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【★すくほろ】宝石の永遠【反転】

作者: kotatu821
掲載日:2026/03/23

0:★すくほろ宝石の永遠【反転】


0:長命種と人間の輪廻転生もの


0:ヤオ/不問。ヤオと名乗っている。不老不死


0:スイ/藤原スイ♂。輪廻転生は信じない。俺たちの骨はオパールになれるかな。


0:___________________________


スイ:ねえ、ローラベルベットに会えるってほんと!?


ヤオ(M):それがこの男との、十数回目かの出会いだった。


スイ:ねえヤオさん、輪廻転生って信じてる?俺は信じないよ。人生に次があるかもだなんて考えたら最後、もうこたつから出られなくなっちゃう!


ヤオ(M):何度出会っても小うるさく、何度出会っても愛おしく、


スイ:ねえ、ヤオさん。俺の骨もオパールになれるかもしれないんだって。…不思議だよね。


ヤオ(M):何度出会っても、死んだ後の話をする。


スイ:もし死んじゃってさ、誰からも忘れ去られちゃったとしても──


ヤオ(M):何度出会おうとも私を置いて死んでいく。何度も私は待っていてねと言葉を落とす。


スイ:俺たちの骨はキラキラした宝石になって、この地球に遺り続ける。きっと何千年後もね。


ヤオ(M):何度後を追おうとしても、私の不死がそれを邪魔した。悠久を生きることが罰だった。


スイ:ねえ、不老不死ちゃん。俺の骨をあげるよ、オパールの骨を。


ヤオ(M):君は私の幸せを祈る。生きてね、と指切りをする。


スイ:あなたのその悠久に、せめても永く、寄り添えるように


ヤオ(M):呪いにも似た永遠に、それでも約束を遺してくれた


スイ:だからね、ヤオ。憶えててね。宝石の恋人は俺だけにして。


ヤオ(M):憶えておくとも。君がオパールになるまで幾星霜。私を待たせる、初めての人。


0:<<場面転換>>

0:<<スイの家。食卓に2人>>


スイ:ねーヤオさん、死んだらどうなると思う?


ヤオ:知らないの?火葬されて骨になって埋められるんだよ。


スイ:ねーそういうのじゃなくてロマンチックな意味で聞いたのー!


ヤオ:ああ、輪廻転生のほう?


スイ:そ!


ヤオ:お前はまた同じ顔と同じ名前で生まれ変わるだろうね。面の皮が厚いから


スイ:悪口???ここで火葬してあげようか?


ヤオ:一言の悪口で火刑に処されることある?あれ痛いからやだよ!


スイ:もー。俺はね、輪廻転生なんか信じないよ。次の俺なんてそんなの俺じゃないんだし。


ヤオ:そういわないでよ。


スイ:それにね、俺死んだら宝石になんの!


ヤオ:宝石?


スイ:知ってる〜?俺たちの骨はオパールになれるかもしれないんだよ、不思議だよね。


ヤオ:そうなの?


スイ:ロマンチックでしょ!俺死んだら宝石になるから転生なんてしてる暇ないんだよね


ヤオ:ふふ、私はもうスイに会えないね


スイ:俺が死んだら生まれ変わり探そうとしてるの??


ヤオ:そうとも。


スイ:ふふ、恋人みたい!ちょっとキショい


ヤオ:うええ!?今いい雰囲気じゃなかった!?


スイ:へへ、宝石の恋人は俺だけにしてよね


ヤオ:最近の若いのは〜!


スイ:ははは隙あり!からあげもーらい!


ヤオ:あ"ー!!残してたんだよ!?返せ!


スイ:(もぐもぐしながら)返せませーんなぜならカラアゲが俺に食べて欲しそうだったから〜!


ヤオ:お前はそういう奴だった昔から…!


スイ:パセリでよかったらどうぞ?


ヤオ:不平等条約じゃない!?タカフミの分のからあげを要求する!


