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144.幼女出現



炎の槍が広い中庭に突き刺さる。刺さった地点から爆炎が広がり爆心地付近にいた男性を飲み込まんとするが男性は持っていた大剣を地面に突き刺すと円を描くようにそのまま振り回すと強烈な風圧が発生して炎を収束させる。それを見て炎の槍を放った少女が苦い顔をする。

少女の名はスイ、男性は人災と呼ばれる者達の中の一人王騎士のリードだ。二人が始めた模擬戦はかなり激しいものになりつつありアルフ達は止める事が出来なくなっていた。まあアルフ達奴隷組は強くなる事に貪欲なので止めれたとしても止めることはなかっただろう。

炎槍(フレイムランス)!」

スイが唱えた魔法は優に二十を超えた数に増えその全てが複雑な軌道を描いてリードに向かうがそれを大剣を振り翳して自身に当たるものだけ最小で切り裂きスイに向かって走る。ちなみに大剣は一度切り裂かれたのだが流石にそのままでは続けられないので新たに持ち出してきたものだ。

「甘い!虚空撃!」

大剣に薄い魔力が纏わり付くと一瞬にしてそれは巨大な剣先になりスイに振り下ろされる。スイはそれを自分の腕に膨大な魔力を纏わせて殴り飛ばす。そのまま殴り飛ばした腕に纏わせていた魔力を雷に変換すると空に飛ばす。

天雷(ケラウノス)!」

途中までは使わずにと考えていたのだが興奮してきたのか気にせずに撃ち始めたスイにアルフ達は止めるべきかと本気で考える。だがすぐにスイがその辺りの加減を間違える訳がないと考え直した。つまり天雷(ケラウノス)程度ならばリードは大丈夫だということだ。

リードは落ちてきた極大の雷に対し大剣を振り上げる事で応えた。凄まじい音と光にその場にいた者達は目を瞑るがその瞬間にスイは駆け出してリードに殴り掛かる。模擬剣はスイの握力に耐えられなかったのか折れて落ちていた。獣のように掛かってきたスイに対し未だ落ちてきている雷を無視する事でリードは向かい合った。雷を大剣でほんの少しではあるが押し返すという強引な手を打ったことで大剣を折りつつもスイに魔力を纏わせた蹴りを放つ。

「ぐっ!虚撃(ホロウアタック)!」

「な!ぐぅっ!」

蹴りを喰らって吹き飛ばされたスイだが咄嗟に魔法を唱えてリードの足に傷を付ける。二人が再び向き合うようにした瞬間二人の間に小さな影が躍り出る。

「二人とも〜?そろそろ〜やめないと〜怒りますよ〜?うるさいのよ〜?」

その影は何かを投げると二人の身体に鎖が巻き付く。

「何故出てきた!?」

「テスタリカ!」

驚愕の表情を浮かべているリードとその影が誰か分かったスイが呼び掛ける。テスタリカと呼ばれた小さな影はその特徴的な橙色の髪を揺らして眠そうな目を開いてスイに頭を下げる。

「お久しぶりですね〜スイ様〜♪やはり〜動き始めると〜可愛いですね〜♪グルムスのあほうも〜こういうときは〜役に立ちますね〜」

グルムスの事をさり気なく貶したこの小学生程度にしか見えない少女が魔族の中である意味一番有名な人物だと誰が信じるのだろうか。私の父様より遥かに昔に発生していて最古の一人とすら言われるほど古き魔族テスタリカ。偉業の数だけなら誰よりも多い最高の魔族、それがふにゃりと笑顔を浮かべてスイに抱き付いてきた。

「あ〜、この柔っこさが〜幼女の〜良い所ですよね〜♪可愛いですね〜♪どうでしょう〜?私の事妹にでもして〜いつでも抱きしめませんか〜?遠慮なくしなさい」

最後の言葉だけ真剣味が違った上声が伸びてないのでガチすぎて逆に怖い。というか断りづらい。スイは仕方ないのでテスタリカをギュッと抱き締めた。

「ふあぁぁ〜癒されますね〜♪リード後でお仕置きです」

突然のお仕置き宣言にリードがぎょっと驚いていたが当の本人であるテスタリカはふにゃふにゃしていて気にもしていないようだ。

「えっと、テスタリカ。リードさんとは夫婦なの?」

「はい〜?んなわけないじゃないですか〜?そこの同名のテスタリカと夫婦なんですよ〜?ジアから親が魔族って聞いたなら間違えてはないですけどね〜」

さっぱり意味が分からない。あのテスタリカが魔族でないのは間違いない。あれだけ近くに居て気付かないとなるとそれこそ偽装を持っていたメリティのような素因でなければならない。

