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Schicksal  作者: 一二三
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幽霊の語り言

 さて。

 少し話しでもするかの。


 わしの名前はEM[イーエム]。あやつらに会う前から、私に付けられていた名前じゃ。本当はErなんとか Menなんとかみたいな名前じゃったが、皆長いと言ってEMとしか言わん。じゃから、本当の名前はわしすら知らん。

 口調は癖じゃ。気にするな。

 さて、小娘は喋るだけ喋って満足したようじゃが、皆にはまだ分からんことも多いじゃろう。わしのわかる程度で話をしてやろう。


 まあ、一言で言うと太陽が壊れたのじゃ。

 

 ...なに?ボケてなどおらんよ。

 かなり昔。今から三十年も前の話かの。

 太陽は、赤色巨星と言われる星の中の一つじゃった。水素やヘリウムが主成分で、皆にとって有るのが当然と言うような存在じゃった。


 しかし、2056年10月07日23時16分57秒

 日本は夜じゃったが、世界中のあちこちで太陽が“破裂”したのが観測された。どうして太陽が“破裂”したのか、原因はまだわかっていない。それから、太陽は燃焼活動を止め、“破裂”した影響で散った太陽の破片が辺りに散らばっていった。今、太陽の見た目は太陽の破片が太陽を取り巻き、土星の様になっている。地球上の気温は、太陽からの電磁波が弱まったせいで毎年少しずつ下がっている

 ...まぁ、ここら辺まではインターネットでいくらでも調べる事が出来るんじゃが。

 おっと、話がそれたな。

 それからは、世界中で混乱が起きた。当たり前じゃな。今まで、当たり前に皆の頭上にあった太陽が無くなったのじゃから。

 それにより、世界中の工業・産業が痛手を受けることになったのじゃ。

 太陽の光がないため作物は育たずじまい。世界中のエネルギーの大部分を担っていた太陽光発電も使えなくなり、物品の生産も消費に追い付かれそうになる。

 困った世界中の国々は、話し合いの結果『バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書』通称『カルタヘナ議定書』の内容を緩和したのじゃ。

 日本国内では、同時期に『遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律』と言う、とても長い法律の内容が改訂されたのじゃ。

 今言った条約も法律も、生物の遺伝子組み換えを規制するものじゃったが、世界規模のエネルギー不足にそうも言っとられなくなったんじゃろう。

 世界のあちらこちらで、動植物に対する遺伝子組み換えの実験がされていった。

 成長速度の早い食用牛。毛がよく取れる羊。限りなく少ない光量で育つ麦。

 日常生活に必要な物の大半は、遺伝子組み換えによって出来ている様になった。


 話は変わるが、太陽が“破裂”したことにより、今までは考える必要がなかった問題も浮上してきたのじゃ。それは、明るさじゃ。

 地球の表面太陽の光が届かないせいで、昼も夜も変わらんぐらいに視界が悪くなった。

 外出の際には、ライトを持つのが常識のような生活がずっと続いておったそうな。けれど、ライトを持つということは片手が塞がるということじゃ。その事を不便に思った奴らは、色々な案を出しあった。

 ライトを口にくわえる。頭に、バンドを使いライトを固定する。服自体を光らせる。

 今挙げた奴らは、見た目やコストやエネルギーやらで不採用となったものじゃ。まあ、光る服を着たいかと言われたら、着たくなどないわな。

 皆考えたが、どれ一つとして最良という案は出てこんかった。

 しかし、『個人の力』で出来ないなら『皆の力』ですれば良い話じゃ。

 2070年5月18日、国がとある案を出したのじゃ。『道を発電機にすると。』


 ...じゃから、ボケてなどおらぬわ。話は最後まで聞くものじゃ。


 21世紀初頭、人が歩く振動で電気を作り出す技術があったそうじゃ。国は、それを国単位で行うと言ったのじゃ。

 もちろん、反対意見もあったが都内の一部で試験的に設置し、ある程度効果が得られたから、その他の都道府県にも設置する計画がたてられたそうじゃ。

 今では、国のほとんどの道が受動振動発電機[Passive Vibration Generator]通称PVGと言われる物になっとるそうな。

 まあ、わしは歩きもせんから厄介にはならんがな。それに、最近なにやら不具合が多いらしいしの。

 まあ、これにより人の生活はだいぶ楽になったようじゃ。


 これらが、今の日本の姿じゃ。世界規模では遺伝子組み換えの人体実験やらの問題も有るんじゃが...。

 まあ、日本には関係のない話よの。


 さて......、暇じゃ~~。

 何をして暇を潰そうかの~。


 ...久しぶりに、小娘らの学舎にでも出向こうかの。


 あ。そうそう。小娘はまだ名乗って無かったな。

 小娘の名前は、矢来(やらい) (かなえ)

 小娘の兄の名前は、矢来 亜ニ(やらい あに)

と言うのじゃ。

 まあ、わしはあやつらを名前で呼ばぬがな。さて、ぼちぼち小娘の学舎にでも行こうかの。


 ...なに?わしはなんなのかって?

 ...わしが一番ききたいよ。


 まあ、暇があればまたわしの話に付き合ってくれ。

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