スイ:冷蔵庫入ってます


ヤオ:気持ちいい速度の手のひら返しだ。好感度が高いですよ


スイ:お父さん、残業するのが悪いよ。南無。


ヤオ:悪いねタカフミ。でも子供の教育が悪いから悪いのはやっぱ君だ。


0:<<ニュース映像がでる>>


スイ:ん〜?(テレビを見ながら)ローラベルベットは素晴らしい発明をした…?


ヤオ:お?今ベルベットって言った?


スイ:テレビがね


ヤオ:お、本当だベルちゃんだ。ねえねえ私、ローラベルベットと共同研究者(ドヤ)


スイ:へへ俺は研究対象、へへ!なんの研究かわかってないけど!


ヤオ:クラウル鉱石の働きを抑える特殊な血液についての──


スイ:あ、おはなだぁ(アホそうに)


ヤオ:……まあ、使い道はないさ。ね、何のニュース?


スイ:ん〜、ちょうちょと、兵器がなんとか?


ヤオ:兵器?また転用されたの?


スイ:ヴァルツヘルゲンがなんか戦争してるらしい。


ヤオ:物騒だねぇ。てことはほんとに軍事転用か、かわいそうに


スイ:ローラベルベットってノーベル平和賞取った人じゃなかったっけ?


ヤオ:そうだよ、あの子天才なんだ。平和のために作ったモノ全部軍事転用されてる学者さん。


スイ:うわ、最悪だね。


ヤオ:あの子の作った知育ロボットが戦争の歴史を塗り替えたんだって。ほらイーストレイクの。


スイ:え?イーストレイクの悪魔って元は知育ロボットだったの!?


ヤオ:今回はそうじゃないといいけ、ど…?


スイ:ヤオさん?


ヤオ:え、あれ、あの陣……あの、ベルちゃんの蝶が描いてる陣って……


スイ:どったの?


ヤオ:ああ、ああ、なるほど。どうして科学者が古文書なんか欲しがるのかと思ったら…


スイ:え、なに?深刻な感じ?


ヤオ:スイ、この戦争の原因は私かもしれない……


0:<<場面転換>>


ヤオ(M):ローラベルベットは人類史上最も多くの命を奪った個人である。


スイ(M):あれはなんでもない普通の日のことだったと思う


ヤオ(M):だが、それが人類史に刻まれることはない。


スイ(M):唐突に街の拡声器が乗っ取られ、声が響いた。


ヤオ(M):生き残った人類に過去を知る術はなく、また存続する保証もない。


スイ(M):ローラベルベットと名乗った彼女は戦争を哀れみ、俺たちに滅びを告げた。


ヤオ(M):故に人類史はここで終わる。


スイ(M):泣きそうな声で、80億の命を手折(たお)ると。人類は間も無く滅ぶと。


ヤオ(M):ただ一人、私だけは憶えておこう。


スイ(M):そうして数日の猶予が与えられた。あてどなく、しかし俺の人生で最も輝きを秘めた、たった数日の旅がはじまる。


ヤオ(M):この物語は救いの詩。たった一人の不死を救う少年の話を。そう、私だけのオパールと共に。


0:<<場面転換>>

0:<<ヤオの家、散らかっている>>

0:<<ヤオ、鼻血がでている>>


ヤオ:あ"ー……いって〜…くそあのモヒカン……


スイ:(ドアを強く開く)ヤオさん!大変、大変大変だ…!


ヤオ:スイ?ノックぐらいしなよ、いてて


スイ:えヤオさん!?血大丈夫!?


ヤオ:あー、大丈夫大丈夫。えっと、ほらあの、あれあれ、転んだの。


スイ:なんだ…日頃から不老不死とかふざけてるから怪我するんだよー。ほら、押さえててあげるから。


ヤオ:悪いねスイ。


スイ:…ローラベルベットに渡した古文書のこと調べてたの?


ヤオ:…うん、まあ、ね


スイ:ヤオさんは何にも悪くないよ


ヤオ:それでも、私が渡した古文書が、80億人を殺す手助けをしたのは確かなんだよ


スイ:……それが原因で、怪我したの?


