する生命体から自動的に魔力を徴収して砦から兵士を作り出したり防衛装置や攻城兵器などを生み出すようだ。結界なども張れるようで等級六というのも頷ける。

「これは良い拾い物だなぁ。所有者……居るかは分からないけど勝手に貰っていくね?」

私はそう言ってから砦を指輪の中に収納するのであった。

スイ「この砦ベッドまである!しかもフカフカだ!やった!移動する拠点だよ!」

ネズラク『移動(指輪持ち運び)なんだよなぁ』

グライス『何か問題でも?』

ネズラク『んにゃ、無いね』

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