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シャーロキアンのホームズⅢ〜精神病棟のホームズの物語〜  作者: 語り部ファウスト


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9/15

第九幕:看護師の話

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第八幕では、酒を手に入れる為にアル中ワトソンは覚醒した。

看護師に手帳とペン、前払いの酒まで要求し、ついには彼の話を聞く事になった。


僕は君に正確な彼の物語を伝えるのは、難しい。ある程度、脚色はする。

そこは許してほしい。


【看護師ダグラス・ハーヴェイの物語】


オレの名はダグラス・ハーヴェイだ。

今はハンウェル精神病院で働いているが、もとは船乗りだった。

この太すぎる腕が自慢で、ちょいとコイツを膨らませてやれば、問題なんざ解決した。

仲間たちは、オレを”ダグ”と呼ぶ。

親しみと尊敬を込めてだ。


船乗りの生活は厳しいものだ。

自然だけじゃなく、船の中までも問題を抱えていた。

だけど、オレのーーこの腕、見てくれよ。太すぎる。まるで発情期のオスのゴリラの腕だ。

こいつは、オレの自慢なんだ。

誰もコイツに敵わなかった。

ヤツが船に乗り込むまでは、な。


なぜ、ヤツの話をするのか。

オレは誰に命を狙われてるか分からない。

だけど、コイツの話をしなきゃいかんと思っている。

バカバカしい。ヤツは海の底なんだ!

生きているはずはない。

ーー生きていたら、間違いなくヤツの仕業だ。神の奇跡だ。悪魔の神のーー!


ヤツが船に乗り込んだのは偶然だ。

オレたちの船は遠い異国で、モノを手に入れてーーまあいいーーその途中だった。

途中で乗り込む? 

ムリだ。ムリな話だ。

ヤツはーー偶然に船に乗り込んだ。

遭難者として。そして、船乗りになった。


オレはヤツが甲板に引き上げられた時、腕の筋肉を見た。

オレよりも、ムダに太すぎる腕をしてた。

ヤツの腕は、オレにとってはキリストのようだ。ジーザス! なんて腕だ!

何もしなくても、そこにいるだけで震えが止まらない。


船長はそんなヤツに惚れ込んじまった。

ヤツは黒人じゃない。白人でもない。

目立たない色をしていた。


英語も話せなかった。話さなかったのかもな。

異国の言葉で、たんたんと話す。

低い唸り声ーー虎だーー。

そして、誠実で忠義深いヤツだ。

皆、ヤツを愛した。オレよりも、だ。


ある日、船が嵐に襲われた。

仲間たちが何人か波に飲まれた。

人間がいくら賢くても、自然には勝てない。

アイツらはーーいいヤツだった。

黙っちまえば、いいヤツだ。

普通、誰もがなーー。


嵐の中、ヤツに何人も救われた。

オレだって、借りがないと言えない。

ぶつかってくる波に、ヤツは船を守ろうと唸ったーーここまでは感謝している。


誰もが、感謝してたろうよ。

だがーーヤツの本性がオレたちを、恐怖に叩き込んだ。


船は航行不可能だ。

食料も尽きかけてた。

嵐で、黒人使用人のポコがメインマストの下敷きになった。

ヤツが助けた。でも、ポコは死んでたろうな。何もしなくてもーー。


その夜だ。ヤツはポコを食った。

何もムダにしなかったーーヤツは、食ったんだ!!

オレは見たーー!見たんだーー!!


オレは仲間たちに伝えた。

船長は、ただただオレの話を聞いて震えてた。

ヤツは悪魔だ。オレたちの船が嵐に襲われたのも、ヤツのせいだ。

オレたちは、正しいことをした。


手を下したのは十三人の男たちだ。

ヤツを包囲した。網を持って、モリを持って、ケモノのように追い立てた。

実際、ヤツはケモノだった。

十三人は七人に減らされた。


だが、ヤツは船の外へ追い出した。

そこがどの辺りかは分からない。


次の日、オレたちは救助された。

別の船に。

たった一日の差だ。

ヤツはガマンすれば良かった。

人喰い人種としての本能をーー。


そして残った仲間たちは、

陸に上がって、長い時間が経ったーー死んでいってる。

連絡がとれない。

不安になったオレは船での生き方を捨てた。完全に。

偶然なのか?

オレは命を狙われてるーー

関わったヤツらは蜘蛛の糸が絡んだ。

ーー蝶のように。

オレは怯えなきゃならないーー。


だが、誰にーーヤツじゃない!

ヤツじゃないのにーー。


(こうして、第九幕は船員の物語により幕を閉じる。)

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