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297.心配性なキオ



「私が見た魔族は八人居ました。そのうち一人はアルフさん達が来るより前に定期報告なのか居なくなったのを確認しています」

キオはそう言いながら手の内で粘土のようなものを弄ぶ。

「出て行ったのは三日前です。魔族の移動速度がどの程度か分からないので何とも言えませんが戻って来るまで居ますか?」

「勿論殺す為に居るよ。定期報告をした後ならやりやすいしね」

ディーンは四人の動けなくなった魔族に自作の毒を飲ませながらそう答える。経過観察なのか飲ませてから暫くするとメモ書きに何かを書いている。それを見ながらキオは少しだけ今の状態になった事を幸運な事だと考えて安堵した。

キオがアルフ達を止めた理由は単純な物だ。街の門の内壁から透視したキオの目は近付いてくるアルフ達の姿を見付けてそしてスイ達の正体を知った。既に街の中に居る魔族達の仲間である可能性もあったがキオは迷うこと無くスイ達を助ける為に街の外に出て止めたのだ。

アルフ達に言った言葉には幾つか抜けている事や嘘もある。過去を見れないと言ったがキオは限定的に過去を見ることが出来ること。自分の護衛として居た者達は全員人ではないしアーティファクトである神人形(ゴーレム)などでも無い。あれはキオの持つ目による力だ。今も手の中にある粘土のような、否粘土そのものに力を与え命を吹き込むキオにとっても未だに良く分からない力によるものだ。

それらの情報は完全には報告していない。ディーン達はキオがそれを隠した事を理解しているだろうが追求してこない。恐らく隠されていた所でどうとでもなるからだろう。単純に敵として見ていないからかもしれないが。何にせよキオは賭けに勝ち今もこうして生き残り尚ディーン達と良くはないが悪くもない関係を築けている。それだけでも御の字だろう。

それと街に入る前に連れていた盗賊達だが衛兵達に引き渡すのだろうなと思っていたキオは衛兵達の目の前でいきなり惨殺したアルフ達を見て思わず少しだけ漏らした。殺す時に全員が淡々としていたのがキオにとってかなりの衝撃的な光景だった。しかもその上でお金も受け取っていたから余計に印象に残ったのだ。ちなみに衛兵達はかなり怯えていた。

「定期報告に戻った魔族は多分一番強かったです。他の魔族達も敬意を払っている感じでしたから」

「だからと言って僕達の動きは変わらないよ。戻ってきた魔族は殺す。それだけだよ」

ディーンは振り返りもせずにキオにそう返す。

「もしかしたら凄く強くて負けるかもしれないとは考えないのですか?」

「ん〜?別に。アルフ兄は強いからね。大丈夫じゃないかな。後他の魔族を見た感じだと戻った魔族もそんなに強くないと思う。勿論こいつらよりかは強いだろうけど勝てない訳じゃない」

ディーンは魔族の一人を椅子に座りながら踏み躙りながらそんな言葉を返す。

「アルフさんはそんなに強いのですか?」

「強いよ。間違いなく。だって僕だったらスイ姉の暴走してたやつを庇いながらも反撃するなんて出来ないし。ましてやそれで殺し切るなんて無理。スイ姉が以前言ってたけどアルフ兄の力は尋常じゃない。コルガとか何百キロあるのかも定かじゃないのにそれを普通の大剣みたいにブンブン振り回すとか意味が分からないよ」

アルフの持つ破断剣コルガははっきり言って異常な代物だ。改良に改良を重ねた?いや通常なら改悪と言っても過言ではないような魔改造を施されたコルガは既に大剣と呼ぶのも烏滸(おこ)がましいものになっている。アルフの身長よりも長く幅も広く使われている鉱石はアズライト鉱石という重たい鉱石。何キロあるかなど考えたくもない。ちなみにディーンは持ち上げるどころか動かすことすら出来なかった。更に言えばどうもアルフはこれで満足していないらしい。

「それに今のアルフ兄は眷属になったからね。僕の知っている実力よりも更に上がったと思うよ。負ける要素が見付からないかな。それに入る前にも言ったけど最悪はオルテンシアに任せるから」

オルテンシアの実力ははっきり見た訳では無いがその身に秘める魔力量くらいは分かる。スイよりも遥かに多い魔力量に聞いた話ではスイに次ぐ、いや上かもしれない魔法の実力というのはそこらの魔族程度では時間稼ぎにもならないだろう。

