表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャーロキアンのホームズⅢ〜精神病棟のホームズの物語〜  作者: 語り部ファウスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/15

第七幕:ウソから始まる依頼

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第六幕では、ワトソンが僕の目的は酒を集める事だと推理した。

僕は自分をよく見せたかった。

それの何が悪いーーいや、悪いんだろうな。


例の酒を手に入れた経緯は、推理でも説得でもなかった。

ただ、看護師の一人が上機嫌だったから、

僕は「なんでも知っている風な顔」をしただけだ。

相手が勝手に“ホームズに相談した”と勘違いした。

その結果が、僕のベッドの下に転がり込んできた酒だ。


訂正してもよかった。

でも――訂正する理由もなかった。


ワトソンが言ったように、

この酒を“集めて”、

“火をつけたら”、

僕は外に出られるかもしれない。


そんな思いつきが、脳の奥でふっと光った。

光――いや、火花だ。


僕は背筋が冷たくなった。

「これは悪魔の考えだ」

ホームズの知性ではなく、

追い詰められた囚人の浅知恵だ。


恥だ。

だけど抑えきれない。


僕がやらなくても、

“誰かがやる気がする”。

そう思った瞬間、

病院の壁が急に薄く感じた。

誰かが、火をつけ、燃やし、壊す世界を想像した。

その誰かが僕に見えて、僕じゃない者にも見えた。


不安が胸で膨らんだ。

ワトソンが正気に戻っていくほど、

僕だけが暗がりに追い詰められていくようだった。

頭から、この考えを振り払った。


ーーコンサルタントをやらなきゃいけない。本格的にだ。

僕の知性よ!酒を集めるんだーー。


そんな風に思うのに、

たいして時間はかからない。


「ふふ、そうさ。僕は酒を集める。

飲みたくてさ。連中が用意するドラッグを楽しむのもいいけどーー酔いたい時もあるんだーー」


ワトソンは僕を見つめていた。

ホームズを見ていたのか。

それとも、囚人としての僕を見たのか。推理は、彼の心の中までは探れない。アル中の心は特にーー。


ワトソンが口を開く前に、扉がコツコツと叩かれた。

次の瞬間、部屋の扉が開かれた。

部屋に入った男は看護師だった。

頭が禿げあがっていた。

強面な顔で、鼻は低く、顎ががっしりとしていた。

身長は高く肩幅も広かった。

彼は口を開いた。

「シャーロック・ホームズ。アンタに聞けば、問題を解決してくれると、仲間から聞いたんだ。

ーー俺の話を聴いてくれないか。」

まるで仕組まれたように、男がやってきた。周りを気にしていた。

「聞かれたくないんだ。庭園を歩こう。」と言われた。

僕は罠かもしれないと思った。

思わず、ワトソンを見た。

彼の視線は、ベッドの方に向けられていた。


きっと僕がいない時に呑むんだ。

救いようのないワトソンだ。

だから僕は看護師に向かって言った。

「ワトソンも連れて行く。でなければ、相談は受け付けない。

なぜかって? 彼は僕の相棒だからだ」

看護師は、戸惑ったが、やがてうなづいた。

その時のワトソンの恨みのこもった目は、なぜか僕に高揚感を与えたんだ。


(こうして、第七幕は依頼人によって幕を閉じる。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