ヤオ:え?あー、いや、これは……


スイ:ふふ、ただのおっちょこちょいか。いい加減部屋片付けなきゃね。どうせガラクタにつまづいたんでしょ。


ヤオ:この部屋の魅力がわからんかね最近の若いのは


スイ:はいはい


ヤオ:それで?大変って何がだい?


スイ:あっ!そうだよ!ヤオさんが危ない!


ヤオ:え?


スイ:早く逃げなきゃ、さあこっち!


ヤオ:あ、スイ足元気をつけ──


スイ:(被せて)(落下)ぎゃー!!


ヤオ:……気をつけないとそのへん穴空いてるよ〜…


スイ:言うのが遅いよぉ!!(ガヤ。助けてー!とか暗い〜!とか)


ヤオ:ありゃま〜…


0:<<場面転換>>

0:<<スイ救出>>


スイ:もーーーヤオさん家嫌いだよ


ヤオ:はいはい。それで、ベルちゃんの放送以後街が荒れてるというわけか。


スイ:まだ1日しか経ってないのにね。


ヤオ:それよりお前は大丈夫かい?お父さんとお母さんは?


スイ:死んじゃった。


ヤオ:…え、


スイ:お父さん、あの放送聞いて一家心中しようとしたの。


ヤオ:…本当なのかい


スイ:うん。珍しくもないんだよ、ヤオさん。あの放送の後は、こんなこと。


ヤオ:タカフミ…どうしてそんなバカな真似を……


スイ:俺は逃げ出したんだけどね、花の二十代だぜ、死に場所は俺が決める


ヤオ:スイたまに戦士(ウォリアー)になるよね


スイ:だってせっかく滅びるんだよ!パワハラまみれの会社も未来の不安も全部滅ぶの。

スイ:それなら自由に生きなきゃ!せめて悔いのないようにね


ヤオ:…君みたいに生きられたらよかったな。


スイ:街は荒れてるし訳わかんなくて一旦家に戻ったらね、強盗が入ってて…


ヤオ:スイ、大丈夫だったの?


スイ:うん、隠れたから…でもそいつら、ヤオさんの年賀状もって「つぎはここだ!」って…


ヤオ:あ〜…(思い当たるところがある感じ)


スイ:だからねヤオさん!急いで逃げなきゃ──


ヤオ:あ、スイそれ大丈夫。


スイ:え?いや大丈夫じゃないでしょ。くるもん強盗。


ヤオ:あいや、なんていえばいいか……ほんとに来るのかな?


スイ:くるくる!近くにそいつらの車止まってたよ!アホそうだったから多分住所読めてないだけでそろそろ来るって!


ヤオ:スイ口悪くなったね〜どんな感じでアホそうだったの?


スイ:ナイフ舐めてた!


ヤオ:それだけで決めつけちゃ──え、舐めてたの?


スイ:舐めてたよ


ヤオ:ナイフを?


スイ:ナイフを


ヤオ:まじか。うわ〜〜…最悪だ……。モヒカンで?


スイ:モヒカン


ヤオ:グラサンは?


スイ:かけてた。後頭部に


ヤオ:今どき珍しいくらいのアホだね。


スイ:でしょ!


ヤオ:処方箋いる?


スイ:いらない!


ヤオ:バカにつける薬はないもんねぇ


スイ:ていうか早く逃げよ!アホに刺されたらアホがうつるよ


ヤオ:ぷっ、ふふふ、口悪…くくく(ツボに入る)


スイ:こーいうの好きだねヤオさん


ヤオ:好きだよ、悪い子。

ヤオ:でも強盗の心配はいらない。私はアホになってしまったのだよ。


スイ:えー?なにー?


ヤオ:ほぉら(シャツを捲る)


0:<<ヤオの腹に刺傷がいくつも見える>>


スイ:っ(絶句)


ヤオ:素人の殺しってのは怖いね。人はこんなに刺さなくても死ぬよ。


スイ:ヤオさん、これっ!こんな大怪我!(ペタペタさわる)


ヤオ:いてて、大丈夫、大丈夫だから。え?普通触る?刺し傷だよ?触らないで。


スイ:(やっべーとか言ってバシバシ触ってる)


ヤオ:いた!やめ!いたたた治ってる最中だからこれ!いたい!やめて!