「大丈夫なら良いのですけど」

「心配性だね。まあどれくらい戦えるか分からないから仕方ないと言えば仕方ないけども。もっと信用して欲しいな」

ディーンは苦笑気味にそう返す。

「まあそれよりさ、やっぱり分からないのがキオ。君がどうして僕達に接触して仲間にしてもらおうとするのかなんだよね。善悪の区別をその目が付けられたのだとしてもそれだけで僕達にここまで肩入れする理由もない。そもそも放置していてもいずれここに居る魔族達と僕達がぶつかって戦っていたのは間違いないし君が危険を冒す理由が分からない。君はその身体を治したいと言っていたけど僕達にその術がない事はすぐに分かったでしょ?」

「そうですね。アルフさん達に治す術がない事は最初から分かっていました。そもそもすぐに治せるようなら街のお医者さんにでも診てもらっています。でもそうじゃなくて……う〜ん、何と言えば良いのか分からないのですけど。未来の話なんです。治せるのは今じゃなくて未来、何時の日か治せるという物凄く先の話でしてそれまで私の身体が治る見込みは無いんです。それまではゆっくり隠れて治せるようになったら接触するというのもありなんですけどそれはちょっと都合が良すぎるかなと。せめて手伝う事位はしないといけないかなと思いまして」

「そんな事まで分かるんだ?」

「あぁ、未来が分かる訳じゃなくてこの目についてだから分かると言うだけで未来のことなんて全く分かりませんよ。ただ治すならかなり未来の話になるぞと分かっただけでどう治すのかすら分からないですし誰が治せるようになるのかも分かりません」

キオの言葉に躊躇いはなく嘘を言っているようには見えない。

「ふぅん、まあ良いか。それより帰ってきたね。流石に早いな魔族。アルフ兄達に頑張ってもらおうか」

「も、もう帰ってきたのですか?」

「何らかの移動手段か物理的に早いんだろうね。でもまあ帰ってきたばかりで疲れてるだろう今なら殺せるよ。キオ、君ならここから見えるだろう?僕に教えてね」

「う、分かりました。でも実況なんて出来ませんよ?」

「誰かに見せるとか出来ない?」

「直接は無理でも何かに写すだけなら出来ます」

「じゃあそれで。空間拡張の魔導具があるからそれを使ってこの部屋を広くしてそこで見ようか」

ディーンは何やら魔導具を取り出して動かすと宿の部屋がぐんと広くなる。その広くなった部屋にキオがほんの少しだけ左目を身体を覆う白と黒の布の中から覗かせると途端に途轍もない圧が生まれる。布の中から覗くその虹色の虹彩が空間を軋ませると次第にその様相が変わっていく。

「あはは、凄いなこれは。キオ。君が望むなら僕からスイ姉に進言したいくらい欲しいよ」

ディーンはその光景を見て笑っていた。幼い姿に見合わないその笑顔は歪でキオは引き攣った表情を浮かべるしか出来なかった。

「あ、アルフ兄がこっち見た。こんな遠く離れて壁越しの視線に気付くかな普通。相対してる魔族なんか全く分かってないよ?」

軋んだ空間に映し出された光景はアルフと魔族の上官と思しき人物が街の外で向かい合う光景だ。アルフは既にコルガを抜き放っており片手で地面に軽く突き刺して魔族を見詰める。何を言って止めたのかは分からないが魔族は怒っているようだ。魔族の突き出した指にアルフが嫌そうな顔で手を払うと魔族はその身体に魔力を溢れさせる。その魔力量はかなり多くディーンなどなら攻撃を食らったが最後そのまま死ぬ事だろう。

「ふぅん、強いね。けどアルフ兄の方が強いかな?」

ディーンのその言葉がキオの耳に届くと同時にアルフと魔族がぶつかり合う。そしてディーンの言葉通り魔族の放った魔法はアルフに切り捨てられ肉弾戦に持ち込もうと近付けばコルガによって弾き飛ばされる。誰が見てもアルフが優勢であり魔族の表情からもそれは理解出来た。

「あ」

キオが驚くと同時に弾き飛ばされた魔族は先程よりも数段早い速度で近付いたアルフによってそのまま両断された。上半身と下半身で分かたれた魔族は驚愕の表情を浮かべそのままアルフによって更に切り刻まれた。素因が破壊されたらしい魔族は光に包まれ世界に溶けるように消えていった。

「まあこれで理解出来たよね?アルフ兄は強いってさ」

ディーンのその言葉にキオは頷くしか出来なかった。

アルフ「切った時に感じた違和感は四回位だったから素因四つぐらいか?」

ディーン「素因四つか、多いのか少ないのかと言われたら微妙だね。まあ今の魔軍としたらそこそこ強いに入るんじゃないかな?九凶星(クルーエル)に勝てるかと言われたら無理だろうけど」

アルフ「だろうな。まあこれで普通の魔族よりかは強いって証明出来たんだ。今はそれだけで十分だよ」

ディーン「目指せ、九凶星(クルーエル)単独撃破だね」

アルフ「ああ」

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