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411.囁く声



「ん〜、何これ?」

男達から抜いた記憶に不自然な点があったので調べてみるがどんどん不自然な点が出てきてそもそもこれは本当に記憶なのか怪しくなってきた。

「記憶が消えている……のとも違うんだよねぇ。どうもこいつら最初から人じゃない気がしてきた」

違和感無く結合した魔素らしきものと細胞、消えた記憶と消えてない記憶の差異、能力自体の何処とは言えないが感じる違和感に首を傾げる。

「人っぽくない、いや人なんだけど人じゃないっていうか……ん〜、何処かでこんなのを見た気がするんだよなぁ……」

首を傾げて少しばかり記憶を浚っているとふと思い出した。

「あ、人間じゃなくて人族に近いんだ」

地球人じゃなくて異世界人、そう考えれば色々と腑に落ちた。それと同時に消えた記憶と消えてない記憶は恐らく異世界と地球の差異を無くす為だろう。

「記憶を違和感無く消したり変えたりして地球に馴染ませた?何の為に?そもそもそこまでする必要ある?」

疑問は尽きないが地球人に偽装したというのはあながち間違えてはいない気がする。能力も恐らく本来はもう少し強力なのでは無いだろうか。地球の理で能力が制限されたかはたまた送り出した存在が敢えて制限したのかは知らないけど。

「まあどっちでもいいけど……っと運転手さんかな?パトカーがやってきてるね」

運転手さんの方を振り向いたら携帯を持って何処かに連絡しているようだったので斉藤さん辺りに連絡したのかもしれない。パトカーが三台ほどやってきてその内の一台にはパパが乗っていた。どうやら私に縁のある人ばかりで急遽やってきたようでパパ以外に小山さんと堀川さんが居た。他の人に見覚えは無いが狼狽えた様子もないので巨大化生物騒ぎの時に対処に当たっていた人なのかもしれない。

「みどり、大丈夫か?」

「うん。別に強くもなかったしね。それより車が壊れちゃった」

最初の一撃の時こそ防いではいたがあれはあくまで運転手さんを守っただけで車自体には保護も何も掛けていなかったので先程までの戦闘とも言えない戦闘のせいで大破していた。直そうと思えば出来なくもないだろうが間違いなくこの世界に存在しない車に似た何かになる事だろう。それなら大人しく廃車にした方が良い。

「車なんかよりお前達の方が重要だ。怪我はしてないんだな?」

「してないよ。花奈のマネージャーさんは精神的ショックが大きそうだけど肉体的な怪我はしてないはず。私の知らない場所で転けたりとかしてたなら知らないけど」

私はそう言いながら煙草男の頭を掴む。

「パパ、そう言えばこいつらはどうするの?人じゃないし殺した方が良いと思うけど」

「人じゃない……?あ、いやそれは待ってくれ。みどりの世界だとどうかは知らんが流石に法治国家の日本で殺人は認めにくい」

「ん〜、それは分かってるんだけ…………ど?」

【…………バヂッ!……………………】

先程よりも強いそれに流石に身体の動きを止める。

「……(まただ。別に殺すのに許可なんていらないって思った)」

「どうした?」

【…………………………バヂッ!バヂッ!】

「……(どうして従うの……?私は……私は?)」

何かの攻撃かと思って咄嗟に結界を張る。周りを見渡すが何も無い。別に敵対的な何かが居るようにも感じないし魔法による探知もすり抜けた。

【……バヂッ………………バヂッ】

「……(無駄な事……?だって……)」

「みどり?」

【……………………………………くだらない】

それが聞こえた瞬間私は走り出した。何か本能的にやばいと感じたのだ。だってその声は……



「私だ……」





突如として走り出して何処かに行ってしまったみどり。呼び止める暇すら無かった。そもそも本気で走られたら追い付けないのは分かっていたが目の前から振り向いたと思った次の瞬間には砕けたアスファルトしか残っていなかった。

「……みどりちゃん、どうしたんでしょうね?何か見付けたのかな?」

小山が話し掛けてくるが俺はどうもそうじゃない気がしていた。あの時振り向く直前に見えたみどりの目はあのあかよりも酷く冷たい瞳で虫でも見るような瞳で俺を見ていたから。

