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132.戻ってきたよ



今私の目の前には久しぶりの学園の入り口が見える。私にとってはそれほど離れていた感じではないけれど実際は一月以上離れていた場所だ。そんな場所に居ながら私は居心地の悪さをひしひしと感じていた。

「ねぇ、アルフ。私って一体どういう扱いを受けてるのか全力で今からイルゥに訊いて来て欲しいんだけどお願いしても良い?」

「出来たらやめてくれたら嬉しいな。俺もこんなことになってるとは知らなかったんだから」

通りすがりの女子からは最初疑問符を浮かべられた後アルフ達を見て私を見てきっと睨む。睨まれたら反射的に攻撃したくなるからやめてほしい。男子からは最初は女子と同様にアルフ達を見てから私を見て敵意を浮かべる、又は見惚れる。敵意に関しては良く分からないけど恐らくアルフ達のことを良く思っていてその主である私を良く思っていないといった感じか。

さて、天の大陸に居た筈の私達が今学園に居るのは理由がある。まあ大した理由では無いのだけど。ついでにアルフ達だけじゃなくて今は横にルーレちゃんも居るからね。丹戸さん達は天の大陸に置き去りにされています。以後その時の会話です。



「あー、あの者達は異世界からやってきた勇者一行だな。勿論この世界の勇者一行ではないぞ。それにあの程度で勇者を名乗るなぞ片腹痛いわ」

ルーレちゃんの問い掛けにドルグレイはそう返す。まあ私もそれは思った。恐らくこの世界の過酷さはかなり酷い。実力の格差があり過ぎて他の世界の人間が馴染むのは厳しいと言わざるを得ない。現に丹戸さんは二つの世界で勇者としてやっていただけあってそこそこ強いが魔族に敵うレベルかと言われたら首を捻らざるを得ない。多分素因を五つ以上持っている魔族には手も足も出ないだろう。

ちなみに魔族で最も多い素因数は大体が四つである。発生したばかりか素因の性質上他の素因が受け入れにくいとかでもない限りその程度には持っているのが常識だ。今帝都に居るであろうミティック達のようにわざと素因を外したりする魔族も居るので一概に全員持っていると言えるわけではないが。

「丹戸さんっていう人でアルフ達も知ってる人だよ」

「まあ知ってるけど何で此処に居るんだ?スイが運ばれてくる時についでに運ばれたって事だよな?」

アルフが私に訊いてきたので事情をある程度話す。するとアルフは呆れた様子で何かを言おうとしてやめて息を吐く。やめてその態度は結構辛い。

「とりあえずお前達は地上に戻り元の生活を送ると良い。こいつらはこっちで預かろう」

「地上には戻さないの?」

「ああ、時が経てばこいつらは元の世界に戻るだろう。その時に地上で縁が出来てしまえば面倒だ。それにどうもトラブルメーカーの様だしな。放置して面倒事を多発されても困る。こっちの方である程度動きの制限はしても構わんだろう。スイが気にしてるのは干渉についてだろうが気にしなくても構わん。異世界の者に関しては裁量を任されているからな。この程度では干渉にもならん」

「そっか。それなら良いんだけど」

「とりあえずそうだな。また一月程度後にこちらに来ると良い。その時には修行が出来るように環境を整えておこう」

そう言ってからドルグレイは私達の目の前に黒い歪みを生み出す。恐らく話の流れからしてこれが転移するための門なのだろう。私はそれを見てから入ろうとして止められる。

「ちょっと待って!私は何の為に呼ばれたの!?」

未央というらしい前勇者の女の人がそう言う。そういえば何で呼ばれたんだろうかこの人。ぶっちゃけ今は勇者達と関わるつもりはない。下手に関わったら自由な動きが制限されそうだからだ。だから剣国ではなくて真反対のイルミア帝国に移動したのだ。出来たら暫くは無関心で居たい。

「未央を呼んだのはお前も同様に修行を受けさせるからだが?今の勇者はセンスがあるから暫く放置していても勝手に強くなるだろう。未央、お前はそういうのは無理だな。だからこそ死なせない為に呼んだのだ。だから暫くは此処で過ごしてもらうことになる。帝都にはすまんが送れん。お前には地位がある以上派手な動きは出来んからな」

まあ当然と言えば当然だろう。勇者として顔を知っている者は未だ沢山居るはずだ。何せ勇者として活動していたのはつい最近だ。むしろ知らない方が難しい。帝都の街を歩いただけできっと大騒ぎになる。