スイ:本当だ、血が止まってる。ヤオさんこれどういうこと?


ヤオ:私のセリフだよ?傷口普通しばく??


スイ:ね〜教えて教えて!


ヤオ:んー?内緒。


スイ:えい(傷口タッチ)


ヤオ:いだぁ!やめてよ!


スイ:教えてよ〜


ヤオ:ん〜…知りたいかい?


スイ:え?


ヤオ:私の秘密。


スイ:えっ、ヤオさん、いつも誤魔化すのに


ヤオ:これをいうと私たちの関係が変わる気がしてずっと言えてなかったんだ


スイ:ヤオさん、それって…!


ヤオ:でも、世界が滅ぶんだもんね。ねえスイ


スイ:や、ヤオさん、心の準備が…!


ヤオ:ねえ、きいて。


スイ:まってやめ──


ヤオ:私は人間ではないんだよ


スイ:っ……!


ヤオ:……


スイ:………そっち!?


ヤオ:…え、え!?


スイ:なんだそっちぃ!?


ヤオ:え、なんか、え?反応がさ、もうちょっと、え?


スイ:しってるよンなこと〜!ドキドキして損した〜!


ヤオ:なんで!?


スイ:いやなんでもなにも、ヤオさん俺のちっちゃい時からず〜っとその外見のままだよ?バケモンか不老不死でしょ普通に


ヤオ:めちゃくちゃ真っ当に論破されて辛い…!真剣な告白のつもりがめっちゃ恥ずい……!!


スイ:ていうか3年前トラックに轢かれてたじゃん


ヤオ:う…!


スイ:これは死んだなって当たり方でピンピンしてたじゃん


ヤオ:うぐ…!


スイ:仰天ニュースこないだ出たじゃん!


ヤオ:もうやめて!


スイ:ははは、勝ち確のとき追い討ちするのが一番楽しい


ヤオ:いい性格してるよホント……


スイ:てか愛の告白かと思っちゃったじゃん!

スイ:うっかりOKがでるところでしたことよ!


ヤオ:そんなことよりほら、アホはどこに行ったと思う?


スイ:(小声)冗談に思われてるし〜


ヤオ:なんか船に乗って逃げるとか言ってたけど…


スイ:…今警察って動いてないよね?


ヤオ:動いてないだろうね


スイ:俺さぁ、


ヤオ:うん


スイ:船乗ってみたかったんだよねぇ…


ヤオ:決まりだね、悪い子。


0:<<場面転換>>

0:<<海上。高級そうな小型クルーザー>>


スイ:ひゃっほ〜〜〜〜!!!!!!


ヤオ:落ちたら死ぬよ〜


スイ:船楽し〜!けっこうでかいね!アホに感謝!


ヤオ:金持ってるタイプのアホっているよね〜


スイ:ねー!ヤオさん!


ヤオ:なーにー


スイ:このままどっかいこーよ!


ヤオ:お、実はヤオさん行きたいとこあるんだよね〜


スイ:人生最初で最後のクルージングだよぉ!近場はダメだよ!


ヤオ:ふふ、ヴァングレイドにいくよ。ローラベルベットを止めにね。


0:<<場面転換>>

0:<<ヴァングレイド王国への海路>>


ヤオ:間に合うかが不安だったけど、このままいえばなんとかなるかな…


スイ:ねーヤオさん、ほんとに行くのー?


ヤオ:いくともさ。なにせ世界が滅ぶ。


スイ:え〜…別に良くない?世界なんかさ、どうだって。


ヤオ:スイ、その冗談は笑えないよ


スイ:冗談じゃないのに


ヤオ:(聞こえてない)さて、急がなきゃね。どこかの国がトチ狂って核爆弾でも使いかねない。


スイ:…ヤオさん、ニュース見てないでしょ。


ヤオ:え、なに急に。悪口?


スイ:んーそれもある。みんなが地球を捨ててスペースシャトルに乗ろうとしてるの知ってた?ほら、あそこに見えるやつ


ヤオ:え、そうなの?


