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149.不思議な力



グライスをもう二度と離すまいとぎゅっと抱き締める。そして盗んだ本人である暗い雰囲気の男子を睨み付ける。先程までの惨劇を目の前で見ていたからか睨み付けた瞬間恐怖に抗えなかったのか意識を失ってふらっと倒れる。その様子を元同郷の者と思われる人達は私を恐れてか動けずにいた。

「……もう良いよ。別に貴方達を殺したいわけじゃないしこれ以上邪魔しないのなら何もしないでおいてあげる。さっさと逃げれば?」

そう言うともう瀕死の状態の王を見つめる。このまま殺すのは簡単だ。だけど訊きたいことがあるから今はまだ殺さない。まだというだけで必要がなくなったら処分するけども。

「王様をどうするつもりだ?」

最初に話し掛けてきた茶髪の男が問い掛けてくる。

「必要なことをさせたら処分する」

私は男の方を見ることもせずそれだけ答える。どうでもいいけど鬱陶しいからさっさと居なくなって欲しい。

「そうか。なら俺は君を止める!」

そう言って男は私に駆け出して剣を振ってくる。うざい。服に触れさせるのも嫌だったので少し飛び退く。その瞬間私のいた空間が一瞬だけ削り取られた。

「……何、今の……」

魔力の動きは一切感じられなかった。いやそもそもこいつからは魔力そのものが殆ど無い。剣もごく普通のものだ。間違ってもアーティファクトではない。いやアーティファクトであったとしても空間そのものを切断する能力はグライス以外に存在しない。私は嫌な予感がしてその場を更に飛び退く。するといきなり居た場所が爆発する。

「……意味が分からない」

男以外の方を見ると一人の魔導士風の男が杖を掲げていた。あいつか今の爆発は。それ以外のやつが男女入り交じって走ってくる。全員剣や籠手等の前衛職のようだ。数人は後衛職のために残っている。

先程は怒りであまり見ていなかったが考えてみたら不思議だ。何故拙い動きのこいつらの攻撃を私は避けられなかったのだろうか。そもそもどうやってグライスを盗んだのだ。手から離していないものを盗むなど出来るのか。

「くっ、この女の子めちゃくちゃ強い!」「何で攻撃が当たらないのよ!」「微妙に良い匂いがして気が紛れげぼぉぁぁ!?」「調子乗ってるから蹴られんだアホ!」「むしろ何で反撃できるのよ!」「強さがインフレしてやがる!」

「うるさいなぁ…………って、え?」

ふと聞こえた単語に驚く。認識阻害のマントを着ているのに何故女とバレたのだ。しかも見た目すら分かっているようだ。私は咄嗟に全方位に小規模な爆発を起こす。ティルの内側に隠れて衝撃をやり過ごす。ティルの陰から周りを見渡しそして見付けた。

「お前か。私を視ているの」

男性教師の前に弾丸のように近付いて見上げる。教師の目は不思議な色を浮かべていた。

「砂時計みたいな……目」

黒目のところがまるで砂時計のような形になっている。教師は近付かれたのに気付くと慌てて目を隠して再び此方を見る。するとその砂時計のような目は一瞬にして消え、代わりに私の姿が映っていた。その瞬間私の身体を後ろから剣が抜けていった。

「……え?」

ごふっと血を吐く。怒っていた時は気にも留めていなかったが普通の時に傷を負えば痛みが酷い。痛覚を消したいが痛みのせいで上手く行かない。痛覚を消したままだと動きが鈍くなるからとはいえ敵地に乗り込むのなら直前に消しておくべきだったかもしれない。

まだこの程度で殺されることはないがそれでも痛いものは痛い。剣を掴むと押し戻して取り出すのではなく引き摺りこんで完全に抜けさせる。痛いとは言ってもこんなことで止まりはしない。というかシャトラとの戦いの時の方が余程痛かった。剣を貫通させるとは思っていなかったのか刺した男の腕が私の身体の中に入りかけて咄嗟に離れていく。

「いたい。なんでこんなことするの?」

痛みのせいで若干舌足らずになってしまったがしっかり言えた。それを聞いたこいつらは特に何も言うことはなく武器を向けてくる。というか凄い今更だが睨み付けてようやく分かった。こいつらの身体に変な術式がある。勇者召喚の術式とは異なる流れを感じるので恐らく呼び出された後に何かされている。

