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64 束の間の平和が来る

 信長は本願寺へ使者を送った。

 越前への攻撃は本意でなく本願寺との和約は誠実に守るというものである。

 使者には権大納言庭田重保を立てた。庭田重保は朝廷と武家との間を取り持つ武家伝奏の役割を持っており、日頃から織田家と付き合いがあった。

 重保が大坂に入るとそこは戦場のごとき状態で本願寺は既に戦闘態勢に入っていた。

 信長は越前攻撃の詫びに金500枚を献上しようとした。が、本願寺は受け取りを拒否、越前の福井御坊と話すようにと言って取り合わなかった。


 信長は越前に使者を送るのに庭田重保の他に上杉家と関係の深い三条西公国を合わせて派遣した。

 帰ってきた使者は、

「長浜城と羽柴秀吉の首」と何を言っても引きません。

「御坊は周囲に堀を巡らし、鉄砲隊が万余の数おりました。明日にも攻め込んでまいるかもしれません。」

 確かに、

「話にならんな、」

 目をつぶって考える。今、越前一向衆と戦端を開けばどうなる?大坂の本願寺が動かぬとの確約があればやれるが・・。


「日向守を呼べ!」

 大手道の屋敷にいた明智光秀は、夜道を駆け上がった。

「上様、お呼びでしょうか?」

 息も切れ切れで信長の前に出た。

「越前に行き和議を結んで参れ!」

 燭台の灯りに顔の半分を照らされた信長の顔を上目遣いに見ながら、

「条件はどう致しましょう?」

 即座に、

「金で済むのなら済ませよ!領地の要求には乗るな、いや、10万石までなら良い、後は任す。」

 光秀は両手を付き、

「かしこまりました。」


 光秀が越前を往復するのに一月を要した。粘り強く交渉した証であろう。

「上様、お叱りは覚悟の上でこの様な条件でまとめて参りました。」

 内容は、長浜の街に一向宗の寺を建てること。越前と大坂の間の通行を保証すること。金1千枚を支払うこと、であった。

「それで良い、良くやった。これで筑前守の首も繋がった。」

 ほう、このお方にも家臣を思う心というものがあるようだ。

 信長は後で控える蘭丸に、

「筑前守にも言うておけ。」

 

 光秀は信長の反応を見て、

 もう少し、筑前守を追い込む条件にしたほうが良かったか・・

 今回の最大の収穫は直江長綱という男と知己になったことであろうな。上杉三郎殿の片腕らしく中々の者であったな。


 羽柴屋敷で謹慎中の秀吉の元には、森蘭丸が訪れて伝えられた。

 蘭丸に対し、わざとらしいほど推しいただくようにして

「畏まりました!この首繋がった上は粉骨砕身、上様のため尽くします。ご使者様には数々のご配慮を頂き誠にありがとうございました!」

 これは些少ですが、と賂を差し出し、この後もよしなに、と送り出した。

 久々に太陽の光を浴びているような心地で黒田官兵衛に、

「首が繋がったらしい。」

 当然という表情で、

「織田家にとって殿は無くてはならない者でございます。天下が織田家の許に統一されるか秀勝様が使い物になるまでは大丈夫でございます。」

 にぃと笑った秀吉は、

「では、間もなくではないか?」

 官兵衛も、にぃと笑い返し、

「では、急がねばなりませんな。」

 正装に着替えると御礼言上のため登城した。


 秀吉は、直属の軍を率いて長浜城へ帰った。敦賀の上杉軍の抑えと長浜城の復旧のためである。

 官兵衛は、長浜城の北に位置する山本山城を改築し始めた。

 上杉に対する前線基地とするつもりである。

 羽柴軍が長浜に着くとそこかしこで木槌、金槌の音が聞こえ復旧が進んでいるのが分かる。

 その一方で、見慣れない者達が多く集まっていた。

「あの者達は?」

 あぁ、あれは、

「一向門徒でございます。何ですか、長浜の街に大きな寺院が出来るとのことで、集まって参ったのでしょう。それにしても半端ない人数でございますな。」

 小姓の福島市松が槍を手に

「殿、この連中追い払いましょう。」

 市松の後ろに尾張以来の荒小姓達が続いているのを見て苦笑しながら、

「まあ、待て。しばらく放っておけ。それより城を造り直すぞ!」

 対一向衆、対上杉のための城に改築しようとしていた。


 隼介は越前から越後府中に向かいながら、今回はこの辺りでキリか、まぁ、よかろう。

 明智日向守光秀という漢を見られたし、羽柴筑前守秀吉にも爆弾を仕掛けることができた。

 明智の銃爪で羽柴の爆弾が爆発するか?その逆もあるか?

 今回はこれで十分だな。

 さあ、船のもとに帰ろうか。








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