「分かった……けどアルドゥスの人にはどう説明するのよ」

「普通に私に呼ばれたと言えば良いだろう。困ったら私のせいで構わん。深く追求など出来んだろうよ」

成程、なら私も困った時はドルグレイのせいにしよう。仮にも神様なのだし私一人ぐらい負担が増えても許されるだろう。

「……何か悪寒が?」

「とりあえず私達はこの黒い歪みに入れば良いの?」

「ん?あぁ、それに入ればグルムスの屋敷に到着する。戻ってくる時は必ず一月以上期間を空けろよ。此処の空間を弄るからその間に来た場合時間に取り残されるか空間の狭間に落ちるか最悪存在が消滅するからな。絶対に来るなよ。そうなったら助けられんぞ」

押すなよ理論かと思ったらガチで危ないやつだった。絶対に一月以上空けることにしよう。流石にそんなので死にたくはない。ルーレちゃんやアルフ達も顔を青ざめさせながら頷いている。

「では戻ると良い。一月後を楽しみにしているぞ」

それに頷いて私達はその歪みを抜けた。



回想終了。その後はグルムスの屋敷でルーレちゃんをどうするかを決めて一緒に学園に通うことになった。まあそれをしたイルゥは滅茶苦茶しんどそうにしていたけど後でお菓子をあげたら機嫌が治っていた。その後イルゥから《把握》の素因を返された。使ってみたは良いものの情報量が多過ぎて逆に疲れただけだったようだ。私もそう言われて使ってみたけど常時自分の半径十メートル以内の全てを把握するので凄くしんどかった。これを基幹素因だったとはいえ使いこなしていたテスタリカは凄いなと本気で思った。

そして一日空けてから学園に戻ることになった。アルフ達は私を迎えに行くということで外出許可を貰っているので特に問題は無い。私自身はどうやら遠く離れた地に居る親戚の元に向かっていたということになっているようでルーレちゃんはその親戚の娘だ。

筋書きとしてはこうだ。私の元に一通の手紙がやってくる。内容は親戚に不幸が起きて娘が一人残されることになる。私はその親戚の本家?に当たる娘という立ち位置らしくこの場合はルーレちゃんを引き取りに向かう。財産などの関係は本家に回収されたことになるらしい。本家がどこかは決めていないので後から適当に決めることにしよう。そして学園にルーレちゃんも通わせるため連れて帰ってきた。アルフ達はその間グルムスに奴隷紋の仮主になってもらっていて私が帰ってくるのに合わせて迎えに来たという物になるらしい。

何で奴隷で戦えるのに連れて行かなかったのかとかグルムスとの関係は何なのかとか色々と詳細は詰めなければいけないのだがそういった疑問はイルゥが改竄して感じなくしているらしいのでそこまで急いで決める必要はない。改竄って本当に凄いなと改めて感じた。

そんなこんなで今学園の入り口に居るわけだけどかなり居心地が悪い。凄く屋敷に帰りたい。前世では気味悪がられたりしたことはあっても明確に敵意を向けられたことはあまり無かった。その為行き交う人々の殆どに敵意を向けられるこの状況は少々辛い。ルーレちゃんも似たような気持ちなのか少し顔が強張っている。

「スイ、ルーレ大丈夫か?」

アルフがさりげなく寄ってきて心配そうに声を掛けてくる。女子の目は一層厳しくなったけど男子の目は少し和らいだ。多分世間一般の主人と奴隷の関係ではないと何となくでも伝わったからだろう。

「大丈夫。行こうか」

ルーレちゃんの手を取って歩き出す。まだ少し心配そうにしていたけれどアルフは何も言わずに付いてきた。さてと、人間関係構築頑張ろう。凄い苦手だけどね。


スイ「ルーレちゃんの手って凄い柔らかいね」

にぎにぎぎゅっぎゅっ

ルーレ「そういうスイの手だって柔らかいわよ」

にぎにぎきゅっきゅっ


周りの女子「何かピンク色のオーラみたいなのが見える」

周りの男子「……これが尊いという感情か」


アルフ「あの一部の男子共は絶対に近付けさせねぇ」

フェリノ「……(お兄ちゃんが使命感に燃えてる)」

ステラ「可愛らしいわねぇ」

ディーン「そうだね。でも僕としてはステラ姉の方が……」

ステラ「ん?何か言ったディーン?」

ディーン「ううん、何でもないよ。ほら行こう」

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