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犬の愛  作者: 水政
2/3

002 中篇

新しい手法を試験的に使ってみました!。

1

 ――それから約一年後。


 「プハァーッ!、外の空気はやっぱ美味いなぁッ!。」


 外に出た俺の第一声は、それだった。


 「浩介君~、バカっぽいよ~。」


 そう茉莉が笑いながら言う、俺は「うっせーなっ!。」と言ってそっぽを向いた。


 「……何かあったら、すぐに連絡するんだぞ?。」


 そう言ったのはリハビリや治療を行ってくれた人の一人、笈川亮司さんだ、俺は、


 「わかってますよ、ありがとうございました。……由起子さんにも、お礼を、言っといて下さいね。」


と言う。由起子さんと言うのは、俺の治療を亮司さんと行ってくれた女の人だ、亮司さんと違ってまったく感情の変化を見せないけど……。


 「そういえば何であの人、来なかったの?。」


そう茉莉は亮司さんに聞く、すると亮司さんは少し寂しそうな顔を浮かべたあと、


 「……さぁな……。」


と言った。それから亮司さんは俺の頭を撫でると、


 「……君は、こうして立ち直り、今こうして幸せを掴むことが出来た……、君には、幸せになる権利がある。」


と言う、そして何処か寂しげな笑みを浮かべると俺にしか聞こえない声で、


 「……俺たちには、選べなかった道だ。」


と言い、それから大きな声で、


 「二人とも、これから様々な難題があると思う、だが、きっと君たちなら――、大丈夫だ。……元気でな。」


と言った。






2

 それから半年後、俺は茉莉の協力があり、『高校程度学力認定試験』に合格し、夢だったデザイナーになるため美術大学に進学した。


 他の人とは違い、ペンを手で持てなかったりのハンデがあるが、俺は友達も出来充実したキャンパス・ライフを送っていた。


 「これ!?、美味しい!、これ茉莉が作ったの!?。」


 「うん、そうだよ~。」


 「スゴいな……。僕じゃ足元にも及ばないや……。」


 「いやいや、新一君の作った弁当も美味しいよ?、男の子でこんなのを作れるのって、スゴいと思うよ。」


 「そ、そうかな……。」


 「コラァ!、バカメガネッ!、何新一にまでちょっかいかけてんのよ!、アンタには浩介がいるでしょ!。」


 「ハハハッ、ちょっかいなんてかけてないよ~。」


 「……あいつら元気やなぁ、浩介。」


 「アハハ……。」


 俺は大学の食事スペースみたいな所で友達と喋っていた。


 ちょっと痩せ気味の男が早瀬新一、新一にちょっかいをかけている茉莉に向かって怒っている女が葛城瑠璃、そして俺に話しかけている男が鈴木賢一だ。


 「てゆーかちょっかいなんてかけるわけないじゃ~ん。私には浩介がいるんだから、さっ!。」


そう言いながら茉莉は突然俺に抱きついてくる、俺は、


 「ふぇっ!?。な、な、何!?。」


と顔を真っ赤にしながら言う、すると茉莉はケラケラ笑いながら、


 「ウブだなぁ、源治君。私を傷つけようとした時は狼さんだったのに~。」


と言った、すると瑠璃は俺に、


 「はぁ!?、何してんのよ!、あんたサイッテーねっ!、信じらんない!。」


と言い、次に賢一が、


 「おぅっ?、これは聞き捨てなりまへんなぁ?、どう言う事か説明してくんなはれや。」


とニタニタしながら聞いてきた。


 「……どうしてこうなるんだよぉッ!。」


 食堂の中心で俺はそう叫んだ。






3

 「……茉莉のせいで、色々誤解された……。」


 「ハハハッ、まぁ良いんじゃないか?。若いからな。」


 「良くないですよ!、もう……。あれから誤解を解くのに必至だったし、賢一はエロい方向に持っていこうとするし……。とにかく大変だったんですよ!。」


 今日は亮司さんの所で健康チェックと予防接種を受けていた。

 亮司さんは相変わらず笑いながら、


 「いやいや、若いってのは良いぞ、そんな話が恥ずかしくもなく出来るのは若い証だからな、楽しまなきゃ損だぞ。」


と言った、それに対して俺は、


 「そんなもんですかねぇ……。」


と呟く、すると亮司さんは俺の頭を少し乱暴に撫で、


 「あぁ、そうだぞ。」


と言った。

 幼い頃に両親が亡くなり家族がずっといなかった俺にとって、亮司さんは父親みたいな人だ、俺はふとあることを思いだし、亮司さんに聞いてみた。


 「あの、亮司さん。前に俺たちには幸せになる権利があるって、言いましたよね?。」


そう俺が聞くとカルテを書き込んでいた亮司さんはペンを止めず、


 「あぁ。そうだな。」


と言う、その言葉を聞いた俺はこう亮司さんに聞いた。


 「その時言ってた、『俺たちには選べなかった道だ。』って、どういう意味なんですか?。」


 そう俺が言うと、亮司さんのペンが止まった。


 そして亮司さんは後ろを振り向かず、


 「……知りたいのか?。」


と聞いた、俺は、


 「えっ、はい。」


と言う、これは好奇心からだった、すると亮司さんは、


 「……近くに、バーが出来てな、カルテを書き終わったらもう仕事は終わりなんだ。一緒に、行かないか?。」


