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潜入

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 「亜由。そろそろ行く時間でしょ。大金はたいたんだから収穫持ってきてよ。」

「まかしとき、陣華ちゃん。」

亜由がホストクラブへ行く時間だ。

 亜由はホストクラブの看板を見ていた。

(なんやこのなよなよした男どもは。もっと筋肉隆々のたくましい男はおらんのか。こんな男どもに金出して酒飲んどる女の気が知れんわ。任務(ミッション)とはいえこんな男どもと酒飲むの嫌やわ。)

 亜由は気が進まなかったが、仕方なく店内へ入った。

「いらっしゃいませ。お客様当店のご利用は初めてでいらっしゃいますか。」

(受付からしていけ好かない野郎や。)

「そうや。」

この後、店のシステムらや料金やらの説明が続いたが、亜由は一切聞いていなかった。しかし、次の言葉は聞き逃さなかった。

「ご指名のホストはいらっしゃいますか。」

(そうや、岡のことしらべなあかんかったんや。こいつのアホ面のせいで忘れるとこやった。RYU(リュー)とかいっとったな。せやかて、いきなりコイツの名前出すわけにはいかんし・・・。)

「写真か何かあらへんの。」

「ございます。どうぞ。」

受付の男は在籍ホストのアルバムを取り出した。ざっと見積もって40人くらい居る。

(いきなり選ばんと少し迷ったふりせんとな。)

「う~ん。どいつがお勧めや。」

「そうですね。こちらのRYO(リョー)はいかがでしょうか。」

「タイプやないわ。このRYUってやつはどないや。」

「当店ではナンバー4の人気です。ご満足いただけると思いますよ。」

「微妙な位置やな。ほなさっきのRYOがナンバー1か。」

「いえ、ナンバー1のSHU(シュー)は本日お休みをいただいてまして・・・。」

「まあええか。ナンバー4で我慢したる。」

 こうして亜由はテーブルに案内された。

40秒ほどして岡がやって来た。

「本日はご指名いただきありがとうございます。RYUです。」

「ぷっ!」

亜由は思わずふきだしてしまった。というのも岡が昨日瑠香にコケにされたのを聞いていたからである。

「何かございましたか。」

「いや、こういうところ初めてで慣れてへんもんやから。気にせんといて。」

「そうですか。今日はごゆっくり楽しんでくださいませ。」

「おおきに。」

「ところで、もう二人ほどホストをテーブルにつけさせていただいてもよろしいですか。」

「かまへんで。」

岡の合図で二人の新人っぽいホストがやって来た。

SHO(ショー)です。よろしくお願いします。」

KEN(ケン)です。よろしくお願いします。」

二人は亜由に挨拶した。

(SHOとRYUとKENで昇龍拳か。ツッコんでほしいんかこいつら。アホすぎる。もう、うち帰りたいわ。)

「ところで、お名前うかがってませんでしたね。よろしければ教えていただけませんか。」

岡が尋ねた。

「古瀬亜由や。」

「へえ、素敵なお名前ですね。あっ、私本名は岡武と申します。以後お見知りおきを・・・。」

(それはわかっとるって。しけたかおやろ。)

「あっ亜由さんって逆から読むとYOURSELF(ユアセルフ)じゃないですか。超かわいいお名前なんですけどぉ~。関西弁もキュートだし。」

突然SHOがそう言った。

(こいつメチャアホや。そんなんでうちが喜ぶとでも思っとるんか。)

「いや~、でも亜由さん冗談抜きでかわいいですよ。」

今度はKENがそう続けた。

(あ~、とっとと情報つかんでさっさと帰ろ。)

「そうだ、亜由さん。今夜こうして出会えたのも何かの縁。あなたの瞳に映った数多くの男の一人としてでも構いません。私を記憶しておいていただきたいのですが・・・。」

岡のこの言葉が亜由にとどめをさした。

(キモ! キモすぎるでぇ~、こいつ。もう限界や。瑠香の奴こんなんのどこがよかったんや。任務なんてもうどうでもええ。帰ろ。)

亜由がそう思っていたそのとき、救いの手がさしのべられた。

「RYUさん、3番テーブルご指名です。」

亜由はHOTした。

「すいません、ちょっと失礼いたします。」

そういって岡は亜由のテーブルを去っていった。

 「あんたら二人ももうええで。代わりにナンバー2呼んでや。」

こいつら三人はグルだと踏んだ亜由は、おそらくこの二人が岡に不利な情報を流すことはないだろうと思いターゲットを替えた。

ナンバー2は岡と敵対しているらしく、すんなりと情報をくれた。ナンバー2によれば、岡はヤクザの女に手を出し、脅されていたらしい。そのとき、間に入って話を収めたのがどうやら伊古瀬らしい。そして、岡を脅していたヤクザは、近藤組幹部の白馬貴一という男だということもわかった。

(よし、収穫もあったことやし、そろそろ帰ろ。)

「おい、ナンバー2。勘定や。」

「はい、少々お待ちください。」

 数分後、勘定がやって来た。

「大変お待たせいたしました。お会計12万3千6百円になります。」

(瑠香ぁ~、足りんやないか。うち、そんな派手に遊んどらんで。ボッタクられとるんやろか。)

「ちょっと待ってな。2万ほど足りん。」

亜由は陣華に電話した。

「あっ、陣華ちゃん。2万ばかり足らへんのや。持ってきてくれへん。」

「収穫はあったの。」

「ばっちりや。」

「わかった。じゃあ10分で行く。待ってて。」

(はあ、こないなところにあと10分もおらなあかんのか。頭おかしゅうなりそうや。)

 10分後、陣華はホストクラブに一人でやって来た。流川と瑠香は岡に面が割れている。今後また亜由を動かすことがあるかもしれないので、亜由が流川たちと知り合いだと岡に悟られぬよう二人は待機していた。

 陣華と亜由は会計を済ませて店を出た。流川たちは例のごとく車で来ていた。陣華と亜由が車に乗り込むと、流川は早速、

「で、何がわかったんだ。」

と亜由に尋ねた。

亜由はホストクラブで聞き出した情報の一切を流川たちに話した。

「そうか。岡ならそういうことやりそうだな。次に調べなくちゃならないのは、そのヤクザと伊古瀬の繋がりだけど、明日は里緒奈の通夜だ。今日の調査はここまでにして、早く帰って寝よう。」

   






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