164.こわしたい
切り掛かってきた女を腕を横薙ぎにすることで身体を裂く。真っ二つとまではいかないがかなりの深手だ。放置すれば確実に死ぬであろう。いや治癒魔法を掛けてもこの状態ではまず間違いなく死ぬ。それ程までの大怪我だ。
まあスイにとって反抗心溢れる存在は欲しくはない。眷属化させても裏切られる可能性のある者など邪魔でしかない。故にこっちの女は要らない。もう片方は完全に自分という恐怖に恭順してしまっているので少し時間を掛ければ駒として使えるようになるだろう。
「いやっ!?リン!!駄目!死なないで!」
近寄ろうとした瞬間凄い大声で泣き叫び始めた。結界は張ってあるので周りを気にする必要は無いが割とうるさい。
「黙って。喚くな」
「リン!!死んじゃいや!!起きて!目を覚ましてよ!」
全く聞く耳を持たない。この女を裂いたのは間違いだったかもしれない。さっきまで恐怖に怯え続けていたのに今は完全にそれを克服してしまっている。このままだと眷属化させても役に立たないかもしれない。
「……面倒だなぁ。そこの女が助かるかもしれない方法ならあるよ」
眷属化なら身体を作り替えるので恐らくは助けられるかもしれない。しれないであって助かるとは言い切れない上に眷属化のショックで死ぬ可能性はあるがまあ些細な事だろう。
「本当!だったら助けて!私が出来る事なら何だってするから!お願い!リンを、リンを助けて!」
そのリンとやらを殺し掛けているのはスイなのだがそんな事を気にする余裕も無いようだ。
「ん、なら貴女に条件を」
「何でもするから!」
まだ条件は何も言っていないのだが。スイは少し白けた目で女を見ると立ち上がるように指示をする。
「じゃあ首を見せて」
「く、首?うん」
泣きながらも指示に従い女は首筋を私に見せる。さて吸血とは異なり眷属化は私の血を相手に入れる。だけどこのままではただの異物として処理されてしまうので女の血を極限まで減らした状態で私の血を入れる。そうする事で従属させて眷属と化すのだ。
「はぷっ……ん、ちゅ……んぐっ……んん……」
なのでかなりの量の血を飲まなければいけない。吸血鬼であるスイは一応血ならそれこそ幾らでも飲めるがやはり一気に飲むとお腹が少しタプタプになってくる。すぐに蓄えられるとはいえあまり体験したくはない。
血を吸われてる側は最初こそ痛みに顔を顰めていたが途中からは吸血による快楽へと変わっていったようだ。むしろもうちょっととでも言わんばかりに身体を寄せてくる。アルフ達はこうはならなかったのでやはり一気に飲むか少しずつかで変化は異なるのだろう。
さて、次が本題だ。血が出て少し青ざめ始めた女の顔を見て段階を移行する。スイの尖った牙からじわりと血が滲み始めて最後には口内が血で満たされていく。それをスイは吸血で開けた場所に流し込んでいく。
明らかに入るはずが無いのにまるで意思を持って染みていくかのように血はただの一滴さえも溢れる事なく女の身体へと入っていく。これを後二回程繰り返せば女の身体に変化が起きて眷属となるか死ぬかが決まる。
リンという女の意識が朦朧としているが軽めの治癒魔法は掛けているのでまあ死ぬことはないだろう。こっちは正直要らないのだが。まあ眷属化のサンプルが増えたと考えれば良いか。
「あ、あぁ、私が変わってく。怖いよぉ……」
涙を流しながらも喜びに喘ぐ女の姿は些か不気味だ。眷属というのがスイにとっては伝聞、いや記憶の中の光景にしか無いのでこの後どうなるのかまでは知らない。ウラノリアに眷属は居なかったからだ。
「大丈夫だよ、私が傍に居るからね」
そんな返しをしながらも最後まで工程を終えると女が自らの身体を抱き締める。変化が始まったのでこの後は女の意思次第だ。さて、リンと呼ばれていた女の方を見ると驚く事に身体から大量の血を流しながらも意思を強く持ったのか意識を失いまた起きてを繰り返してスイを睨み付けていた。
「へぇ……凄いね」
「……ぅ、コルンに……何をした…のよ!ごぼっ…げほっ……あの子に…手を……出したらぁ!がふっ、んぅ……!殺してやる!」
リンはその瞳に殺意を滾らせて私を睨み付ける。あぁ、駄目だよ。そんな瞳を見せないで。そんな瞳を見せられたら私……こわしたくなっちゃうでしょう?