スイ:ふふ、やっぱ見てないや


ヤオ:見てないよ、海の上だし。


スイ:そうだよね。ヤオさんスマホとかWi-Fiとか、苦手だもんね──


ヤオ:どういうこと?


スイ:打ち込まれたんだよ、核。


ヤオ:え……?


スイ:ローラベルベットの家に。ヴァルツヘルゲンの独断で。難民ごと、ね。


ヤオ:そん、な……


スイ:今報復でヴァングレイドが宣戦布告したところ。

スイ:ばかだよね、ベルベットが国境も人種もジェンダーだって分け隔てなく滅ぼしてくれるのに。人類はそれでもまだ殺し足りないみたい。


ヤオ(M):遠くでスペースシャトルが打ち上がるのが見えた。


スイ:もう焼けたんだよ、ヤオさん。希望も未来も、なにもかも。


ヤオ(M):縋る人々の群れを噴射で焼きながら、スペースシャトルはゆっくりと機体を浮上させる


スイ:残ったのはベルベットのシェルターと、同じ造りのディスプレイに展示されたノーベル平和賞のメダルだけ。


ヤオ(M):私たちの頭上を飛び越し、シャトルを目掛け何かが飛んでいた。嫌に気の抜ける音で、ひゅるひゅるとコミカルに回りながら


スイ:ベルベットにつながる通信設備も核の炎が焼いた。


ヤオ(M):それはシャトルに当たり、爆ぜた。ベルベットの代表的な軍事転用、イーストレイクの悪魔がもつミサイルだった


スイ:ほらね。人類は滅びるべくして滅ぶんだ。


ヤオ(M):もとは子供の手から離れた風船を掴むための技術だったという


スイ:ベルベットは新たな平和を作るんだって。人類は争いをやめられないから平和から追放されたんだよ。


ヤオ(M):それが今はミサイルを乗せ、シャトルを焼き堕としている


スイ:ローラベルベットはね、それでもきっと優しいんだよ。俺たちに時間をくれた。せめて悔いのないように。


ヤオ(M):気が狂いそうだった。ベルベットの技術がその炎で地獄への道を照らしている。

ヤオ(M):私は何も救えない。またスイを失ってしまう。


スイ:ヤオさん、おれ決めたよ。俺の死場所はあなたの隣がいい。


ヤオ(M):お前だけが、永遠を生きる私の、ただひとりのよすがなのに


スイ:ふふ、その目。ようやくヤオさんのこと、ちょっとわかった気がする。

スイ:ヤオさん、世界なんてどうでもいいんだ。俺が死んじゃうのが嫌なんだね


0:<<場面転換>>

0:<<刻限が迫っている>>


スイ(M):それから船を捨ててしばらく歩いた。正気を失った人々はヴァングレイド周辺から逃げ出し、ひどく静かな旅になった。

スイ(M):侵す者のいなくなった自然がそよいでいた。

スイ(M):明かりのない夜空は信じられないほど綺麗で、人類の最後を祝福するかのように星々は燃えていた。

スイ(M):ヤオさんがぽつりぽつりと口を開く。


ヤオ:本当は私、あの墜落したシャトルに乗る予定だったんだ。断ったけどね


スイ:え?


ヤオ:人類の、科学技術の希望としてね。ベルちゃんを除けば、次に優秀な科学者は私ということになるらしい。


スイ:なんの冗談…?


ヤオ:お前の血を研究していただろう。ベルちゃんと、共同で……。クラウル鉱石の働きを弱める特殊な血……。その、成果のおかげでね


スイ:おれ…?


ヤオ:お前だ。

ヤオ:政府の使いが、船でここまで連れてくるつもりだったらしい。

ヤオ:私を刺したモヒカンくんね、政府の使いだったんだよ。信じられないよね。


スイ:……(戸惑い)


ヤオ:たった1つ、たった1つだけ…まだ世界を救える方法がある。それがシャトルに乗る条件だったし、私が世界を見限った理由……


スイ:ヤオ、さん…?


