第八幕:依頼人の登場
やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。
なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。
第七幕では、突然の依頼人が僕らの部屋に現れた。ワトソンを一人にしていては酒を飲まれてしまう。
僕は彼を連れて、依頼人と話をする。
ちゃんとしたコンサルタントとして活動しなきゃ、僕はアル中を騙した恥知らずになるんだ。
庭園で、僕らは三人でベンチに座った。遠目からは、まるで強面の看護師が一人で僕らを監視しているように見えただろう。そうでなきゃ困る。
「ホームズ。頼む。オレは問題を抱えているーー。」と看護師は口を開いた。
「なるほど、問題ね。君はその問題を力技で解決できない。それにーー君の強面は、演出している。髪の毛を剃ったのは、もっと怖くしたかった。もともと優男になれない顔だから。だから君は相手を脅すために、考えたんだろう。鼻はもっと高かった。誰かに殴られた。これは昔やられたものだ。だから、君はここを仕事場にした。逃げてきたんだ。この閉じられた環境にーー」
彼の目が見開かれていった。
「ホームズ、お前、見てきたようにいうーー怖いくらいだーーその通りだーー」と看護師は震えながら応えた。
「この鼻はもっと美しかった。だが、潰されたーー」
僕はこの男から鼻の美しさとでてきたから、洒落たことを言いたくなった。
でもーーそんな事を言えば、僕の鼻が潰されただろうね。
「オレは命を狙われているーー誰にかはわからない。まるで、蜘蛛の糸にかかった蝶のようだ。オレは自分が獲物のように感じてるーー逃げても糸がからみつくーー」
この依頼は、本当ならーー簡単な依頼ではない。
ーー家畜殺しとは違うんだ。
正直ーーこんな強面の口から、美しいや蝶などの単語がでてくるのが信じられなかった。
コイツのムダに太すぎる腕と看護師でなければ、依頼人の尻を蹴り上げただろうね。
僕の論理は「適当にはぐらかす」と決定した。
しかし、ワトソンが口を開いた。
「わかった。ホームズならーーシャーロック・ホームズなら、なんとかしてくれますーー!」
僕の思考は一瞬で固まった。
「ホームズは、さっきの言葉である程度は理解できました。彼の知性は、僕らを超えている。本で読んだ通りの彼ならーー」とワトソンの言葉は熱を持った。
「ホームズなら、きっと心の重荷を取り除いてくれます。」
それからワトソンは、まるで自分が探偵かのように話し始めた。
「すみませんが、お名前と詳しい状況を話してくれませんか? 前払いとして、酒をください。ボクからホームズに渡しますーー」
このアル中ーーワトソンは一体......何を言ってるんだ?
「酒ーーか、今は渡せないが、必ず用意する。約束しよう、ワトソン。
それとオレの名はダグラス・ハーヴェイだ。もとは船乗りだった。船の上で少々乱暴な事をしたが、悪人じゃないと思ってる。ここで語りたいーー」
「待ってーーそれと、手帳とペンが欲しい。
ボクはアル中だが、それでペンで他人を傷つけようとは思わないーー」
ワトソンは、そういうと看護師が持っているかのように手を突き出した。
「ボクは記録係として、ホームズを支えよう。そのためには、手帳とペンが必要だーー」
ワトソンの目は輝いていた。
酒を呑める。この一つのためだけに、魂を燃やしていたんだ。
ーーこのアル中め。
(こうして、第八幕は記録係で幕を閉じる。)




