路〜誕生〜(1)
おもしろいと思います。
意識が混濁する。
少しすると、ちょいとだけはっきりしていく。
ゆっくりと目を開ける。
白い天井。
「ここは…どこだ…知らない天井。俺はたしかコンビニから帰っていたところで…そうだ、トラックに轢かれ」
「てねぇよ。なんならその天井は見知った自分の部屋のだろ。そもそも昨日俺にコンビニ行かせて、俺が帰る前に寝ただろお前。」
…ダメだったか
「はあ。またダメだったのか」
アラキはため息をつくと、再び瞼を閉じようとする。
「寝んなよ。今日は早いんだ」
「…メンドイ」
「しょうがねえだろ。仕事なんだから」
「…朝飯」
アラキはそう言いながら、不服そうに布団から抜けてベッドを降りた。
「残りもん。あと味噌汁」
「まーた残りもんかよ」
「文句があるのか」
「いんや?貰えるだけでありがてえしな」
「そうは思えなかったが」
そんなことを話しながら、洗面所に行き顔を水で濡らし、石鹸で洗う。
これでも清潔感はあるアラキである。
「あと味噌汁に卵入れるだけだから、ちゃっちゃと着替えろよ」
「りょーかーい」
気の抜けた返事をするとぱっと服とズボンをとってパジャマを脱ぎ捨てる。
「洗濯機に入れろよー」
「…チッお見通しかよ」
「聞こえてるぞー」
「わざと」
洗濯機に入れてから仕事服に着替える。
着替え終わったので、リビングに行くとちょうど飯が並び終わったところだった。
「「いただきます」」
ぶっきらぼうでもなんでも挨拶はきちんとする。
それがアキラたちのルールだった。
「ていうか、毎朝やってる"あれ"なんだよ」
「はれって?」
口に物を入れながら喋るな。
そう言いたかったザザだったが、自分が問いかけたことなので、諦めた。
「はぁ。…朝のあれだよ。知らない天井がーってやつ」
アラキは口の中のものを飲み込んでから話した。
「あーあれな。転生だよ」
「あ?」
「だーかーらーて•ん•せ•い!分かる?日本語」
「言葉は分かるが、説明が分かんねーんだよ」
少しイラッとしながらも努めて冷静に聞いた。
しかし、アラキはため息をつきながら、
「これだから理解力のない大人はいやですなー」
「殺す」
「ははっ。いつかねー。
んでまあ朝のやつを話しますとなー。俺の夢なんだよー」
「夢?」
箸を茶碗に置き、立ち上がりながら話した。
「そう。夢。いつか転生して天才魔法使いとかになって、姫様を救って結婚。そして幸せな家庭を築く。そのためにはまず転生が必要だろ?」
アラキは大仰に嘘っぽい演技をしながら話した。
最後には手を広げ目を輝かせていた。
「真剣に聞いて損した。」
「なんだとー!俺の夢をバカにすんのか!?
俺は朝と夜。寝る時と起きた時。毎日2回それを楽しみに生きているというのに!」
「馬鹿かよ。」
「ああん!?バカはてめえだ!この禿頭!!」
「禿げてねぇ。てか、現代に魔法はねぇし、姫様も魔法使いとかいう不審なやつとは結婚しねぇよ。」
ザザは冷静に飯を食べ続ける。
「ぐぬぬ」
「どーした。ぐうの音も出ないか笑」
「あ!?出るけど!飯食ってても出るけど!
ほら聞こえるだろ!ぐーって!鳴ってるだろ!」
「聞こえませんけどぉ」
「耳が悪いんじゃねえのか!?」
「俺が?冗談だろ」
ひとしきり言い合いしばしの沈黙が訪れ、互いに飯を食っていたところ
ピンポーン
仕事始まりのチャイムが鳴る
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