「精神汚染か誘導か思考低下かな?従順化ではなさそうだし言う言葉や行動に肯定的になるみたいな感じかな。対象はこの国の王だろうね。だからこいつら攻撃してくるのか」

しかも変に弱いから思いきり反撃などしようものなら普通に死ぬだろう。面倒くさい。出来るだけ殺したくはない。まあ邪魔するなら容赦なく殺すが今はただ鬱陶しいだけだ。それすら操られてなっているのならば流石に殺すのは忍びない。というか怒っているときに攻撃してきたやつらはどうなったのだろうか。

周りを見渡すと治療中らしい女子と重傷の男子が居た。治療をしているがそれほど強くはないのかあまり効果があるようには見えない。私はそれを見るとそっちの方に向かう。

「そっちに行かすな!」「止めろ!」「稲坂さん逃げて!」

女子がこっちを見て引き攣った表情を浮かべる。私がしたことを考えると仕方ないけど今は特に何もする気がないのだからそんな顔をしないで欲しい。重傷の男子を見ると稲坂と呼ばれた女子が両手を広げて守ろうと立ちはだかる。

「……神癒(コールヒール)

私はそれを無視して回復魔法をかける。その男子以外の者にもしっかり掛けた。だけど近衛兵には掛けなかった。こいつらは敵だからだ。

「治したけど動かさないようにね。体力は無いから動かすと変に悪化するよ」

悪化したとしても治せはするが変な身体の治り方をすると次回から後遺症になる可能性もある。私としてはそうなったとしても気にはしないが後遺症を私のせいにされると面倒だ。それだけ言うと女子を見る。やはり同じ術式が身体に刻まれている。誰が仕組んだ術式かは分からないが私ですらしっかり見ないと気付けないほど隠匿された術式だ。かなり高位の術者だろう。

「だけど見れたならもう意味はない」

私は術式に制御で干渉して消してしまう。女子は何かされたのに気付いたのか自分の胸をしきりに見つめる。どうでも良いがこの女子の胸が結構大きくて腹が立つ。思わず胸をガシッと掴んでしまった。

「キャッ!?」

「あ、ごめん」

素直に謝って手を離す。やはりアルフも胸が大きい方が好きだろうか?いやアルフは私のことを好きだと言ってくれたのだ。大丈夫……………………何で今こんなことを考えた?

私が突然の自分自身の意味不明の思考に混乱していると入ってきた扉の向こうが俄に騒がしくなる。そちらを見ると扉が無造作に蹴破られ一人の老人が転がり込んでくる。どうやらそれが致命傷だったようで目を見開いて死んでいた。

「大丈夫だったか?」

「怪我してない?」

「城の魔術の起点は壊したからもう大丈夫だよ」

最初に入ってきたのは私の好きな人だ。足を上げていたので老人を蹴り飛ばしたのはアルフだろう。その後ろにフェリノが居て心配そうに見ている。最後に入ってきたのはディーンだ。アルフ達は私に武器を向けている人達を見ると一気に殺気だち武器を構える。

「駄目だよ。殺したら。それより城の魔術って何?」

「城の至るところに魔法陣が埋め込まれていたんだよ。それでこのちょうど真下の階に起点があったから壊したんだ。何の魔術かは分からないけど城の中の人から強制的に魔力を抽出する魔法の時点でろくなものじゃないだろうって思ったから勝手にやっちゃった。ごめん」

ディーンが落ち込みそうになったので頭を撫でて誉めておく。少なくとも私は気付いていなかったのだし何か言う資格はない。というか話を聞くだけでも壊して正解だと思う。

「とりあえず全員吹き飛ばせば良いか?」

「うん……うん?」

あれ?私殺したら駄目って言ったような……?思わず普通に答えたが慌てて背後を振り向くと既にアルフが思いきり剣を床に突き立てて謁見の間を壊したところだった。あっ、遅かった。



その日城が爆砕音と共に半ばから崩れ落ちた。

スイ「人の言葉はしっかり聞くべきだなと思いました」

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