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321.地球外生命体

一話前の後書きからお読みください。



「……お前死にたいの?」

いきなり過ぎる事を言ってきたのは中学からの友人で今は医者をやっている青田(あおた)(のぼる)だ。その友人は疲れたような表情で眼鏡を外して拭きながらそんな事を言いやがった。

「いきなり物騒だなおい」

「物騒にもなるっての。お前何処であんなの拾ってきた?」

此奴には記憶喪失らしいあの少女の健康状態を調べてもらっただけなのだがまるで化け物でも見たかのようなその態度に少しだけ不機嫌になる。

「悪い。お前を心配してるだけなんだ。そう不機嫌にならないでくれ。俺はお前のこと本気で死んで欲しくないだけなんだ。お前がゲテモノ担当刑事とか呼ばれてんのは知ってるけどあれは全くの別格だぞ。引くなら今のうちだと思う」

その言葉にどうやら本気で心配されているだけだと分かり逆に困惑する。あの少女が何だって言うんだ?身体の中に爆弾でも埋め込まれていたのか?

「その顔は分かってないな。良いか。今から言うのは色んな患者を見てきた俺の見識と診断結果とかを混ぜて判断したものだ。間違えてる可能性は低いと見てくれ」

そう言って幾つかの写真を取り出す。脳の検査結果、身体全体の検査結果などかなりの数が存在する。しかしそれを見た感じは何がおかしいのかさっぱり分からない。

「まあ専門家じゃないお前が見ても良く分からないのは当然だろ。説明してやる。色々あるから聞き流しても構わないけどな」

そう言って指で示したのは心臓。

「心音が一切変わらない。血液を送り出している様子がない。そもそも身体の構造的に何処の内臓も他の内臓とくっついてる様子がない。血管に刺して採血した筈なのに血が取れなかった。脳の形が歪。そもそも役割を果たしているとは到底思えない。まだ他にも細かい所はあるけど結論として人とは思えない。素人が作った歪な人体模型。それが動いていると言っても過言じゃない。良いかあれは人じゃない。ほぼ間違いなく人に似た何か別の生命体だ。何に関わったのかそれは分からんがあんな化け物と居てお前が無事で済むとは断言出来ない」

青田は話しながら厳しい表情をしている。俺が死ぬ様子でも幻視してしまったのかもしれない。俺もその話を聞いたら怖くなってきたしな。それにその話が本当ならあの化け物蜘蛛があの子を怖がってたのも何となく分かる。

「……まあ、それが本当だとしても俺はあの子を保護するよ。頼られたからな」

あの時あの子は俺の言葉も分からないままに助けを求めたんだ。服の裾を掴む程度でしか無かったが言葉も記憶も無い少女が見知らぬ中年の男性に手を伸ばすのは勇気が居る行為だろう。勿論計算尽くで記憶喪失も言葉を知らないのも演技という可能性もあるがそこは俺の目利きに信用しよう。

「……そうか、まあお前がそう言うなら任せるよ。だがお前の葬式になんて出たくないからな。無駄に高い香典を千恵子さんに投げ付けて困らせてやるからな」

「何だその微妙な嫌がらせ。分かったよ。死なねぇようにするから」

「それなら良い。あとこの子のカルテは持って行け。見るやつが見たら人の検査結果じゃないことはすぐに分かる。こんなもの残してても俺が頭おかしくなったと思われるだけだ。診察の記録も残さん。それで何か困る事あったらお前の名前勝手に使わせてもらうからな」

「それはそれでこっちが困るが……まあ分かった。色々助かった。今度飯でも奢ってやるよ」

そう言い残して部屋から出る。病院のロビーまで戻るとあの子と何やら大袈裟に動いている馬鹿が居る。何やってんだアイツ。

「おい帰るぞ」

「あ、先輩お帰りっす。どうでした?」

「異常無しだ」

「……了解っす」

今の俺の言葉で察したあたりこいつも俺の事を良く分かってきたな。

「…………じん」

ふと聞こえた鈴が鳴るような声に振り向く。そこに居るのはあの少女だけだ。

「たざきじん……おやまはるひこ……あおたのぼる……かしわぎりん……さいとうしゅういち……ありやまゆう……こがしゅう……」

久々にゾクッとした。最初に言われた言葉は田崎仁、俺の名前だ。その後の名前は小山晴彦、後輩のこいつの名前だし幾つか口にした名前は同僚の女と上司だ。後の名前は病院内の放送で流れた名前と完全に言葉を理解して名前と判断したとしか思えない。

「たざきじん……さん?」

「あ、ああ、どうした?というか話せるようになったんだな」

「……ありがとう」

それだけを言うと少女は言いたいことは言ったとばかりに顔を逸らすと入口に向かって歩き出す。どういう意味だったのだろうか?

