表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/108

53 信長危機脱出を図る

 岐阜城には各地の織田領から3万の兵が集まっていた。

御殿の広間には、織田家の重臣である滝川一益、明智光秀等が集まっていた。

光秀は独り言で、

「今、丹波を離れるのは辛い、せっかく積み上げたものがなくなってしまう。」

のう、日向守。

「ぶつくさ言っておると、また上様の雷が落ちるぞ。」

年長の滝川一益が諌めていた。


 若党が、上様がおいでです。と呼ばわった。

集まっていた家臣が一斉に上座に向かって深い礼をした。

皆、聞け。

「我が盟友である徳川が援けを欲している。敵は武田、北条に上杉じゃ。正念場ぞ!」

日向守(明智光秀)、

「浜松城へ兵1万率いて行け。」

はっ、

「勝手に戦うな、儂が行くまで待っていよ!」

恒興(池田)、

「5千で岡崎城へ入れ。上杉軍の動向を見逃すな!」

急げ!


 出陣を命じられた者たちが大広間を出ていくと、滝川一益が残されていた。

一益、

「三木城、越前に摂津はどんな具合だ?」

はっ、

「まず、三木城でございますが、毛利の援軍が来るとの噂が立っております。城兵達が沸き立っております。筑前(秀吉)殿が防備を厚くしております。

 摂津有岡城は相変わらず隙を見せません。内応を誘っておりますが今少し時間が必要かと。

 越前は出陣の準備中でございます。この半月の内に兵を興すものとみられます。兵力は2万は下らぬと思われます。金ヶ崎、天筒山城には新たに若狭の兵を丹羽殿が入れました。」

うぅむ、

「越前の一向衆を抑えねばならんか?近江に出てくるか?若狭に出るか?攻め込んだ方が早いか?」

少し考えて

「江北に1万配置するか?」

しかし、

「それでは上様手持ちの兵が無くなります。」

ではどうする。

「本願寺と休戦を朝廷にお願いしてみては、如何でございましょう?」

出過ぎたことを申すな!

「松永の時もその手を使った、朝廷にも足元を見られよう。」

うぅん、暫く唸ったあと

「しかし、それしかないか。さすれば、大坂と越前が片付く、兵が3万ほど使えるようになるか。」

京へ行く。準備をせよ。


 京での信長の宿舎は、本能寺である。ただし今の場所ではなく二条城にほど近い場所にあり、寺というより小さな城といった趣きである。

 信長が京に入った日、織田家の京都大使である村井貞勝は前関白を近衛邸に訪ねていた。

「近衛様、そこを何とかお願いします。この和睦は日の本の平穏のために是非必要でございます。」

ふん、と余所を見ながら

「何度同じ言い訳をするつもりじゃ。この度は上杉家が相手じゃから織田もどうにもならんかの。」

村井貞勝をじっと睨みながら、

「儂は上杉とは縁がある。朝廷も上杉には悪い思いがない。織田が上杉に代わるのは万々歳じゃ。」

村井貞勝は額を床に着けんばかりに平伏し、

「上杉景虎は上杉といいながら中身は北条でございます。関東の田舎侍が京に登り、その昔の木曽義仲のようにならんとは限りません。その点、織田は一切の狼藉を許しません。日の本の秩序は織田でなければ守れません。」

とも限るまい。

「上杉は織田と違うて朝廷を立ててくれる。我等公家も大事にしてくれるからの。」

お待ち下さい、お待ち下さい!

「この度は朝廷の御料として3万石、納めさせていただきます。それとは別にご当家には近江で1千石、黄金1百枚ご用意いたしました。」

前関白は、村井貞勝の方に向き直り、

「御上に耳に達するには少し足りぬと思わぬか?」

それでは、

「朝廷にはさらに黄金5百枚を献上いたします。」

「ほう、それは豪儀なこと。御上に図って見ようかの?」

どうかよろしくお願いいたします。


 村井貞勝が帰った部屋に入ってきたのは、上杉家の神余親綱であった。

「近衛様、いかがでございましたか?」

お主の言うとおりであった。

「しかし、織田は吝い。お主は5万石に黄金1千枚。わが家には3千石に黄金3百枚と言うたが、全然少なかったぞ。」

神余親綱は笑いながら、

「少なくても貰っておいて損は有りますまい。」

ほう、

「良いのか、朝廷は飛び付くと思うぞ。」

「はい、宜しいかと。」


 這々の体で屋敷に着いた村井貞勝は、信長が本能寺に入ったと聞くと、着替えもせずに本能寺へ向かった。

「上様、あの条件で何とか朝廷は動いてくれると思います。」

そうか

「よくやった。本願寺は朝廷の命には従うであろう。」

よし、これで息が継げる。見ていろ、武田、上杉。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