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49 御館の乱 終結

 隼介と昌幸は春日山城に入り、二ノ曲輪に登った。

「この様な巨大な山城、維持が大変でござろう?」

大したことはない。

「金持ちは言う事が違いますな。」

この野郎、首を絞めてやろうか。


 三郎は、

「喜兵衛、久しいのぉ。」

「兄たちの事、残念であったな、悔みを言わせて貰う。」

「ありがとうございます。」

驚いたな、兄たちが長篠で戦死したことをご存知なんだ。

ところで、

「四郎殿とはどうじゃ、上手くいっとるのか?そろそろ儂のところに鞍替えする気にはならんか?」

「有難き御言葉でございますが、今暫し頑張って見とうございます。」

そうか。ところで、

「この後、武田はどう動く?」

さよう、

「この同盟で、甲、越、相の三国が同盟したようなものでございます。」

「北と東が楽になりました。南の徳川対策に全力を注ぐことになるかと。」

そうよな、

「でも、領民対策も忘れぬ様に四郎殿に伝えよ。」

そういえば、

「その方、息子は居らんのか?1人儂の小姓に寄越さぬか?」

えっ、

「2人おりますが・・未だ12と11。役には立ちますまい。」

2人居るのか。

「では、1人寄こせ。儂が鍛えよう、待っておる。」


 武田軍は、1万両の金と10日分の兵糧を受け取ると甲斐へと引き揚げて行った。

これで一息つける。勝頼の正直な感想であった。


 景勝が林泉寺へ移ると中城を柿崎晴家が受け取った。

中に籠っていた者達は、恐る恐る出てきて兵を領地に戻すと将達は指定された三ノ曲輪に入った。

大広間に集められた景勝派の将達は、

「我らの処分はどうなるのか?」

「まさか、首を差し出す事にはならんだろうな?」

「領地に帰ったほうが良かったか?」

自分たちが不安定な立場であることに不安を覚えていた。


 御館様がおいでになります!三郎の小姓が先駆けて声をあげた。

皆が平伏したところに三郎が現れた。

「面を上げよ。」

集まっている面々の顔を見回して、

「その方らの主君はすべての責任を取って林泉寺で修行をすることになった。これで双方和解じゃ。これ以上罪を問う事はない。」

一呼吸置くと

「その方らは、自分で自分の行く道を決めよ!」

「主君と行くもよし、領地に帰り叛旗を掲げるもよし。」

「儂と共に天下を統一するため儂のもとに来るもよし。」

「自ら決めよ!」

「我が家中となるものは5日後のこの時刻、御館で会おう。」

そう言うと席を立った。


 どういう事だ。儂らは処分されるんじゃなかったのか?

罪は問わないということか?

赦されたのか?

お主はどうする?

三郎様に付いていっても優遇はされまいな?

侃々諤々の議論が続き結論が出なかった。やがて1人が、

「直江様に伺ってくる。」と立ち上がった。


直江屋敷には、上田衆、揚北衆の数人が詰めかけた。

「三郎様がそう言ったのなら、その通りですよ。三郎様とはそういうお方です。後は皆様のお気持ち次第、頑張り次第でございましょう。」

 それでも何人かがその夜、春日山城を去った、領地で隠居したものもそのまま沈黙を保ったもあったが、表立って叛旗を掲げたものはなかった。

 特に目立ったのは揚北衆を景勝派へ引き込んだ安田顕元で、その夜、割り当てられた部屋で切腹した。


 三郎は、上杉家の政庁を御館と定め、春日山城は詰めの城とした。

 5日後、三郎は、家中を御館の大広間に集めた。

「よく、集まってくれた。この度の諍いは既に終わった。被害があった者は申し出よ、できる限りの補償をしよう。それで双方手打ちといたせ!」

諸将を見渡し、

「上杉家中は一つである。儂は亡き謙信公が目指した上洛をする。そして、日の本をこの手で戦のない国にする。そのために皆の力が必要じゃ。皆、儂について来い!今まで見たことのない世界を見せよう!」

ニッと笑い、

「そして皆で富貴になるのだ!」

富貴、富貴かぁ、広間中に喜びが伝播し、やがて広間が揺れるように、

おぉ~、お供いたします!


 その頃、林泉寺では、景勝が作務衣で廊下を拭き掃除していた。

 和尚は、景勝殿、無心になる事が必要な時期でございますな。と遠くから見ていた。


 直江屋敷では日本海に落ちる夕陽を眺めながら、

「旦那様、今回ばかりは・・」と隼介の胸に顔を埋める船がいた。

「心配させたな。」と船を抱きしめた。


 その夜、坂井屋の離れでは、お英が、三郎に酌をしていた。

「三郎様、雰囲気が変わりました。私の知っている三郎様ではないようです。」

酌をしてもらった盃をぐっと飲み干すと、

「それは、はつの方じゃ、こんなにも魅力的であったかな?」

まあ、

「三郎様が私に苦労を下さったからですよ。私にも一杯注いで下さいな。」

立待月の夜は始まったばかりであった。











ここで一段落です。

ここまで読んで頂きありがとうございました。


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