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83 岐阜城、落城す。

 3日が経った。武田軍が岐阜の街を焼き岐阜城の前に布陣している。

 長良川の向こう岸には上杉軍が布陣し、鷺山城を中心に陣城を築いているのが見てとれる。安土からの援軍に対する準備なのだろう。鷺山城は、かの斉藤道三が隠居城として整備した城である。

 その安土からの連絡によると1万づつ3部隊が援軍にくるようだがまだその姿は見えない。

 信長は1千5百しかいない守備兵を多く見せるため、旗を多く揚げさせ、鉄砲隊を遊撃的に使うことで上杉軍の目を欺こうとしていた。

「この兵数では守り切れぬ、西側中腹の砦軍に入れる兵が決定的に不足じゃ。」


 夜明けとともに武田軍の苛烈な攻撃が始まった。

 大手門に攻撃が集中している。城方も大手門に集中的に兵を配置して対抗している。

 麓の曲輪の塀の上や狭間から鉄砲で応戦しているが、圧倒的な敵の数である。死傷者数は武田軍のほうが遥かに多いと思われるが、倒しても倒しても湧いて出るように現れる武田の兵に、城方は徐々に疲弊してきている。


 武田軍は正面突破に行き詰まると信長が心配した砦群に目を付けた。

 岐阜城は金華山に築かれた城でその西側には城と一体となって防衛する砦あるが、そこまで兵を十分に配置する余裕がなかった。

 その砦に対して武田軍が攻撃を始めた、精一杯の防衛をしたが圧倒的な数の前に次々に砦は落ちていった。それは金華山頂上の本丸と麓の曲輪を繋ぐ連絡路が断絶したことを意味し、麓の曲輪を無視して山頂の本丸を攻撃できることになった。


 麓の曲輪の防衛を担当している安藤守就は大手門に張り付いて直接指揮を執っていた。

 何時まで持つか・・

 鉄砲の音、硝煙の匂いの中で山頂の天主に居る信長に対して、

「中腹の砦が奪われ、何時山頂の本丸へ敵が攻め寄せるか分かりません、今のうちに脱出を願います。」と使番が走ると共に唯一手許に残った虎の子の予備兵50を山頂に送った。


「上様、間もなく敵が此処にも至るようでございます。急ぎ此処を離れ近付いている滝川殿と合流致しましょう。」

 という蘭丸の声に、天主より外を眺めていた目を室内にいる近臣たちに向けると、

「やれやれじゃな、では参るか。」

 と信長の声に一同腰を上げ緊急時のために設けられた脱出路に森力丸を先頭に信長を囲うようにして向かった。

 信長が視ていた天主からの眺めの西側端に辛うじて近付いてくる滝川軍か捉えられていた。


 鷺山城では、隼介と喜兵衛が頭を突き合わせていた。

「ちょっとづつ予定からずれているな。岐阜城は落とせそうだがその後の防衛線を構築できるかな?」

「まっ、それまではここで耐えるしかあるまい。どっちにしても10日は必要あるまいからな。」

 まず、揖斐川の防衛からだな、と喜兵衛。

 隼介は、「できることはやったさ。」

「では、指揮を執ってくる。」と喜兵衛がおもむろに立ち上がった。

「頼む。」「任せておけ。」とお互い笑いあって別れた。


 信長一行は山上の本丸から隠し通路を使い金華山の東側に出た。鬱蒼とした草木が繁る中を先頭の坊丸が脇差しを抜いて払いながら進んでいく。

 山を降りきったところに山上から連続する発泡音に続き喚声が聞こえた。皆一瞬立ち止まったが無言で再び歩き始めた。


 守将である安藤守就は、本丸に兵を派遣した後、自らも本丸へ急いだ。

 何とか上様の逃げる時間を稼がねば・・

 防戦一方で疲労の色も濃い老将は笑いながら、

 もはや古稀を過ぎた老将には過ぎた土壇場じゃ、見事に散って見せよう!

 山上への道は整備されたものではあるが、だからといって登る高さが変わるわけではない。

 息を切らし、背中を近臣に押してもらいながら山上の本丸を目指した。

 やがて、下から大きな喚声が聞こえた。

「殿、大手門が破られました!」

 どのみち、中腹の砦を奪われたからには時間の問題であった、「天主へ急がねば。」

 連れてきた1百の兵をその場に配置し、自らは本丸に入った。

 本丸は元々の兵3百と先程送った50の兵で守る。

 テキパキと兵の配置を定めるとそれまで信長がいた天主に入り信長の甲冑を身に着けた。


 本丸の虎口で戦闘が始まると安藤守就は天主最上階の縁側に信長の馬標である金色の唐傘を掲げて立ち、「信長ここにあり!」と示した。

 虎口が破られると天主のあちこちからボオッと火が吹きあっという間に天主は炎の中となった。

 その火柱は近江国境からも視えたと記録に残っている。

 燃え盛る天主は1刻も燃え続け、やがて腰が抜けるように崩れ落ちた。

信長の城は防御陣地というより政庁でありシンボルで魅せる城だと思っています。ですから追手門ではなく大手門のほうが相応しい気がします。

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