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58 織田軍三河を行く

 織田軍の先鋒は安祥城に入った。

 先鋒の将は池田恒興。そう、彼は岡崎城で敗れた失地を挽回するためにやってきた。

 岡崎城と安祥城は矢作川を挟んで建っている。元々松平本家(徳川)は安祥城を本拠にしていた。

 池田恒興は、信長から、

 岡崎城を落とすなどと考えるな、決して挑発に乗るな。よいか岡崎城に敵を封じ込めておけ。浜松からの帰りに処置いたす。よいな!

 失地挽回に信長に頼み込み先鋒にして貰ったのに、戦うなはないだろう。

 不満たらたらで矢作川を渡りつつあった。

 対岸間近に迫ったところで、右前の葦の茂みから、

「放て!」と鉄砲の一斉射撃を受けた。

 恒興の周囲でも撃たれた馬が嘶き、制御出来なくなって乗り手を振り落とすなど混乱状態になった。

 恒興は、

「皆、岸に駆け上がれ!」

 自ら一番に対岸に渡った。

「者ども!臆するな!敵は小勢ぞ!」

 その声に次から次へと兵が集まってきた。


 鉄砲隊は一斉射すると岡崎城に向かって後退し、その途中に用意していた塹壕に飛び込んだ。

 そこにはもう一隊の鉄砲隊が待っていて味方を収容すると射撃体勢を取った。

 歓声をあげながら迫って来る織田軍は先頭の数十人が、塹壕の手前で足を取られ激しく転んだ、2尺程度の浅い穴が無数に掘られていた。転んだ馬や兵に後続の兵が突っ込み混乱が起こった。

 そこに鉄砲隊は一斉射を浴びせ、撃ち終わると後を見ずに岡崎城に向かって撤退していった。


 恒興は、

「くそ!忌々しい、ちまちまとやりやがって。」

 損害は?

 2百程かと。

「隊列を整えろ!」

 池田恒興は、全軍が渡河し終わったのを待って岡崎城の西郊に陣を敷いた。

 岡崎城には上杉軍の旗が靡き、その中には海東青の旗標があった。

 恒興は、5千の兵で岡崎城を包囲し始めていた。5千でこの城を囲うのは陣の厚みが薄く成りすぎる。一様に配置すれば敵の攻撃に耐えられず穴を空けられるだろう。虎口に厚く配置することで包囲を完成させた。

 あの青地にシロハヤブサの旗を取ったものには褒美を出すぞ!と軍に士気を煽った。

 包囲行動中、城内からの攻撃は無く静かに此方を見ているようだった、それも半笑いで。


 恒興が岡崎城を包囲し始めた頃、信長は全軍を浜松城に向けていた。

 岡崎城を無視してひたすら浜松城に向かった。

 1日無駄にすれば3千石が無駄になる、此処は急ぎ浜松城にて徳川と会同して敵に此方が優勢であることを見せつけるべきだな。まぁ、敵も馬鹿でなければ戦にはなるまい。北条、上杉は手伝い戦じゃからな。

 今回は引き分けにしてやる、ありがたく思え。その後は武田から順々に潰してやるから待っていよ。


 さあ、いよいよ信長が出てまいりましたな。

 三方ヶ原の陣で柿崎晴家が三郎景虎に話しかけていた。

「頃合いだな。そろそろ、天竜川を渡ろうか。」

 はっ、使番を出し船橋を用意させます。

「隼介は何か言ってきたか?」

 先ほど、この書簡が参りました。

 予定通り囲まれる前に岡崎城を退去、長篠城に向かう。陽動の兵が必要なら連絡を待つ。

「隼介も上手くやったようじゃな。儂らも適当に引き揚げようかの。」

 織田もほぼ同数の軍と正面からぶつかろうとは思うておるまい。ひと頃と違って鉄砲の数もそう変わらんしな。

 我らも三者三様だ、連携など夢のまた夢じゃからなバラバラに各自の判断で戦うしかない。まるで河越の夜戦の時に惨敗した関東管領じゃな。あっ、儂は関東管領か。


 先ずは天竜川を渡り、武田、北条と会同致すかの。

 問題は徳川じゃな、我が軍が動き出せば尻尾に食い付いて来る輩が出てきそうじゃな。

 使番、新発田に伝えよ。

 出番じゃ、殿(しんがり)せよと。そして、

 徳川には本多、榊原と言った元気者がおる、食い付いてくるから軽くいなしてやれ。と伝えよ。


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