「スイ?」
結界越しにルーレちゃんの声が聞こえた。どうやらルーレちゃんは結界に感付いた挙句すり抜ける事すら可能になったようだ。スッと入ってきたルーレちゃんは私の顔を見ると少しむっとする。
「もう…!私以外に壊したい子が見付かっちゃったの?スイが壊して良いのは私だけにしたいのに……」
そう言ってルーレちゃんは私に抱き付いてくる。抱き付きながらもルーレちゃんはリンの方を見る。リンは未だに私を睨んでいる。いやルーレちゃんもか。
「あぁぁぁぁぁぁ!?!?」
その瞬間背後でコルンの声が響いた。リンの視線はコルンに向いてしまった。残念。私もコルンの方を見ると成功率はそう高くはない筈だがコルンは眷属になっていた。人族で尚且つ決して強い訳でもないのに珍しい。成功しないと思っていた。やはり意思の問題なのだろうか。
「コルン!?」
コルンの姿に変化は特にない。というか身体が作り替えられた所で構造そのものが変わるわけではないのだから当たり前だが。しかしその内部は異なる。パッと見た限りでは分からないが内臓や血管、皮膚の全てまで魔族と同じ魔力によって構成されている。眷属と魔族の違いなど素因を持つか持たないかの違いぐらいしか分からないのだ。
「おめでとう、コルン。これで貴女は私のものだよ」
「ぁ、ぁ、り、が…とぅ、ござ、い、ます」
「あぁ、まだ喋り辛いと思うから無理しなくて良いよ。慣れるまではきついと思う」
当然声帯なども異なるのだ。今まで通りの会話はしばらくの間難しい筈だ。
「リン、ちゃ」
「あぁ、大丈夫。今からするよ」
そうコルンに言ってからリンに近付く。もう身体どころか声すら出しにくいのか動こうともしない。けれどその瞳だけは変わらず憎悪に満ちている。
「大丈夫、大丈夫だよ」
そう言いながら彼女の顔を上げて額にキスを落とす。
「そう、大丈夫だよ。貴女も愛して、愛して、愛し尽くして……こわしてあげるから」
あはっ♪いただきます♡
「スイったら私の事完全に忘れちゃってる。寂しいなぁ。後でいっぱい構ってもらわないと」
私はそう愚痴を言いながら結界の外に出て行き外をぶらついている。
「スイが壊したいのは私だけだと思ったのに。異世界にはやっぱり私みたいに壊したいのがまだまだ居るんだろうね。悔しいなぁ。でもでもスイの幼馴染みで最初に壊した人っていうアドバンテージは私にあるんだからちょっとだけ優越感に浸っても良いよね?良いと思うんだよ。それに地球の話は今のところ私しかちゃんと出来ないし?未央さんとかも居るけどあんまり話してないし同世代じゃないから良いとしてさ。拓也が居るならそのアドバンテージも少し薄れちゃうけど異世界では私の方が先に会ってるし。あっ、拓也に自慢出来るよね!あははっ♪地球ではなんだかんだ勝てない部分が多かったしちょっと嬉しいかも!ねぇ?そう思わない?」
私はお人形相手に話し掛けたけど返事をしてくれない。猿轡のせいかな。まあ煩かったし仕方ないよね。後やっぱりお人形は女の子の方が良いのだけどこの人達はおじさんなんだよね。あんまり楽しくない。
女の子の身体を縛って悪戯して快楽調教するのは楽しかったなぁ。男だと大した事出来ないんだよねぇ。拷問ごっことかもスイに比べたら下手だしなぁ。
「まあスイが壊したい人が出たなら仕方ないけどやりたくないけど私も一緒に手伝わなきゃならないかなぁ?いやスイとの共同作業は楽しいんだよ?いやうん。そうだね。共同作業だよ!なら良いか。うん♪」
あははっ♪スイとの共同作業楽しみだなぁ♪
スイ「あははっ♪こわしたいのは久しぶり♪」