ヤオ:スイ。お前は世界を救える。その命を引き換えにすれば……

ヤオ:お前には選ぶ権利がある。……そう思ったんだ。


スイ:(息を呑む)


ヤオ:お前は命より大事なものがあるかい?


スイ:………あるよ


ヤオ:(歯を食い縛る)……なら、死ぬのかい


スイ:ふふ、変な顔。あんたのことだよ。


ヤオ:…へ?


スイ:命より大事なもの。ヤオさんだよ


ヤオ:私…?


スイ:ねえヤオさん、俺って輪廻転生するの?


ヤオ:……


スイ:必要なことなんだ、教えて。


ヤオ:するよ、輪廻転生。お前だけは、この二千年見失ったことはない。


スイ:二千年かぁ…ね、どうやって俺だってわかったの?


ヤオ:わかりやすいよ、お前は。おんなじ顔と名前で、馬鹿みたいに明るく話しかけてくれるから


スイ:そっか…。幸せだったんだ


ヤオ:だと、いいんだけど。


スイ:ねえ、ヤオさんって世界が滅んでも生きてるよね


ヤオ:私の不死の話か……


スイ:ね、教えて。


ヤオ:滅ぶくらいじゃあ死なないだろうさ。私の不死は呪いだからね。


スイ:呪い?


ヤオ:そう、呪い。私が祝福と聞き及んで齧り付いた人魚の肉は不死をもたらしたが…違ったよ。祝福ではない、これは呪いだ。


スイ:……


ヤオ:二千年前、お前を初めて亡くしたとき、呪いは罰に変わったと思った。しかし数年後再び巡り合ったお前の声を聞いて…はは、無邪気に思ったんだよ。福音(ふくいん)だとね。奇跡は起こると。神は私を許したのだと


スイ:…違ったの?


ヤオ:違ったよ。奇跡だったかもしれないけれど、それは罰に違いなかった。


スイ:(ムッとする)……最後まで聞くよ


ヤオ:私の罰は永遠を生きることじゃなかったんだ。…愛する人を永遠に失い続けること。愛する人の魂を、永遠に縛り続けることだった……

ヤオ:みんな最期に泣くんだ。どのスイも、「一人にしてごめん」と。

ヤオ:神は望んでいる。永遠に苦しみ続けることを


スイ:ヤオさん、言いたいことはわかったよ。

スイ:それはねヤオさん、


ヤオ:……(判決を待つような間)


スイ:ズバリ性癖だね!


ヤオ:…せいへき?


スイ:ヤオさんの好みだね


ヤオ:スイ…?私今真剣に罪の告白をしていたんだけど


スイ:俺だって真剣だよ?真剣にヤオさんの性癖だと思ってる。


ヤオ:は…?


スイ:名前、性格、顔。それだけでしょ?ヤオさんが俺のこと好きなだけ。俺はスイ。顔も性格もとっても可愛い!


ヤオ:スイ、茶化すなら──


スイ:だからそれは祝福だよ。


ヤオ:な……


スイ:幾星霜を経て、俺に至るための祝福。


ヤオ:(息を呑む)


スイ:この世はどうしようもないことばっかりで、世界は神じゃなくベルベットが滅ぼす。

スイ:神様はいるかもしれないけど、俺は見たことない。

スイ:だからヤオさんのそれはただの妄想。あなたが生きた二千年だけが本当なら、それは俺に出会うための祝福だった。

スイ:ねえ、その方がロマンチックじゃない?


ヤオ:(息づかい)


スイ:ヤオさんの二千年、全部俺にちょうだいよ。

スイ:俺に出会うためだったって、笑って捨てて。


ヤオ:それは、不平等条約なんじゃない?


スイ:ふふふ。でもね、俺の方が不利になっちゃうんだなこれが


ヤオ:?


スイ:ヤオさんが二千年くれたらさ、俺の永遠をあげちゃおう。

スイ:きっと宝石の体になって、あなたのその悠久に寄り添ってあげる


ヤオ:……!


スイ:ね、くれるでしょ?ヤオさん。


ヤオ:私に、ついてきてくれるのかい…?


