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104.おっきなお猿さん?



「ゴッリラ、ゴリラ〜、どこに居る〜?」

王味亭に泊まった翌日私は同じ宿屋に泊まったお爺さんに売るのは昼過ぎに広間でと言った後は急いで街を出てゴリラを見付けた箇所まで走って行った。そして今更だけど凄い早く着いた。百メートル三秒とかじゃなく一秒掛かってないぐらいの速度で走れた。しかもそれをおよそ三十分続けて走れたので改めて魔族の凄さを感じた。ちなみに私より強い魔族はこれを更に早くして一日ぶっ通しで走れます。怖い。

着いた場所は何というか草原と岩山と荒野を足して三で割ったようなちょっと言葉にしづらい場所だ。雑草が生い茂ってると思ったらその真横に何も生えていないどころか不毛の大地とでも言えそうな土地が広がる。荒野の逆を見たら草原の中に突如として出現する岩山。昔テレビで見たカタ・ジュタを彷彿とさせる。

「ゴリラは何処だ〜、早く出なきゃ滅ぼすぞ〜」

適当な歌を歌いながら私は草原を歩いていく。最後辺りの滅ぼすは見付からなくて苛々してきたからだ。仕方ない。既に一時間は探して回っているのだ。その間見付けたのは可愛い兎くらいだ。ちなみにホーンドラビットという角が生えた立派な魔物だ。ただし適当に魔法を眼の前で見せたら怯えて腹を出したので今は抱き抱えながら撫でている。偶に当たる角が痛いけど可愛いから良し。後もふもふしてる。兎はプルプルしてる。可愛い。

「うさちゃん、おっきなお猿さんこの辺りで見たことない?」

ゴリラという名前はこの世界には存在しないが猿は何故か居ているので大きな猿と言ったらすぐに分かってくれるのだ。まあ魔物であるうさちゃんは意味が分からなかったみたいで首を傾げていたけども。猿という名前を知らないのだから当たり前だ。しかし可愛いので許す。

うさちゃん飼おうかな。ちなみにこの世界で魔物を飼うという発想はない。ホーンドラビットという比較的弱い魔物であるうさちゃんだがペットとして飼ったりすれば万が一子供が近付けば容易くその角で貫かれかねない。それに肉としての需要もあり硬い角は矢に使われたりするので駆け出しの冒険者などは結構狩ったりするようだ。

まあ私ならうさちゃんに突撃された所で傷など負いはしないしそもそも目の前で突撃された所で当たるより前に叩ける。うさちゃんに至っては実力差がありすぎる事を理解しているので反抗することもないだろう。

「ん、やっぱり飼おう。と思ったけど街中に入れないか。ん〜、あぁ、創命魔法を使えば良いのか。で、私の中に入れたらバレない。完璧」

早速うさちゃんに創命魔法してみた。うさちゃんはどうしようか迷った後了承してくれたので早速眷属に作り変えていく。見た目やもふもふ感は一切変わらないようにしながらも力だけは強くしておいた。事故で死んだりしたら嫌だからね。万が一を考えていたら私の今使える魔力のほぼ最大値まで注いでしまった。やりすぎたと思う。何か普通に弱い魔族なら倒せそうだ。まあ戦闘経験的に実際には倒せないだろうが。

ちなみにケルベロスやヒークにも魔力はあげているので実質私の魔力は四倍である。アスタールは完全な創命という訳ではないので魔力を注ぎ込むことは出来ない。後ケルベロスやヒーク、うさちゃんなどは私の総魔力を超える事は出来ないので今以上に強化しようとしたら私が素因を新たに手に入れるか素因が治療されなければ出来ない。あっ、イスティアに渡された素因崩山はこの街に来る途中で使ってしっかり治療している。例によってちょっとあの恥ずかしいことにはなってしまったが。

その話は置いておこう。とりあえず私の眷属となったおかげかうさちゃんは私の言葉の意味を理解したようだ。眷属となったらある程度の知性を得るのだろうか?父様の記憶の中にそんな情報は無い。魔物に対して使用したことが無いからか。

そんな少し賢くなったうさちゃんはぴょんと私の腕の中から飛び出すと尻尾をふりふりしながら私の前でぴょんぴょん跳ねている。近付くと跳ねて行くので道案内してくれているようだ。

うさちゃんに付いて行くとあのカタ・ジュタに似た岩山の裏へと入っていく。すると一目では分からないように拙く偽装された洞窟があった。いや岩山がくり抜かれているので洞窟というより岩に空いた穴と言った方が正しいだろう。ちなみに偽装の種類は苔みたいなのが満遍なく付けられているものだ。穴は確かに見えないがここだけ苔生しているので逆に凄く目立つ。まあ遠目から見たら草原の一部に見えなくもない。街道からもこの場所は離れているので見付からなかったのかもしれない。

うさちゃんに先導されて穴の中に入ると話し声が聞こえる……ん?話し声?あれ?ゴリラ探してなかったっけ?

