雪だるまさんが転んだ
作品は作者の偏見に基づくフィクションです。真に受けないよう注意してください。
これはとある雪の冬の日の話。
私は部屋で炬燵に籠りテレビを相手にしているが、子どもたちは外で元気に遊び燥いでいる。
「だ~るまさんがこ~ろんだ」
雪だるまに伏せた鬼が振り向く。
動いた相手の名前を呼び、全員を捕まえればそこで終わり。
──のはずなのだが……。
「おい、俺は動いていないだろ!」
その通り彼は動いてはいない。
一歩たりとて。
手足さえも動かさず、喋ることさえもしていなかった。
「嘘を吐け、息をしてるじゃないか」
めちゃくちゃだ。
まさかこんな詭弁が出てくるとは。
しかしこれだから子どもというのは面白い。
窓から覗く外の景色、しかしテレビの中はそうもいかず。
「いい加減素直に罪を認めろ!」
取調室、刑事が容疑者へと詰め寄る。しかし彼の方は黙ったままだ。
「貴様、警察をナメてるのか?
ああ⁈ なんとか言ってみろよ!」
胸ぐらを掴み威圧する刑事。
不快そうに顔を顰める容疑者。
しかしそれだけ。彼は刑事にされるがままだ。
「まあまあ、柊さん、ここはひとまず落ち着きましょうよ。
ほら、君もそう不満げにせずに、ここはお互いに冷静に」
もう一人の刑事が両者を宥めるが、明らかに相方の柊の肩を持つ様子なのは見え見えだ。
「はあ……。
言っておきますけど、僕は何も喋りませんよ。どんなに威かそうと、宥め賺そうと無駄ですから。黙秘権くらい認められているでしょ」
漸く言葉を返した容疑者。
されど態度は変わることなく、そこには冷ややかな眼差しがあるだけだった。
「はっ、卑劣な痴漢野郎が一人前に人権ってか?
そういうのはな、善良な人間様にのみ認められるものであってお前みたいな人でなしは適用外なんだよっ。
ああ? 違うっていうのならばなんとか言ってみろよこのゴミクズがっ」
相変わらず続く悪口罵詈。相手を貶めて怒らせることで言葉を引き出し揚げ足を取ろうという常套手段だ。
「無駄ですよ。そんな安っぽい挑発になんて乗りませんから。こういうのは熱くなった方が負けですしね」
なんとも人を喰った容疑者だ。
しかし彼の言うことも確か。
だがしかし……。
ドカン!
柊が机を激しく蹴る。
「お前、やはり警察をナメてるだろ?
取調室っていうのは他に誰も居ない密室なんだぞ? つまり何があっても咎める者は誰も居ないっていうことだ。
お前も馬鹿じゃなきゃ解るだろ? 洗い浚い全てを喋った方が身のためってことが」
「お、脅かしたって無駄なんだからな。
取り調べの様子は全て記録されていて恫喝による自白の強要は訴えれば無効化できるって」
「じゃあ訊くが、その記録は誰が録っているのか解っているのか?」
道理の及 ばぬ圧 力はお約束とはいえ、こちらの刑事の暴言もめちゃくちゃ。しかし続く台詞が洒落にならない。
窓の外の様子が騒がしい。
見れば先ほどの子どもたちが取っ組み合いの喧嘩をしていた。
それに対してテレビの中では容疑者が沈黙を貫くばかり。
冷たい冬の空気の中、雪だるまの首がぼとりと落ちた。
刑事ドラマの不思議。
警察の取り調べって弁護士の立ち会いも容疑者側の記録も認められていないらしく冤罪が訴訟問題に発展する可能性が高いようです。
[※注]
あくまでも私の偏見です。なので実際の法律がこれにどのように対処しているかは不明。気になる方は独自で調べるようお願いします。
一応はフィクションの中のフィクションですし、コンプライアンス的には大丈夫……なのかな?




