第9話:技術の番人――帝国降伏と『眠らぬ民』の宣言
レールガンの一撃は、帝国の軍事力だけでなく、彼らの「傲慢」をも粉砕しました。灰色の空の下、かつての支配者たちが一人の『清掃員』の前に膝をつきます。
帝国最強の騎士団が壊滅した翌日。村の境界線には、白旗を掲げた帝国の特使部隊が整列していた。
かつての威圧感はない。彼らの瞳にあるのは、理解不能な天災に対する深い「恐怖」だけだった。
「……我ら大帝国は、貴殿の圧倒的な力を認め、無条件での停戦を申し入れる」
帝国宰相と名乗る老人が、泥に塗れた地面に額を擦りつける。
カイは防壁の上に立ち、無機質な視線で彼らを見下ろしていた。その隣には、今やカイの補佐官としての風格を漂わせるミーナが控えている。
「停戦? 勘違いするな。俺は最初から、お前たちと戦争などしていない。俺がやっていたのは『害虫の駆除』と『環境の整備』だ」
カイの冷徹な声が、魔法で増幅され、平原全体に響き渡る。
「お前たちは、この世界の理を乱し、100年前の遺産を戦争の道具に変えようとした。それは『管理ミス』だ。俺はそのミスを修正したに過ぎない」
「な、ならば……我々はどうすれば……」
「これより、この村を中心とした半径100キロメートルを、非武装の『技術管理区』とする」
カイが右手をかざすと、村の地下から無数の観測ドローンが飛び立ち、空を埋め尽くした。
「俺は、組織を結成する。名を――『眠らぬ民』」
その言葉が発せられた瞬間、原子力発電所のメインシステムが呼応するように共鳴した。
「この組織は、特定の国家に属さない。俺たちは歴史の影に潜み、失われた技術を保護し、人類が自滅しないよう監視する。もしこのルールを破る者がいれば、昨日見た『光』がその都国の王都に降り注ぐと思え」
宰相は絶望に顔を歪めた。
一人の男が、大陸全土を「管理」下に置くと宣言したのだ。もはや帝国という枠組みすら、カイの描く未来図の前ではちっぽけな部品の一つでしかなかった。
「ミーナ。これから忙しくなるぞ。帝国全土から『学ぶ意欲のある者』を集めろ。兵士はいらない。必要なのは、回路図を読める技術者だ」
「はい、カイ様! 私たちが、この世界の新しい『光』を守るんですね」
カイは振り返り、再稼働した原子力発電所の巨大な冷却塔を見上げた。
彼にはわかっていた。自分の一生だけでは、この汚染された世界をすべて「清掃」することはできない。
だからこそ、システムの中に、そして人々の記憶の中に、千年先まで消えない「プログラム」を書き込む必要がある。
『……マスター・カイ。千年後の生存戦略、シミュレーションを開始しますか?』
脳内に響くAIの声に、カイは静かに頷いた。
第9話をお読みいただきありがとうございます!
ついに「眠らぬ民」が結成されました!圧倒的な力による平和の強制。これこそが、カイが進むべき『管理者の道』です。
次回、第10話はいよいよ「ストーリーゼロ」の完結編。
千年後のフィンへと受け継がれる「真の遺産」とは?
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