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133.金髪と猫耳、合わせないよ!



「それは災難だったね。君の事は結構話題に上がってたし暫くは状況が変わらないかもしれないな」

教室に辿り着いて端っこでもじもじしてたらアルフに金髪の男の子が話しかけてきた。ジアという名前らしい男の子はイルミアにおける軍の隊長の息子らしい。しかも一番隊という花形役職らしく女子からの人気はかなり高い。そのせいでちょっと睨む度合いが強くなっているのだが本人は気付いていないようだ。

アルフに自己紹介を促されて名乗るとどうも私がぐったりしていることに気付いて状況説明。そしたらこう言われたわけだ。何で居ない一ヶ月以上の間に私の話題が上がってるのが不思議で仕方ないけれど多分アルフ達が目立ち過ぎたのだろう。ジト目で睨んだら顔を背けられた。

「是非とも勘弁願いたい所。私何もしてないのに」

「まあ無理じゃないかな?アルフ達は人気だからねぇ。しかも貴族じゃなくて平民だから手も出しやすい。実力は高く見目も良い性格も悪くない、人気が出ない方が難しいね。そしてその四人を全員奴隷として所有しているスイちゃん。嫉妬に悪意が飛び交うのも無理はないよ」

「ジアが何とかして」

「無理。ついでに僕とも今こうやって話す程度には仲は悪くない。更に魔物に傷付いた兎を放るような行為だね」

魔物に傷付いた云々は異世界流の火に油だと思う。一瞬分からなかったけど。

「ジア、私と貴方の仲は今日をもって消滅しよう」

「会って一時間の絆は脆く崩れ去るようだね……さようなら。そしてまた仲良くしてくれるかい?」

「うん。よろしくね。でも先生とかに言ったら何とかならないかな?」

「ならないと思うなぁ。というかなるなら一ヶ月以上アルフ達はこの環境に居ないと思う。僕からも一応言ったんだけどねぇ。生徒同士の話は勝手に解決しろってスタンスだから」

ジアはそう言って呆れたように手を振る。まあ確かにその通りなのだろう。アルフ達から状況を聞いた時は学園ごと火の海に沈めてやろうかと思ったけど反撃がそこそこ苛烈だったのでやめたのだ。

ちなみにその四人は今は授業で少し離れている。最初に決めた選択授業だがあれから更に細かく分かれるらしく私はまだ授業を受けていない。というより受けられないという方が正しい。どうも同じ剣の授業でも幾つかの訓練場に分かれるようで私の所属が決まってないのだ。それを決めるための実技試験も私はパスしてしまったので実技試験を後から受けて決めるようだ。ジアは今は授業が無い時間だから一緒に話している。

アルフは大剣、フェリノは何故か刺突剣、ステラは短剣、ディーンは暗器術だそうだ。アルフのは斬馬刀とかの方が近いような大剣だしフェリノのはレイピアのような刺突中心の剣ではない。ジアは直剣で今は休憩中だ。やるとしたら剣の授業を受けたい。私が持ってるグライスは短剣だがこれで打ち合うことの難しさは良く分かった。というかそもそも打ち合う武器じゃない。

なのでやるとしたら直剣の授業となる。直剣は実はあまり人気がない。何故かはさっぱり分からないが。それでも二クラスはあるが大剣が三クラス、刺突剣も二クラス、短剣が一番多くて四クラス、ディーンのは一クラスだ。短剣は護身用に使えるからだろう。魔法をメインにする者なら尚更だ。大剣の人気が何故高いのだろうか。派手だからか?

「それは……多分僕の父さんのせいかな。武器が大剣でね。翼竜を断ち切ったり地面を広範囲に渡って砕いたとか全長で三十メートルはある巨大なレオカスカティアトルを倒したとかの逸話があるから」

「レオカスカティアトルって何?」

そんな魔物は聞いた事がない。全長三十メートルはある魔物の存在を知らないとは正直思えない。

「凶獣だよ。山羊と獅子の双頭を持ち尻尾が蛇、(からす)の翼を持っていて強力な魔法も使う怪物さ。しかも爪と牙には猛毒、皮膚は硬くて魔法も貫通力が無ければ傷一つ負わないみたいなやつだよ」

異世界版キマイラのようだ。というか今の話聞いたらよく倒せたなと思う。

「僕の父さんは人災とも呼ばれていてね。王騎士とか呼ばれてるんだよ。ちょっとした自慢なんだ」

「そうなんだ。でも人災って冒険者じゃなかった?」

「冒険者でもあるんだ。騎士になった後に遠征した際に現地での金銭を稼ぐ為に結構冒険者になったりするんだよ。冒険者は兼業が出来るからね」

「へぇー、ちなみに人災ってどんな人がいるの?」

「僕の父さんにこのクラスに居る剣聖、アーティファクト研究の第一人者である教授、必中の槍を持つという槍聖、圧倒的な怪力と回復能力を持つ壊拳、魔法を使わせたら右に出るものが居ない宝魔殿(ほうまでん)、どんな武器も武術も全て扱えるっていう最強の武聖の七人だね。ただ場所が分かってるのは父さんと剣聖、武聖位だね。武聖は剣国アルドゥスに居るよ。ただ基本的に二つ名でしか呼ばれないから名前が分からないんだよね。剣聖だって名乗られてようやく分かったし」