と言い、またペンをカルテの上で走らせた。






4

 「スゴいですね・・・、ここ・・・。」


 亮司さんとバーにやって来た俺は俺はそう呟いた、そこは落ち着いた雰囲気の店ですごい高級そうな店だった。


 「シャトー・ペトリュヌの26年物、それとAコースのディナー一つ。……浩介君は、どうする?。」


 突然亮司さんは俺に聞いてきた、俺は慌てて、


 「えっ!、いや、その、何でも良いです……。」


と言うと亮司さんは笑って、


 「じゃあ、彼にも同じものを。」


と店員に言った。



 料理はフランス料理のフルコースだった、俺と亮司さんは料理を食べ終わり窓に面したカウンター席でワインを飲む。ワインは少し酸っぱい味がした。


 「……俺が、只野に出会ったのは、俺がまだ君ぐらいの年だったな……、すこし、昔話をしよう。」


 只野と言うのは、由紀子さんの名字だ、亮司さんはずっと窓の外の夜景を見ながら俺に話を始めた……。






5

 亮司さんと由紀子さんが初めて出会ったのは、大学の研究室だったらしい。

 当時由紀子さんには両親は他界し、小学生の俊博と言う弟と二人暮らしだった。



 「……えっ?、と……、しひ……、ろ?。」


 そこまで話を聞いた俺はそう呟いた、亮司さんは真剣な顔で、


 「……只野俊博……、知っているだろう?。」


と言った。



 知っている所の話では無い、俊博は中学からの親友だ、確か高校の時に留学したって、聞いた。

 俺がその事を話すと、亮司さんは、


 「……それはな、只野が回りに心配をかけさせたく無いからついた、嘘だ。……本当は、君と誘拐したのと同じ組織に誘拐された、……そして、実験台になった。」


と言った。

 それから亮司さんはワインを口にし、そして、こう言った。


 「……君を救出する際、俊博君も救出する予定だった。けどな、俺は彼を――。」




































































 「……撃った。」


 ――と。


 「えっ?。」


 それ以上の言葉は、俺の口から出なかった。ただ俺は、固まっていた。







6

 「ゥオンッ!。」


 そう俊博は吠え、尻尾を振りながら病室に入ってきた俺へと近寄る、その胴体には包帯が巻かれていた。


 俊博は俺よりも実験台にされていた期間が長かったせいか人としての記憶を残していなかったし、人の言葉を喋ることも出来なかった。


 ――でも、黒色の瞳と髪の毛の色だった茶色は変わっていなかった。


 俊博は人を極度に怖がり、飯もあまり食べようとしなかったが、俺が人の姿じゃ無いのと俺も同じ境遇だからだろう、俺には良くなついてきた。

 最近は何とか茉莉も多少は慣れ、少し離れていれば大丈夫になった。



 俊博の事を知ってから俺はよく俊博の病室を訪れるようになった。

 そこで良く俊博とじゃれあって遊ぶ、こうして俊博の心の傷を少しでも癒してあげたい、そういう思いだった。


 ふと俊博は俺の顔を舐めてきた。


 「おい!?、何すんだよ俊博!?。」


 俺かそんな声を上げると俊博は嬉しそうに、


 「ワンッ!。」


と吠えた。







7

 「……何の、つもりなの?。只野俊博については私の案件よ。」


 その頃、観察室では遊んでいる俊博と浩介を尻目に由紀子と亮司が話していた。

 亮司は、


 「いや、こうしてふれあわせた方が俊博君の記憶も戻るんじゃないかと思ってな。」


と言った。すると由紀子は、


 「彼は私が担当しているわ、勝手な事はしないで。……それにあなた、何やったのかは知らないけど浩介君に嫌われてるじゃない、お陰で私の仕事が増えて大変なのよ。」


と言った。

 


「少し、動揺していないか?。」


 少し間をおいて亮司はそう由紀子に聞いた。すると由紀子は、


 「……別に、そんな事ないわ。」


と言う、すると亮司は、


 「いや、動揺してる。」


と言って由紀子に近づく、すると由紀子は、


 「近づいてこないで!。」


と言いイスから立ち上がろうとして、よろけた、それを亮司が受け止める。



 二人は暫くそのまま固まっていたが、やがて由紀子は黙って亮司の頬を叩いた。


 ――パシン。


 そんな乾いた音が響く、それから由紀子は観察室を出ていった。









8

 「……でもさ、本当に亮司さん、俊博の事を、撃ったのかな?。」


 ある日の夜、部屋でくつろいでいた茉莉は俺にそう聞いてきた。

 俺は、


 「……本人が言ってたんだ、事実だろ。」


と言う、すると茉莉は、


 「だってさ、あの亮司さんがそんな事するかなぁ?。」


と言った。



 「……でも、俊博が傷ついたのは事実なんだ。……亮司さんは大切な親友の俊博を傷つけた、……だから、許せない。」


 そう俺は茉莉に少し強い口調で言う、すると茉莉は、


 「……だったらさ、由紀子さんにも聞いてみたら?、なんか分かるかもしんないしさ。」


 言った。

感想宜しくお願いします!!!。

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