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409.異能力



「全く……本当に……!」

マネージャーさんがまだ怒っているのを上の空で流していると唐突に車が止まる。信号があるようには見えなかったのでまた何かトラブルでもあったのだろうか。不思議そうにしている花奈とマネージャーさんを横目に運転手さんの方へと視線を向ける。

「どうしたの?」

「あぁ、いやいきなりガソリンが無くなってきたから不自然に思って止めたんだ。何処かから漏れたのかもしれない。普通は有り得ないんだけどなぁ……みどりちゃん、すまないが見てくるから二人を頼んでも良いかい?」

「勿論、念の為貴方にも結界も張っておくから遠慮せずに行ってきて」

「結界……まあありがとう」

少し苦笑気味に笑ってから運転手さんがドアを開けて外へと出る。しかし走行中にガソリンが漏れるとか危な過ぎるし普通に有り得ない感じもする。とはいえ車の事なんて勉強したことも無いしどんな構造かも知らない。欠陥品ならば可能性として有り得るのだろうか?

首を傾げていると私の感知範囲に何かが近付いてくる。それと同時に私の結界にかなり大きいエネルギーが近付いてきて爆発した。

「きゃっ……!?」

運転手さんの方にも爆発は怒ったみたいで吹き飛ばされてはいたが結界のおかげで怪我はしていないようだ。車の中に居た私達も結界を張っていたから怪我こそしていないが車が大爆発を起こして私達は揃って外に放り出された。

「……何?私って実はかなりのトラブルメーカーなのかな」

少し凹みつつも吹き飛ばされたのに怪我一つしていない自分達の身体に花奈とマネージャーさんが不思議そうにしている中私は爆発するエネルギー体をぶつけてきた相手を睨む。

それは見た目は小学生程の男の子だ。だがその目には強烈な敵意が含まれていて異常な程の殺意に溢れている。その隣に立つ女もスーツを着た一見普通のOLに見える。だがその手には分厚い刃を持つ包丁をそのまま三倍程大きくしたようなそんな刃物を持っていた。

少し離れた所には卒業式に使われる筒っぽい何かを構えている女子高生らしき女の子、煙草を吸いながらにやにや笑う男性、手ぶらでこちらを観察するようにじっと見つめる穏やかそうな男性と共通点の欠片も無さそうな人達が居た。

「ん〜、花奈?この人達に見覚えある?」

「無いよ。でもどんな人達かは何となく分かる」

駄目元で聞いてみたのだがまさかの答えに振り返ると忌々しそうに睨む花奈が居た。

「最近どこでも暴れまくってる化け物みたいな力を持った異能力者集団ってやつだと思う。所謂馬鹿に力を持たせたらテロリストになりましたって感じ」

「へぇ〜、まあ馬鹿っぽいしねぇ。でも花奈」

私はそっと近付いて花奈の頬をムギュっと挟む。

「花奈には笑顔でいて欲しいからそんな怖い顔しないで」

むぎゅむぎゅしていたら花奈が笑顔になる。まあ若干無理矢理感はあったけど。

「馬鹿とは酷い話じゃねぇか。俺達は国を憂いて抗議しているだけだぜ?」

煙草を吸っていた男が不機嫌そうにそう声を出す。

「ん〜、でも力を得て暴れて癇癪起こす馬鹿でしょ?」

私がそう返すとその人達から一斉に殺気を向けられる。でもこの程度の殺気はアルーシアなら弱い魔物からですら送られてくる程度だ。何も怖くないし別に結界に起きた爆発からしても大して強くもない。睨まれてもうざいだけだ。というか仮にも力を得たならば相手との力量差位分かって欲しいものだ。

「死ねよ」

一番年下っぽい男の子から何か光っている玉のような物を投げつけられる。速度はそれなりだけど弓矢より遅い。でも私は敢えてそれを左手で受け止めた。触れた瞬間一気に起爆して大爆発を起こすが私には傷も無い。というか分かっていたけれど結界を使わずに素手で触れても痛くも無かったので多分本当に大して強くない。ただ車を破壊出来るだけの攻撃力はあるので確かに暴れられたら普通の人じゃ太刀打ちできないのだろうなとは思った。

「さっきの男の人も傷一つ無いし何か防御系の能力持ちっぽいね」

女子高生がそう言ってからその筒を私に向ける。どんな能力かと思って待っていたら筒から高速で何か気持ちの悪い物が飛び出してきた。それは私の左手にくっついて噛み付いてくる。

「蛸?いや、ううん。何だろ気持ち悪い。触手の塊みたいな魔物?」

不思議に思っていたら再度筒から何かが飛び出してきた。どうやらあの筒は門の役割を果たす何からしくそこから魔物?を召喚する能力のようだ。飛び出してきたのは目玉の塊とでも呼ぶべき気持ちの悪い魔物だ。レギオンゲイザーっぽいがあれよりは弱い。というか全体的に弱い。

目玉からレーザーが出たけど蛸にぶつけて逸らした。残念だけど蛸にはダメージ通らないようだ。未だに噛み付いている。

「かなり厄介な防御力ね。でも防御力は下がっている筈よ。やっちゃって」

防御力が下がるとはどういう意味なのだろう?そもそも食らってないのに。そう思っていたら煙草を吸っていた人から何かが顕現した。背後に良く分からない多腕の巨人のようなものが出るとそれが男に乗り移る。