「というかお前何をしたらあの子が話せるようになるんだ」

「あ、は、は、それ聞きます?聞いちゃいますよね」

顔を引き攣らせているけどこっちの方がそれをしたい。一体何がどうなれば俺が検査結果を聞く間の短い時間で話せる様になるんだよ!

「あの子に教えたのは五十音の発音だけです。しかもあ行とか行とわ行、それ以外の濁音も含む行はさとかたとかの初めの言葉しか教えてません。勝手に覚えたんです。間違えても名前は教えてないし単語に至っては知りません」

「ってことは何だ。法則性でも理解して一を教えて全部理解したってのか?」

「そうとしか言えないっすね。そもそも先輩も言ったけどこの短時間で何を教えれるんすか」

それもそうだけどなぁ……くそ、頭の回転も化け物並だってのか?認めたくねぇなあおい。



「…………あの」

「異論は認めないと言った筈だぞ。あと青田くんを責めるなよ。私が無理に聞き出したのだ。あの化け物蜘蛛の処理は此方でしたのだからそれくらいの権利はあるだろう?」

目の前で机に座りながら言われた言葉に反論しようとして止められる。

「君には護衛として警察官を何名か付けるしその者達には発砲許可も出しておこう。勿論守秘義務は守らせるし君にも銃の携帯は認めるし発砲許可も出す。君の家族は君のゲテモノを引き寄せる体質に理解があるから大丈夫だろう」

「その為なら俺の家族が危ない目にあっても良いと?幾ら何でもそれはどうなんだ」

「悪いが異論は認めないと言った。これは私からの命令じゃない。それで察してくれ」

少し苦い表情を浮かべた上司の姿に言葉を飲み込む。

「分かった。じゃあ暫く俺は悠々と休みを満喫することにするよ」

「そうしてくれ。時折顔を出すか訓練の為には来た方がいいぞ。流石に数ヶ月以上戻れないと腕が鈍るからな」

「少なくとも上は数ヶ月から年単位のやつだとは思ってるわけだな」

「ああ、私もその認識で居る。君も肝に銘じろ。あれは多分今までの君の担当よりも遥かに危険なものだ」



病院から署に戻ってきたら即座に上司に呼ばれてあの子の担当になったのとその間無期限の出勤規制。来るなと言われたのは初めてだ。しかもそれが俺を嫌っての事とかじゃなくあの子の危険性を理解した上で離れずに見て欲しいというものだから中々凄い。

「……あの子本当に何者なんだろうな」

上司も青田もあの子は人じゃないと判断していた。なら何だって言うんだ?白髪翠瞳の小さな女の子にしか見えないが地球外生命体だと口を揃えて言われる。少し気になり青田から貰ったカルテを取り出して読み始める。

「……は、はは。そりゃ地球外生命体だと言うわけだ」

その内容を見て理解した。

*身体の中に血液に酷似した何らかの物が存在する(但し液体ではなく気体に近しい)

*血液に酷似したそれは採取に成功したが空気中に溶け込み再び身体の中に取り込まれた(肌から直接取り込んだ)

*血管の中を流れている訳ではない(通常筋肉がある場所でも発見された)

*筋肉量からは有り得ないほどの力を発揮した(例、握力計を握り潰した)

*唾液の採取に失敗(唾液が無い)

*髪の毛の採取に失敗(抜く事も切る事も出来ない)

*注射針が刺さらず折れた(計七本)

並べられたそれらは人とは思えない物ばかりだ。抜粋されただけでも中々凄いものばかりだがこんなものがまだ一ページ半以上あるのだ。如何に人間から遠いか良く理解した。

「奥さんにどう説明するかなぁ」

とりあえず全部説明したら受け入れそうな奥さんの顔と可愛い子は正義と真顔で言う息子と何も考えてなさそうな何時も幸せそうな娘の顔を思い出した。

「……普通に行けるな」

俺の家族どうなってるんだろうか。



起きてから暫くしたら近くで戦いの音がした。

けれどまだ少し遠いからパパ達に危害は与えられないだろう。

それならば別にどうでもいい。

出来ることならばそのまま一生私達の近くに現れないで欲しい。

そうしたらいつまでも一緒にパパ達と居られるから。

けどそんな願いは届かないのでしょうね。

分かっているけれど辛くなる。

どうして私は人とは違う存在なのだろう。

どうしてこの世界の住人では無いのだろう。

パパ達が私の事を知ればどう思うだろう。

化け物だと罵るだろうか。

異物だと捨てられてしまうだろうか。

そんな事態を想定するだけで涙が溢れてくる。

ああ、叶うならば本当の私を受け入れて欲しい。

そんな事が叶わないのはとっくに分かっている。

この世界は酷く平等で異物である私が存在していい場所では無いのだ。

……受け入れて欲しいなぁ。

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