奥を見に行くとギャハギャハと耳障りな笑い声をあげて男達が居た。服などはかなり小汚く腰にはそれなりに鋭いナイフが下がっている。見た感じは盗賊だ。というより盗賊だろう。奥の方に明らかに捕らわれましたと言わんばかりの商人らしい男性やその奥さんらしい人が手足を縛られている。良く見ると背中に子供もいるようだ。

そして盗賊達は酒を飲んだり肉を食べたりしている。量が多いので商人らしい男性の荷物だったのかもしれない。盗賊の数は三十人ほどと規模はそれなり。武器は基本的に粗末なものばかりだが何人かは魔導具や良質な剣を持っている。

「ん、どうしよっかな。というかおっきな猿で人を思い浮かべちゃったんだねうさちゃん。合ってるけど違う」

多分私の知識が一部与えられているためかそういう結論に至ってしまったようだ。次はゴリラを探してもらうこととしよう。そう思っていると道から顔を出していた私と商人らしい男性と目が合った。男性は最初驚いた後首を横に振った。そして口だけでこう言った。

「(逃げなさい、早く)」

それを見た私は助ける事にした。このまま逃げたら後味が悪いし何よりこの程度の盗賊であれば傷など負うこともない。それに人の好さそうなこの男性をここに放置したくない。恐らく離れればすぐにこの男性は殺され子供は奴隷に、女性は慰み者となるだろう。流石にそれを見過ごしたくない。

男性も奥さん?と子供?を逃がしたいだろう、藁にもすがりたい気持ちの筈だ。それでも見ず知らずの子供である私を助ける為に言葉にはせずに逃げろと言ったのだ。こんな盗賊達に殺されていい人ではない。

「おい!早く酒を持ってこい!」

酔っ払って大声で叫んでいる盗賊の後ろに近寄る。そして首に後ろから抱き着く。

「お酒じゃないけど持ってきたよ。貴方の死を」

「だれ…がっ!?」

抱き付いた姿勢のまま首を捻って男を殺す。今回私は人族の振りはせずに魔族として登場する事にした。命を助けたら魔族であっても仲良くしてくれるのではないかと思った打算的なのと何となく隠し事をしたくないと思わせられたからだ。

酔っ払っているせいか未だに何人かは気付いていない。だから気付いていない人の背後に立つと爪を伸ばして首の後ろを抉る。一瞬で致命傷を負った男は何も言えずにそのまま絶命する。何人かに気付かれたので即座にテーブルの上にあったフォークを数本取るとそいつらに投げ付ける。一人は咄嗟に避けたが投げ付けた三人は私の膂力で投げられたフォークで頭部を熟れた果実のように破裂させる。

流石に他の盗賊達にも気付かれたがまだ酔っているせいか動きがぎこちない上注意も呼びかけられない。私は声をあげようとした男の目の前でもダッシュすると顎を蹴り上げる。蹴り上げた後浮き上がった男の頭に振り下ろして地面の染みとする。

「敵襲だ!!相手は女一人!!武器をっがっ!?」

叫んだ男に飛び掛かると胸骨に膝蹴りを加える。私の力で為されたその行為は狙い通り男の胸を陥没させた。そのまま振り返り剣を振りかぶっていた男の側頭部を蹴る。ぐらついた男の頭に裏拳を入れて確実に仕留めるとお腹目掛けてやってきた槍を掴み引っ張る。釣られてきた男に獄炎(ゲヘナ)を纏わせた拳で頭部を爆散させた。

わざわざ一人ずつ仕留めているのは簡単だ。シャトラと戦っていて分かったのは私に戦闘技術が無いという事だ。それはヴェインとの戦いの時にも分かっていたのだけどあの時私は頭に血が上っていたのであまり深く考えなかった。けれどそれでは仮にも父様を殺したヴェルデニアを消滅させることなど出来ないだろう。だから種族として劣る代わりに技術を磨いてきた人族との戦いで戦闘技術を磨こうと思ったのだ。だから一息に魔法で仕留めないのだ。まああまりこの盗賊達は強くなさそうなので意味は無いかもしれないが。

さてそんなことを考えながらやっていたら盗賊の頭らしい男一人になっていた。入口側に私が立っているので逃げることも出来ない。すると盗賊の男は未だ縛られている奥さんの方を引き寄せる。男性にしなかったのは万が一の抵抗を恐れてか。子供は少し離れているので選択肢に無かったのだろう。

「お、おい!こいつらがどうなってもいいのか!?こいつらを助けに来たんだろう!?俺を逃がしたら殺さないでおいてやる!!」

さて、面倒臭い。なので魔族としての力を少し解放する。先程までは力を抑えていたのだ。ぐっと足に力を込めて爆発的な瞬発力を得た私は男を女性から引き剥がすとその首に噛み付いた。

「うっ、ぎゃあぁぁぁぁ!?」

あまり美味しくない。どうやら私はアルフの血が一番好きになってしまったようだ。魔物の血ですらこの男より美味しいというのに。一応吸血衝動が抑えられる程度に一気に吸うとそのまま首を引き千切るように噛み切った。男はビクンビクンと暫く痙攣した後動かなくなった。顔に飛び散った血は魔法で生み出した水で流す。

男性達を見ると男性は少しの恐怖を含みながらも感謝の気持ちを、女性は何が起きたのか分からないのか少し呆けていて子供は目がキラキラしていた。ヒーローに会った子供的な感じかな?男の子のような服装だが十歳程度に見えるのに不釣り合いな程膨らんだ胸のおかげで女の子だと分かる。まあそれほど悪くはない印象かな?

スイ「うさちゃんにも正式な名前を付けた方が良いのかな?……思い浮かばないからうさちゃんで」

うさちゃん「!?」

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