「任せな。砕けろ、灰滅」

いつの間にか男の手に握られていた灰で出来た変な形の投擲武器が投げられた。形としては大きな手裏剣っぽいけど切っ先が多方面に向いていてより破壊力がありそうだ。ありそうなだけで私には全く効かないのだけど。

投げ付けられたそれをえいっとばかりに素手で叩き落そうとすると触れた瞬間砕けて手に刺さる。まあ刺さらずにそのまま地面にバッサリ落ちたのだけど。あと痛くはなかった。

「灰滅じゃ駄目か。ならこっちはどうだい?灰牙」

良く見たら煙草からそれが生み出されているらしくて煙草の灰が不自然な挙動をして男の手に集まっていた。生み出されたのは両刃の剣にトゲトゲが付いた痛そうな剣だ。それを私に向けて振るう男、全く避けない私に疑問を抱かないのかなと思ったけどもしかしたらこいつらの能力にはある程度のデメリットがあってそれが私の場合その場から動けないだと思われているのかもしれない。

まあ訂正する意味もないので無視して剣を受けるがやっぱり特に痛くはない。というか意味も無いのにどうしてこいつらは能力をぶつけてくるのだろうか。

「そもそも何で花奈を襲ったの?別に花奈ってそこまで特殊な立ち位置の人とかって訳じゃないでしょ?」

「あん?関係あるかよ。俺達は依頼通りに動いているだけだ」

「依頼?あ、もしかして殺害予告の手紙?」

男の言葉にようやく納得したので振るわれる剣を無視して男の喉を握る。反応出来ていなかったので相手からすればいつの間にか喉を握られて身体が浮いているといった感覚だろうか。

「がっ!?」

「別に殺しても良いんだけどさぁ。花奈の前で死体を見せるのは可哀想だし依頼者も知りたいしで殺さないでおいてあげる。まあ抵抗したら全員殺して死体から情報を抜くだけなんだけど。あ、ちなみに私が殺せないとか思わないよね?そこの小学生位の男の子程度なら家の壁に叩き付けて肉塊にした事ならあるよ?怯える人を殺すのって割と……楽しいんだよ?」

最後の言葉だけ声を潜めて男の耳元で囁く。男が目に見えて狼狽し始めたのでそのままポイッと観察していた男の目の前に投げ捨てる。

「どうする?依頼者を教えてくれるなら四肢切断からの声と目を潰す程度で抑えてあげるけど言わなかったら死なない程度に痛め付けて回復させて痛め付けて回復させてってのを大体百回ぐらいしてから殺してあげる。どっちがいい?あ、抵抗したら抵抗した分だけ皮膚を剥いで肉を削いで筋組織だけの状態で放置してあげる。大丈夫、私回復させるのは上手だから死なないよ?そよ風程度で死にたくなるぐらい痛くなるだろうけど所詮その程度だから大丈夫大丈夫。で、どうする?」

私が笑顔でそう言うと観察していた男が一息ついてからにやりと笑う。

「冗談を、貴女程度の力で私達がどうにかなると本気でお思いで?皆さん本気でやっていいですよ」

男にその程度の力とか言われてイラッとしたけどそこまで言うならと力を見極める為に少し待ってあげることにした。

「は、仕方ねぇな。さっきは油断したが次は無いぜ。出ろ、灰雲!」

さっき出てきた多腕の巨人が顕現した。それは私に大してその分厚い腕を振り下ろすが私はそれを無防備に受けてみた。衝撃はそこそこ、ダメージは無し、やっぱり弱いな。

私が傷を負っていないとは夢にも思っていないのか灰雲?とか呼ばれた巨人が次々にその腕に握った武器を振るってくる。アスファルトが砕け散り埃が舞う。まあ私はその中で無防備に受け続けているのだけど。

男の子の光の玉も飛んで来てるし何故か一切ダメージを負わずに延々とガジガジ齧ってくる蛸、偶に斬撃の衝撃波みたいなのも来ているし包丁持ちのOLの攻撃かもしれない。それが約二分程続いたが私には傷もない。強いて言うならアスファルトが大変な事になっている。

「ん〜、終わりかな?」

私の声が聞こえたことに驚いたのか全員の顔に驚愕の表情が張り付いている。マネージャーさんも驚いているのは何とも言えないけど。ちなみに離れた所まで吹き飛ばされていた運転手さんは近くまで寄って来て花奈達と合流していた。花奈は私を見てキラキラとした瞳を向けて運転手さんは何かを思い出しているのか苦々しい顔だ。運転手さんの間違いなく巨大化生物のせいだよね。ごめんね。

花奈のは良く分からないけどもしかしてまたコンビニの時のようにハートブレイカーにでもなるのを期待しているのだろうか。流石に嫌だよ?

「何故だ。あれ程の攻撃を受けて防御力も下がっている筈なのに」

「防御力って何?私下がった感じはしないけど。この蛸もどきがその防御力とやらを下げるの?」

意味が分からないしまあ間違いなくアルーシアの力ではないね。という事は別世界の住人が関わっているのだ。

「面倒だなぁ。まあ良いか。大して面白くないし強くないから捕縛するね。逃げないでね?逃げたら殺すから」

私はそう言って徐に引き攣った表情の男達に近付いていく。

「は、灰雲ぉ!!」

「邪魔」

適当に右手で蝿でも追い払うように振って灰雲とやらを薙ぎ倒す。

「じゃあ貴方からね?」

スイ「防御力……?私の身体能力って数値化出来たんだ?」

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