スイ:…あは!嬉しいから頑張っちゃうよぉ!

スイ:だからヤオさんも待っててね。

スイ:俺の骨がオパールになるまでの幾星霜。あなたの不死のそのとなり。

スイ:あなただけの永遠を、俺を(かたど)る宝石が照らしてあげる。

スイ:俺だけの永遠に、あなたが付き添うのを許してあげる。宝石の永遠。その介添人として。


ヤオ:ふふ、ははは、私が君についていくのか。


スイ:そうだよ。


ヤオ:ぐす、永遠をともにしてくれるのかい


スイ:泣かないの!


ヤオ:うん、うん


スイ:だからね、ヤオさん。覚えてて。一生をかけた約束だよ、いい?


ヤオ:いいよ、言ってごらん。


スイ:宝石の恋人は俺だけにして


ヤオ:ふふ、元からそのつもりだよ


スイ:俺がオパールになったら、愛してるって言って。


ヤオ:ああ、憶えておくとも。


スイ:ああ、よかった。ベルベットの滅びまでに、言いたかったこと全部言えた。


ヤオ:心は決まったのかい


スイ:野暮だよヤオさん。

スイ:世界なんてね、俺ずっとどーでもよかったの。

スイ:俺は宝石として永遠を生きる。あなたと一緒にいるために。


ヤオ:ふふ、私も同罪にする気かい?


スイ:共犯者だねヤオさん。ね、滅ぼしちゃっていいよね?


ヤオ:あは、共犯か。

ヤオ:いいよ。悪い子。


スイ:ふふ、いつかきっと。会いに行くから。

スイ:待っててね、ヤオさん。


ヤオ:もちろんだとも。

ヤオ:君がオパールになるまで幾星霜。

ヤオ:私を待たせる、初めての人。


0:<<場面転換>>

0:<<新たな地平。幾星霜のあと>>


男:ヤオさーん!大変大変!イーストレイクに遺跡だって!地球文明の遺跡だよ、2000年前に世界が滅んだ原因がわかるかもって!


ヤオ:ノックくらいしなよ。


男:いーでしょ別に。ほら、生き証人なんでしょ?早く行くよ!


ヤオ:んー、私はいいかな。


男:えー!俺の昇進がかかってるのに!?


ヤオ:恋人に嫉妬されるからね


男:えぇ〜〜!


ヤオ:きみ、そういえば名前はなんだったかな


男:え"…ヤオさんまさかボケ…?藤原ですが


ヤオ:下の名前だよ。


男:え!ようやく聞いてくれるの?絶対名乗るなって言ってたのに?


ヤオ:ほら、はやく


男:嬉しいからいっか!スイセイです!


0:<<間>>


ヤオ:スイじゃ、ないのかい


男:え誰?


ヤオ:…ふふ、はははは!


男:え、なんです?


ヤオ:いやいや。君が運命の人かと疑っただけだ。


男:え、キショ〜。おれが可愛いのはわかりますけど既婚者なのでやめてくださいね


ヤオ:危ないな君、わたしが本当に惚れてたら首掻き切っちゃうとこだぞ


男:かわいさって…罪!


ヤオ:面の皮が厚すぎるな君。


男:じゃー俺いくから!来てよね!ね!恋人連れてきてもいーから!


ヤオ:いってらっしゃ…(もういない)……元気のいいこと。


0:<<間>>

0:<<机の上には輝くオパールが大事に飾ってある>>


ヤオ:永遠の呪いはお前が祝福してくれた。私の罰さえ綺麗さっぱりとは…お前にはいつも驚かされる。

ヤオ:次のスイはこの二千年現れていない。


0:<<オパールの骨にそっと触れる>>


ヤオ:ああ、ずっとそばにいてくれたのか。

ヤオ:幾星霜の彼方。オパールの体になって、私を照らすためだけに。

ヤオ:ならば私も付き合おう。お前の永遠、その介添人として。


ヤオ:愛しているとも。

ヤオ:行こうか。宝石の永遠を、ともに。


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