人災の場所が分かれば槍聖と壊拳は殺しに行くつもりだったのだが残念だ。どんな理由があれミティック達を殺そうとしたのだ。殺される覚悟位はしているだろう。

「そっか。まあ私は人災の二つ名すら知らなかったからね」

「……冒険者だったよね?」

「そうだよ?正確には見習いだけど」

「まあ良いか。とにかく大剣が多いのは多分そのせいだね。やっぱり強い人にあやかりたいとか見た目とかは大きいよ。僕は見ての通りそこまで力がないから大剣は諦めて普通の剣にしたけど」

ジアは細身で力があるようには確かに見えにくい。でもそれを言ったらアルフはジアよりちょっと筋肉質なだけであんな質量兵器じみた大剣をぶんぶん振り回せるのだがどう言ったら良いのだろうか。

「あっ、アルフはカウントしないでくれると嬉しいかな。あれは別次元だと思うんだ。同じ人型してるだけで別の何かだと思う」

ちょっと否定しづらいのが辛い。アルフの力は本当に化け物染みている。スイはかなり肉体の能力は高い筈なのだがそれよりも強いってやばくないだろうか。ちなみにフェリノなんかも凄い。一度フェリノに抱えてもらって走り回ってもらったのだが周りが全く分からない。全て色にしか見えず風景という感じにはならないのだ。何であの速度で的確に行動出来るのか訳が分からない。白狼族はあれが普通なのだろうか。

「ジアならどれくらい出来る?」

「うーん、僕かぁ。多分だけどね、アルフと剣術だけの競い合いなら勝てるよ。力強過ぎて勝負にならないけれど。技術がそこまで無いんだよ。それは欠点だよね。フェリノちゃんも似たような感じかな。速いけど力がない、技術が足りない。アルフもフェリノちゃんも基礎能力がなまじ高い分技術を疎かにし気味だ。魔物相手ならあれで十分なんだろうけどね」

やはりジアもその辺りは分かったようだ。スイと模擬戦をしてある程度は分かったかもしれないが対人戦の経験が圧倒的に足りなさ過ぎる。魔族と戦う可能性が高い以上それではいけない。竜族の戦士との戦いでその辺りを分かってくれたら良いのだが。

「何の話をしてるにゃ?」

物凄い特徴ある語尾で横から話し掛けられた。振り向くと頭から猫の耳を生やしお尻の部分からはしなやかな尻尾がピョコンと出ている髪は茶色で瞳は紫色の少女が立っていた。客観的に見て美少女だと言っていいだろう。というよりこの異世界で顔の造形が悪い人をあまり見たことがないのだが。

「アルフもフェリノちゃんも技術が足りないかなって話をしてたんだよ」

「なるほどにゃ。確かに二人とも凄いけど動きはまだまだ拙いにゃ。まあ私は敵わないんだけどにゃー」

「ジアこの子は?」

「ん?ああ、メリティっていうんだよ。猫人族(ケットシー)だよ」

「メリティにゃ。君がスイちゃんかにゃ?よろしくにゃー」

「ん、よろしく。そのにゃってわざと?」

スイがそう訊くとメリティがピタっと止まる。猫人族がにゃーにゃー言うというのは聞いたことがないしウラノリアが会ったことのある猫人族は言っていなかった筈だ。

「な、何のことかさっぱりきっぱり分からないにゃー?」

何だか可哀想になったのでこれ以上の追求はやめておこう。とりあえず黙っておく代わりに時々耳や尻尾を触らせてもらうことにした。弱みって握ったらしっかり活用しないと駄目だと思うんだ。


スイ「ジアに猫耳が付いたらどんな感じだろう?」

ジア「その試みはやめて欲しいな」

メリティ「そんな嫌がらなくても良いのにゃー」

スイ「猫耳カチューチャでも作る?」

ジア「僕逃げるよ?」

スイ「私と貴方の仲は今日で終わりみたいだね」

ジア「出会ってから約二時間位の絆は儚いものだね。さようならだ。そしてまたよろしくね」

スイ「うん。よろしくね」

メリティ「すっごい浅い関係にゃー。もう三度目の関係にゃー」

スイ「そこを突くだなんて。メリティ私と貴女の関係はもう消滅するんだね」

メリティ「話し始めて十五分の関係は確かに浅い関係にゃ。さよならにゃ。そしてまたよろしくにゃ」

スイ「えー」

メリティ「まさかの反応に泣きそうにゃ」

スイ「良いよ。その代わり尻尾とか耳とか触らせてね」

ジア「あっ、僕もお願いしたいなそれ。気になってたんだよね」

スイ「ジア私と貴方の仲は耳と尻尾で更に繋がるみたいだね」

メリティ「複雑にゃ……」

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