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371.エルフ達の目的



「はわわわわ!?はわはわ!?はわわわわ?」

フェニックスのニクスによる三度の自爆でエルフ達がほぼ全て死んだことを把握したので天幕の方へと行きニクスを撫でていると幾つかの天幕からボロボロのエルフが出て来た。それを見て全滅させられなかったとニクスが慌てているけど別にそうおかしい事でもない。

そもそもやってる事はただの爆撃と変わらないのだから耐える者もいるだろう。ましてやここは魔物が凶獣クラスしか存在しないような大陸だ。そこに住まう者も必然としてそれなりに実力を兼ね備えている。

「上官殿ぅ……このニクス一生の不覚であります……任務を達成出来ませんでしたぁ」

「ん、大丈夫だよ。魔族は逃げたしこれはこれで構わない。エルフ達から話を聞きたくもあったし責めたりしないよ」

ニクスを撫でながら私の身体の中に戻す。ニクスの戦闘能力は皆無だからね。勿論身体が炎で出来ているから自爆しなくても体当たりで充分な威力にはなるけども。

「話を……だと!?これ程の事を引き起こしていながら話だと!?貴様ぁ!!」

「あ、別に話さなくても良いよ。貴方が勝手に話すようにするだけだから。出ておいでハクちゃん」

私の呼び掛けに応じて隣に妖艶な感じの女性が出現する。服装は着物だが胸元が見えそうな程着崩していてあまり知らないけれど花魁とかそんな感じがする。

「うちの出番です?」

「そうだよ。中に居たから何をするかは分かるでしょう?」

「はい。では僭越ながら」

そう言いながら生き残ったボロボロのエルフへと無防備に近付いていく。しかしエルフは攻撃するどころかハクちゃんが近付く度に顔を見るのも恐れ多いとばかりに顔を伏せてしまった。しかし少しだけ見えるその顔は病気かと思う程真っ赤で耳まで赤くなってしまっている。

これが白面金毛九尾であるハクちゃんの能力。ハクちゃんの実力以下の者を例外無く虜にして自分の手足とする魅了の力である。操れる数に限界は無いが複数の人を同時に操るのは五人が限度だ。だが逆に言えば五人ずつでいいなら何人でもそれこそ国そのものすら支配することが出来る。傾国の美女というのを能力にしてみたらこんな風になったのだが中々恐ろしい能力じゃないだろうか。

ちなみにこれはハクちゃんの一つの能力というだけで他にも幾つか存在はする。妖力という魔力とは異なる力を使う……という設定なので多分それっぽいのを持っているとは思う。見せてもらっていないので実際にどういう使い方が出来るのかは知らないが。後は見た目の変化だ。今でも美女だとは思うが多分操る人の最も好みな美女とかにもなれると思う。

「話は聞かせてもらいました。中々……酷い話ですが聞きますか?」

ハクちゃんの元となった白面金毛九尾は割と悪女という設定なのでそういった耐性は高い筈だがそのハクちゃんが酷いというのはどれ程の話なのだろうか。

「……すぅ……はぁ……良いよ。教えて」

「では……まず一つ目にゼブル殿の仰られたエルフ奴隷の話は嘘です。大義名分を掲げておけばエルフ達の味方となる者も居るとの事で……実際に此処には居ませんが里のエルフ達が交渉して幾つかの亜人族の集落と連携を取っているようです。確認出来ただけでも鼬族、熊人族、褐鼠(かっそ)族、火人(かじん)族が味方に付いていると」

「待って……褐鼠族って言った?」

ハクちゃんの言葉が信じられなくて思わず聞き返してしまった。褐鼠族、かつて父様を裏切った亜人族の一族。こいつらが居なければ少なくとも父様は城を追い出されるようなことは無かっただろう。勿論その当時の子孫かどうかは分からないが確かめる必要はある。

「……他の亜人族はどうでもいいや。褐鼠族の場所だけは確実に聞いておいて」

「わ、分かりました」

「ああ、ごめん。報告を続けてくれる?」

「はい。では続けます。目的は人族の殺害です。金品の強奪や魔導具を奪ったりとかそういう訳ではなく……分かりやすく言えば狩りです。エルフ達はどうやら人族を殺す事を趣味にしているようでして何人狩れたか等を競い合う習慣のようなものでしょうか。そして今回は大規模な大会という事だそうです」

ハクちゃんの言葉に混乱する。まさかそんなどうでもいい事であれ程の惨劇を作ったというのだろうか。

「……魔族と手を組んだのも少し前とかそういう事ではなく昔から手を組み生活していたと。大会に付いてきたのは五人だけでしたが別の場所で少なくとも後十人は居るそうです。その者達も真の魔族とやらで構成されている……うちが聞き出せたのはこの程度でしょうか」