「……みどり?」

何か嫌な事が起きている。それは間違いないのにどうすることも出来ない自分に酷く苛立つ。

「小山」

「何ですか?」

「何か嫌な予感がする。間違いなく厄ネタだ。俺達に出来ることは無いかもしれんが対策やら何やら急ぐぞ」

「……先輩の予感ってマジで当たるから嫌なんですけど」

「ゲテモノ担当刑事の直感ってやつだな」

「……うわぁ、帰りてぇ」

「とりあえず小山、お前は花奈とマネージャーを安全な場所に連れていけ。ここからなら花巻の家が近いだろ。そっちに連れてけ。そこでお前は交代要員来るまで待機。俺はこいつら連れて署まで戻る」

「はー、了解です。とりあえず何事もないこと祈っときます」

「それは……運命の神に委ねろ」






「…………はぁはぁ」

動悸が激しい。気持ち悪い位鼓動が激しい。心臓とか無いはずなのに。

「…………うっ……おぇ……っ…………!」

吐き気がする。途轍もない嫌悪感に指を喉の奥に突っ込んで無理やり吐く。何も食べてないからかただの胃液だけが吐き出される。魔族だからこれも胃液に似ているだけで魔力なんだろうな等とくだらない事を考えながらもぼんやりする。

「…………あぁ〜、これはやばいなぁ……」

吐いて少しスッキリしたのか気分は悪いが口を拭って適当に水を魔法で出して口を濯ぐ。

何度もそれをしてからふと目線を上げると近くに鳩がいた。その鳩は私を見ても特に何も動かない。私はそれに対して酷く苛付く。

「……しねよ」

少し近付いて鳩を思いっきり蹴り飛ばす。その一撃で鳩は絶命したのか地面に崩れるように倒れる。その首を踏み抜くとポキッと軽い音がした。そのまま地面に押し付けるようにしてグチュっと音がしてボキボキ音がしてグシャッて音がしてバコンっと音がして……アスファルトを踏み抜いて砕いていた。

「……あっ」

鳩が染みになるほどの力で踏み抜いたようで原型を留めないどころか血が少し固まっていた。圧力で勝手に固まったのだろうか。

「……………………」

その鳩だったものを見ても特に何も思わないけど靴を見て魔法で浄化だけした。

「何だろうなぁ。私何してるんだろ」

「それには答えられませんが貴女の今の状態が何で起きているかは知っていますよ」

私の言葉に誰かが答える。近付いてたのには気付いていたけど誰なのだろうか。その声の主は少し胡散臭さはあるけども普通の男の様に見えた。特徴があるとしたらその声の主の口から時折見える尖った犬歯だろうか。

「あぁ、私の正体が気になりますか?一応この世界の人っぽくはしてみたのですが完全にはなりきれないみたいでして。まあ胡散臭くはあるでしょうが私は貴女の敵ではありませんよ。寧ろ味方です」

「信用しろと?」

「ええ、スイ様」

「……名前を名乗った覚えは無いけど?」

「私達のような存在に名乗りなど意味はありませんよ。知ろうと思えば知れますから。申し遅れました。私の名前は℃@|と言います。まあ恐らくは聞き取れはしなかったでしょうが一応それが名前ですので。私の名前を知るのはきっともっと後の貴女でしょう。今の貴女では格が足りない。あ、馬鹿にしているわけでは無いですよ?」

「…………」

「まあ分かりやすく言ってしまえば神です。アルーシアの三神よりは強い神です。今は三神よりは弱いですけど。私貴女にお願いしに来たのです。これは名も無き神にも了承して頂いているので正当なお願いですよ?」

「名も無き神?」

「あ、地球の神と言った方が分かりますか?とにかくその神に貴女へのお願いを認めてもらったのです。断っても構いませんが出来たら受けてくれたら嬉しいですね」

「…………色々混乱する」

「まあそれは仕方ないでしょうね。貴女からすればいきなりでしょうし。私からすればかなり待ったのですけど。勿論報酬は出しましょう。その報酬の内容は伝えられない約束なのでご勘弁を。それを破れば名も無き神に消されてしまいますので」

「…………ふぅ、色々、色々考えたけど」

「ええ」

「受けてあげる。どうせ暫く皆に会うのは控えた方が良いし」

そう言って私はその胡散臭い男の手を取った。



きっと残っていたら私はパパも花奈も全員



ころしちゃうだろうから

【……………………そう、それでいいのよ】

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