「ん〜、あの女性は別に魔族ではないですけれど眷属ではあるんですね〜。私のじゃないですけど〜イジェって覚えてますか〜?」

「私の……」

「はいそうです〜あいつまだ生きてるんですよね〜そいつの眷属なんですよ〜」

「な!テスタリカ殿!何故その話を!」

リードが驚いて詰め寄ろうとするが鎖のせいで自由に動けない。そういえば私にも巻かれているこの鎖どこかで見た覚えがあるのだが。

「吸魔の鎖です〜まあ改造施したので別物ですけどね〜」

仮にもアーティファクトを改造したとサラッと言ったがテスタリカはこういう人物だ。スイは指輪から写真のようなクリスタルを取り出す。

「これは〜シャトラは〜充分に〜やってくれたということなんですね〜そうですか〜シャトラ、お疲れ様です」

そこに映っているのはスイを発生させた人達だ。その中の一人一人を指でなぞるとテスタリカはスイにそれを返す。

「これは〜スイ様がお持ち下さい〜それが良いと思うの〜良かったらたまにでいいので〜彼等のことを思い出してやってください〜なんて〜まあイジェ生きてるんですけどね〜」

テスタリカはそう言うとふにゃっとしてリードの方を見る。

「とりあえず〜今までご苦労様でした〜私などのために〜助けてくれたことには〜感謝を捧げます〜」

「それは……もう私の力は必要無いと言う事ですか」

「貴方にも〜自分の人生を〜歩んでほしいと〜」

「私が本当に仕えているのは貴女だ!あの時助けてくれた貴女が私にとっての主君なのだ!私は私の人生を既に歩んでいます!」

何故か王に忠誠を誓っていた筈のリードさんがテスタリカに忠誠を誓っているのだがどうすれば良いのだろうか。後さっきから全く話に付いていけていないティモ君をどうしようか。ジアは少し混乱してはいるが理解だけはしていそうだ。飲み込むのは容易ではないだろうが。アルフ達は……そこまで興味が無さそうである。全員こっちの事そっちのけで何か特訓始めてる。

「とりあえず良く分からないから一旦落ち着いて屋敷に戻りませんか?ちょっと寒いし」

ルーレがそう言ってさっさと屋敷に向かう。別に寒さ暑さに対しては基本的に魔族は強いがどうも元人間であったせいか他の魔族達より体温の変化が大きいようだ。まあそれは私もなのだが。

「とりあえず〜家に入りますか〜テスタリカ〜温かい飲み物と〜菓子をよろしく〜」

「はい。すぐにご用意しますね」

テスタリカが自分の名前を呼んだようにしか聞こえなくて不思議な感じである。同名となると結構面倒だなと思った。

「ん、色々と話を聞いても良い?」

「構いませんよ〜あっ、でもその前に出来たら〜私の素因回収を〜手伝ってもらえませんか〜?」

「そうだね。すぐに返すよ」

「お〜、それは有難いですね〜もう回収してくれてましたか〜♪流石出来る幼女は違いますね〜♪お礼に抱き締める権利を与えましょう〜」

抱き締めて欲しいだけにしか聞こえないがスイは頷くと抱き締めて持ち上げる。そして自分の中から把握を取り出す。

「私の素因ですね〜やり方は分かりますか〜?」

グライスを使ったやり方についての質問だとは思うが分からなかったので首を振る。

「じゃあグライスをまず私に刺しましょう〜その後素因をください〜そしたら自分でなんとかします〜」

少し躊躇ったがグライスを出してテスタリカの腕を刺そうとすると胸に向きを変えられた。

「大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ〜元々こうやって切り離したので〜」

その言葉を信じて胸に突き刺す。グライスはまるで溶けるように飲み込まれていく。次いで素因を渡すとそれに伴ってグライスが抜けてくる。不思議な光景だ。

「ん、んん、あぁ〜戻ってきました〜やはりぽっかりと穴が空いた感じがあったのは〜素因が無いせいなんですね〜貴重な経験でした〜」

貴重ではあるがあまりやりたいと思わない経験であることは間違いない。なのだがテスタリカは恍惚としている。何が良かったのだろうか。

「じゃ色々と〜お話しましょうか〜」

テスタリカはそう言って部屋まで移動して椅子に座った私の膝の上に座る。前に椅子があるのだが。というかこの体勢で話さなくてはいけないのだろうか。何とも言えない表情を浮かべた私をテスタリカがにへっと笑っている。まあ良いか。

テスタリカ偉業四分の三


スイ「テスタリカ偉業その五、今ある貨幣経済を作り上げた。銀貨とか金貨のやつね」

テスタリカ「それは確か考えただけですよ〜?人族に後を任せたので〜基本しかやってないですね〜」

スイ「そうなんだ。次、偉業その四、現在存在する大型の建造物、又は船などの乗り物は大半がテスタリカ作である」

テスタリカ「それは訂正ですね〜、確かに作ったものは多いですが〜私の部下の物も多くありますし〜監督しただけのやつもあります〜私自身が作ったのは〜せいぜい七、八割だと思います〜」

スイ「それ訂正する意味あったの?」

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