成程、確かに胸糞悪い話ではある。ハクちゃんも酷いという訳だ。エルフ達の発言は虚偽ばかりで真実はただの殺戮を趣味にして欺瞞だらけの発言で周りを牽制している。

「……主様が勘違いなされていそうなので訂正します。同調した亜人族達も全てその大会には参加しています。他の亜人族達も人族に対しての考えとしては勝手に増えるいい的というものだそうです。あのエルフが聞いた発言ですので全員がそう思っているかは分かりませんが少なからず人族に対して良い感情を抱いていないようです」

「……ありがとうハクちゃん。踏ん切りがついたよ。ゼブル、全部殺そう?生かしておいて良い存在とは到底思えないしさ?本気を出せばあの真の魔族とやらが全員出てきても殺せるでしょう?私も全力で一人も残さず殺すからさ。ちょっとだけ手伝って欲しいなって」

私が笑顔でゼブルに話し掛けるとゼブルは顔を右手で覆っていた。

「ふ、ふふ、ふははははは!!この私を虚仮にしまくったのか。ああ、まあ仕方ないだろう。私も優しすぎたようだ……スイよ、滅するぞ。奴らはこの世の害悪だ。老いも若きも赤子ですら残しはせん。一切合切の痕跡すら残さず消すぞ」

そう言って眼光鋭く私を見つめるゼブル。私はそれに対して笑みを浮かべる。

「拓、ルーレちゃん、シェスは来ないでね。あの魔族相手じゃ役に立たないし死んじゃう可能性が高いからさ。その代わり悠久大陸に戻ったらしっかり働いてもらうから。今は……多分リーリアとリロイがあの街の中でゆっくりしてるだろうから合流しておいて。私とゼブルは今言った通り殺してくるから」

私の言葉に拓達が頷く。本音を言えば付いてきたいだろうに言う事を聞いてくれるのは有難い。でも間違いなく酷い戦場になるし私もゼブルも拓達を気にしておけない。

「ハクちゃんそのエルフは場所は知らないの?」

「ええ、詳細を知っているのは里に居るエルフ達だと。地図もあるそうですがこのエルフは見ていないそうです」

「成程、地図があるなら見つけてしまえば後は全部殺しても大丈夫そうだね。ゼブルもそれでいい?」

「ふむ。一応エルフ達の中にも長老のような存在は居るはずだ。昔からやっていたのなら知らないわけが無いだろうし何人かは捕らえておいて話を聞き出した方が確実性はありそうだ。若い衆の中で声の大きい者も捕らえておきたいな。その女が居れば聞き出せるのだろう?」

ゼブルの問いに頷く。

「ならばそうしよう。不確実性は可能な限り排除して逃がさないようにしなければな?」

そう言って笑うゼブルはまさに魔王といった感じがした。

絵本三国妖婦伝、白面金毛九尾

他の呼び名として金毛九尾の狐、三国伝来金毛玉面九尾、九尾金毛の老狐、三国伝来白面九尾金毛老狐、等がある。

九尾の狐の一匹で名前の通り顔は白く金色の毛並みを持ち九つの尾を持つ。また玉面とも呼ばれる事から白の意味は美しいという表現とも言われている。

強大な妖力の持ち主でもありその強さは妖狐の中でも最強と言われている。日本三大妖怪の大嶽丸(おおたけまる)、酒呑童子に並ぶ。但し本来は日本の妖怪ではなく中国発祥の妖怪となる。

他にも妲己、華陽夫人、玉藻の前等に化けて世を荒らした傾国の美女、三大悪女の一つ等とも呼ばれる。

スイは正直に言うとどれが本当の話なのかいまいち分からなかったので(妲己などは実在したのかも不明だったり)全部ごちゃまぜにした。

とりあえずで変化の能力を持っていて見た目が白面金毛九尾の狐で美女で傾国の美女っぽい力を持っていたら良いのでしょうとばかりに作った。

美女の定義が人によって異なる為か他者からの見え方が少し異なるようだが好意を抱ける姿になるのは間違いない模様。

ハクちゃんは妲己やら華陽夫人やら玉藻の前やら妖怪やらとごちゃごちゃに混ぜられたので自身の原点である白面金毛九尾ということを示すハクという名前を所望した。

ハクちゃんは人によって見え方が変わる自分という美女よりも一種の生きた芸術とも言うべきスイの方が美女だと思っている。

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